「実は、日本の公務員数は世界最低水準」 読後ノートその2
・・・と書くと、若干誤解を生みますので正確に言うと「2014年時点での人口1,000人当たりの公務員数は、日本が主要先進国で最低」です。
例えばフランス89.2人、イギリス68.1人、アメリカ64.1人に対して、日本はなんと36.4人しかいません。
日本では昨今の公務員叩きによって、公務員の数が多すぎるという認識が広まっているように思いますが、実際は全く逆なのです。
この驚きの数字が書いてあるのが、今回の読後ノートのお題「危機感のない日本の危機
」です。
この本では様々な実証データや各分野での専門家の意見に基づいて、今の段階では普通に生活していれば気付かないけれど、実は将来に大きな問題を引き起こしかねない日本の衰退の実情やを詳らかにしています。
他にも例えば
‐日本の相対的貧困率は16%を超え、OECD加盟国の中で下から4番目にまで落ち込んでいる
‐科学情報誌ネイチャーは「主要科学雑誌に掲載された日本の研究論文は停滞が著しく、今後10年間で成果が上がらなければ世界トップクラスの地位を失いかねない」と警告
‐道路や河川などのインフラ整備状況は主要先進国で最低水準 (詳細は長くなるので興味がある方は書籍を参照ください)
などなど、枚挙に暇がありません。
よくネット上で「日本は終わった国」「衰退は避けられない」などまるで他人事のような意見が散見されます。
恐らくそういう人の多くは「でも、誰かがきっと何とかしてくれるんでしょ。自分は大丈夫」という根拠のない楽観主義に基づいて、外野で騒いでいるに過ぎないのでしょう。でも、実際は本当にマズイ状況に片足を突っ込んでいるのです。
そのような事実や状況を述べるこの本の帯には、こう書いてあります。
「頼む、日本人よ気付いてくれ!」と。
この言葉が筆者の言葉なのか編集者の言葉なのかは分かりませんが、少なくともこの本を書いた動機はこの一言に集約されていると思います。
まずは現状を冷静に見つめ、その危機感を共有すること。それが最初にやるべきことだと。
それができれば、豊かさは取り戻せる。
それが著者の主張です。
これは実際その通りだと思います。
最初に挙げた公務員数についても現実の数字とその背景を知れば、闇雲に公務員叩きをするのではなく、日本という国において本来あるべき公務員組織の在り方を改めて冷静に考え直すきっかけになるのではないでしょうか。
また、現状のデフレ不況も元はと言えば、実は「自分の生活に当てはめて正しいことは、国の政策でも正しいよね」という漠然と抱いている社会通念に根本的な原因があります。
そこを新自由主義経済学者たちが”自分たちの学説の正しさを証明するため”に行った社会実験の結果。そして、「その社会実験が案の定失敗した」という実験結果なのです。
例えば「日本の財政は破綻する」という明らかな”嘘”を、「皆言ってるけど、それって本当なの?どういう数値の根拠で言ってるの?」と疑問を抱くだけで、日本の財政について正しい知識を得るきっかけになります。
そして、正しい知識が得られれば解決策がいくつも出てきます。
しかし、気付かなければ永遠にそれはできません。
一部専門的な話が入る箇所もありますが、全体的に身近な例が取り上げられているので、この「気付き」のきっかけにはとても良い本だと思います。
そして、これをきっかけに「なんか今まで聞いていた話と違うぞ?」と、ちょっとでも気になるようだったら、この本の参考文献一覧に書いてある本に手を伸ばしてみる・・・そんな入口になりやすい著作だと思います。