世界を救う読書

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日本の最低賃金の恐るべき低さ

最近人手不足という言葉が巷で話題になっていますね。特に引っ越しが増えるこの3月、運送業界はもうえらいことになっているようです。今月名古屋市から近畿地方に転勤になった知人の引越し代が100万円を超えたそうで・・・驚きました。

 

さて、そんな人手不足を背景にして徐々に上昇しているもの・・・それが最低賃金です。私の地元でもコンビニバイトで時給950円とか、ファミレスで時給1,000円とか驚きの金額で募集されています。 ですが、それでも低すぎる!というのが、今回取り上げる記事です。

興味を持ってくださったかたは上記のリンクから詳しく見て頂ければ良いのですが、その論旨をポイントだけ取り上げると

 

・そもそも日本人の時給は低すぎる。欧州各国に比べて40%近く低い。なんと韓国よりも低い

 

最低賃金とその国の生産性の間の相関係数は84.4%と非常に高く、最低賃金が高い国ほど生産性が高い

 

・日本人労働者の質は世界第4位で、大手先進国の中ではトップ。にもかかわらず、日本の最低賃金は大手先進国の中の最低水準

 

・イギリスでは19年間かけて最低賃金を約2.1倍にしたが、失業率の大幅上昇などの予想された悪影響は確認できず、逆に経済に対してよい影響を与えたと評価される

 

・他国の最低賃金計算方法を下に算出した場合、2020年の適切な最低賃金は1313円。2017年度の全国の加重平均は848円なため、あと3年で少なくとも465円上げる必要がある

 

一言で言えば、日本の最低賃金は低すぎる。これを引き上げることが経済成長を促すんだ、という主張です。

 

1313円が適切な数値かどうかは一旦置いておいて、そもそも多くの人は「高い賃金が高い経済成長を生んです」って言われても、すんなり納得しないんじゃないかと思います。

賃金上昇というと「競争力がなくなるんじゃないの?」「企業が人を雇えなくなって失業率が上がるんじゃないの?」といったような反応の方が一般的なんじゃないでしょうか。でも、実はそれはデフレという異常な状態に慣れすぎて、感覚が麻痺しているからなんです。例えば80年代や90年代では、日本人の賃金は諸外国と同じあるいは同じような水準でした。それでも日本の商品の競争力は相当高く、世界を席巻していました。失業率も極めて低く、ほぼ完全雇用を達成していたのです。

 

じゃあ、何で今は労働賃金が低く、経済成長も停滞しているのか?

ここで大事になるのが「資本主義という経済体制では、どうやって経済成長が起こるのか?」という点です。

 

 

そもそも資本主義とは

「資本を投下することで、より多くの資本を獲得するシステム」

 

のことです。

※「資本」というのは、ざっくり言うとお金や利益のことだと思ってもらえば良いです。

 

したがって、より多くのお金を獲得するためには、同じお金の量を投下した場合により多くのお金を獲得できるようにしなくてはなりません。そのために必要なのが技術の進歩です。言い換えると、企業がより多くのお金を稼ぐためには新製品や新しい製法の開発に投資しなければならない、ということです。

 

ところが今の日本のように労働賃金が安い場合、高い機械を導入したり新しい技術開発を行って、労働者の代わりにする必要は全くありません。労働力を安く買い叩き続ければ良いのですからね。そうではなくて、逆に賃金が高い場合により多くの利益を上げなければならないという時にこそ、生産性を上げる技術的イノベーションが発生し、経済成長を促すのです。

 

それが正しいことは歴史が証明しています。

イギリスでの第一次産業革命、ドイツでの第二次産業革命、そして戦後の日本の経済成長も同じです。「安い労働力を調達する」ということが出来ない状況で、より多くの利益を得るために行われた投資と、それが生みだした技術進歩によって、経済成長を成し遂げることができたのです。

この真逆の例が戦後のドイツで、最初こそ日本と同程度の高い成長率を誇っていましたが、移民という安い労働力を受け入れ始めた50年代半ばから急に経済成長率が鈍化しました。

 これが資本主義の現実です。したがって、労働賃金が高くなると競争力がなくなるという企業家は、資本主義というものが何なのかを全く理解していないということです。

 

資本主義を駆動するのは低い賃金ではなく高い賃金である。

 この資本主義の基本を思い出せば、今の日本が経済成長できない理由が少し見えてきます。

 

長文を最後までお読み頂き有難うございましたm(_ _)m

 

 

 

 

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