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お金を生み出す万年筆の話

タイトルに書いた「お金を生み出す万年筆」。

そんな物が本当にあったら良いですよね〜。ぶっちゃけ私も欲しいです(笑)。お店で買い物をする時に万年筆を振ると大判小判がザクザクと・・・・あったら良いですけど、さすがにそんな打ち出の小槌みたいな話はありません。

ですが、何億円、何十億円と自在にお金を作り出せる魔法の万年筆が世の中にあると言ったら、あなたは信じますか?

 

という訳で、「99%の人が知らないお金の話」の第2回ということで、そんな不思議なお話をしていきます。

 

さて、前回「デフレとは物の価値に対して、お金の価値が上がっていく現象」だと説明しましたが、この点についてもうちょっと踏み込んで説明します。

「価値が上がる」とさらっと書きましたが、そもそもなぜ価値が上がるのでしょう? それはオークションを思い出してもらえると分かりやすいです。

例えば、先日平昌オリンピックで金メダルを取った羽生結弦選手が競技で使用したスケートシューズがチャリティ・オークションに出品されました。虚偽入札などで色々もめたようですが、結局800万円以上の金額で落札されたようです。

 

ですが、仮にこのような選手が練習や大会の度に毎回「自分が使ったシューズです」と言って出品していたらどうでしょう?

頻繁に出品されたら流石に希少価値が下がりますので、オークションに出してもそんなに高値はつかないでしょうね。

(羽生選手の場合はそれでも高値がつくかもしれませんが・・・(笑))

 

 

実は、お金の価値の上下も基本的にはこれと同じなんです。

みんなが欲しがっている量に対して多くなれば価値が下がりますし、それに対して少なくなれば価値は上がります。つまり、「お金の価値が上がっていくデフレ」というのは、みんなが欲しがっているお金の量に対して、供給されているお金の量が少ないために起こるのです。

 

だったらデフレを解決するための話は簡単ですね。

そう、お金の量を増やせば良いのです。黒田日銀総裁がやり続けている"異次元緩和"は正にこれです。お金の絶対量をガンガン増やしているのです。実際、黒田総裁になってから発行されたお金は200兆円以上になります。

 

しかし、デフレは解消していません。なぜでしょうか?

ここで大事になるのが「そもそもお金って何でしょうか?」というポイントです。

 

お金(貨幣)というものは中央銀行が発行している「紙幣」と「硬貨」、そして「銀行口座」という定義になっています。「銀行口座」は物理的に手にできるお金ではありませんが、皆さんの給与もほとんど口座振り込みでしょうし、貯金も全て現金で手元に置いている人は少ないですよね。

実際、世の中に流通している貨幣のほとんどはこの銀行口座になります。みなさんが預けたお金が銀行の口座にどっさりある訳です。

 

そのためほとんどの人は「銀行はみんなが預けたお金を別の企業に貸し出して運用している」と考えていると思いますが、それが違うんです。これが根本的な間違い。

 

銀行がお金を貸し出すプロセスを説明するために例を出します。

まず一つめ。

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上の図の番号順に説明します。

 

① Aさんという人が1,000万円をB銀行に預けます。

② B銀行は1,000万円を企業Cにお金を貸し出します。

③ C企業はそのお金を使って企業Dに1,000万円の機械を購入します。

④ D企業は機械の代金として1,000万円を支払います。

⑤ D企業はC企業から支払われた1,000万円をB銀行に預け入れます。

 

この場合、一瞬「元になったAさんの1,000万円がグルっと回っただけじゃないの?」と思われるかもしれません。ですが、実際にはAさんの口座、D企業の口座両方に1,000万円が記帳されていますので、まるまる1,000万円お金が生み出されていることになります。

ちょっと妙な感じはするかもしれませんが、元はAさんの1,000万円の貯蓄がスタートですので、まだ分かりやすいかと思います。しかし、話はここからです。

恐ろしいことに、これは最初にAさんが1,000万円を貯金しなくても成立してしまうんです。

 

その場合の模式図は次のようになります。

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 ご覧の通りAさんがすっぽり抜け落ちてます。しかし、D企業のB銀行への貯蓄1,000万円とがまるまるプラスされているのが分かります。

 

そう、何もないところからB銀行がC企業に「1,000万円」を貸し出したことで、D企業が1,000万円を取得しているんです。

この時に銀行が行うのはC企業の口座に「1,000万円」と書くだけ。

 

何かのマジックのように思われるかもしれませんが、これが実際に行われていることです。言い換えると

 

お金とは銀行が口座に貸し出し金額を書いた時に生まれるのです。

実は銀行の融資というのは、このように元手を誰かから集めなくても成立してしまうのです。

 

 

これは「帳簿貨幣」と言われますが、もっと分かりやすい言葉でジェームス・トービンという経済学者が表現しています。それは

 

万年筆マネー

 

銀行が万年筆で貸出先の口座に「1,000万円」と書けば、そこで1,000万円が発生するのです。 

 

したがって、銀行がどこかに融資する時に理論的にその上限はありません。1億だろうが、10億だろうが、100億だろうがお金を借りてくれる人さえいれば好きなだけお金を作り出せます。だって、口座に「100億円」って書くだけですからね。貸し出す方の資金力は一切関係ありません。

 

とは言え、本当に制約がないかというと実はそんなことはないです。何がその制約かというと「借りた人がそのお金を返せるかどうか」、つまり借り手側の返済能力です。借りて側が返済できる限り、銀行はいくらでも貸し出せる。それが返せなくなると焦げ付いてしまい大事故になります。

 

という訳で、今日の結論。

 

・銀行は借り手さえいればいくらでもお金を生み出すことができる。

・貸し出し金額の制限は、貸し手の資金力ではなく借り手の返済能力。

 

 今回も長文を最後までお読み頂き有難うございましたm(_ _)m

 

※今回の説明では概念を分かりやすくするために、細かい部分は省略してあります。

あくまでここでは経済学のことを全く知らない人にも、その概念を分かってもらうことを目的に書いており、シンプルに分かりやすくを心がけているからです。

興味を持って頂いた方は是非貨幣についての書籍や専門家の方の記事をお読みください。私の投稿がそのきっかけになれば幸いです。

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