世界を救う読書

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「みんな人口減少の深刻さを分かってない!」っていう人が一番分かっていない件

 あるトピックが旬になると、それにまつわる妙な言説が雨後の竹の子のように湧き出すのは世の常ですが、今世間を賑わせている「人口減少」の問題も同じです。

例えばこの東洋経済オンラインの記事が好例。

この冒頭で

 

「2030年にはすべての都道府県で人口が減少し、2045年までに日本の総人口は1億0642万人になる」

 

という国立社会保障・人口問題研究所の予想をそのまま掲載していますが、こういう予想は「現在の状態から何もしなければ」という前提の予想。人間には将来の危険を予測して対策を練るという能力がある訳ですからそれを回避することは可能です。それが「逃れられない運命」であるかのような方向で話をするのはそもそもおかしい。まずは落ち着いてください。

 

また、筆者の中では人口減少と経済衰退がイコールということになっているようですが、そんな実証データはありません。むしろ人口減少が日本より急激に進んでいる国で、しかも日本とは違って順調に経済成長をしている国は他にもあります。ドイツもその一つ。

 

確かに生産性が変わらない前提なら、人口が減るより増えた方が経済規模は拡大するでしょう。でも、そもそも現在の日本のように生産性が低迷している国では、仮に人口が同じ位で推移しても経済規模は拡大しません。

逆に生産性が落ちるようであれば、人口が増えても経済規模は縮小するのです。

要は生産性の問題です。

 

そもそも人口減少と一言に言いますが、その割合は0.2%とほぼ誤差レベル。一人勝ち経済と言われるドイツよりも低い水準です。問題なのは人口減少そのものではなく、生産力の中核を担う世代が減少し(供給力の低下)高齢者の割合が増えている(需要の増大)ことによる「必要とされる社会保障を賄う能力に対して、それをカバーする供給力が足りなくなる可能性がある」ことです。

ここで重要なのは「社会保障を賄う能力というのはお金ではない」ということです。

引用記事の記者は「税収減。社会保障費の増大」をことさら煽っていますが、ぶっちゃけお金自体はどうでも良いのです。日銀の金融政策と政府の財政政策で何とでもなるのですから。

 

問題なのはこの「供給力が低下し自国で賄えなくなるという事態になりかねない」ということです。供給力そのものが低下してしまえば、いくらお金があっても何ともなりません。

ではどうすれば良いのか?

 

供給力の中核を担う労働力が低減するのであれば、その生産性を高めるしかありません。そして人口が当面増えない以上、生産性を高めるには投資を行うしかありません。これは資本主義の基本です。

そのためには社会保障を担う分野が”儲かる”状況を作り出さなくてはならないのですが、これもある意味恵まれていることに

 

高齢者が増えていくというのは、逆の面から見ると需要も増大していくことが必然でもある

 

ということなのです。

 

考えてもみてください。

もし自分や家族が病気になったら、お金がないからと言って諦めますか?

お金さえあれば何とかできるのであれば、何としてでもお金を工面しようとするのが普通だと思います。

 

今このデフレ不況の時代に需要が確実に増大するというのは、凄いビジネスチャンスでもあります。本来放っておいても投資がされるはずですが、問題なのは政府が社会保障費を削ろうとしていることです。むしろ政府が率先して社会保障費にお金を回し、民間の投資を促すべきなのです。

 

先程も書きましたが、国家においてお金などというものは日銀がいくらでも発行できます。特に現在のようなデフレ状況下では、ほぼ制約はありません。それをまるで子供のお小遣い帳のような辻褄が合わせのために、社会保障費を削り折角儲かるものをわざわざ儲からなくするとは正に愚の骨頂。

 

日本ではとかく人口減少=国家の衰退というようなイメージ論ばかりが先行してしまいますが、その内実をしっかり吟味すれば「世界の終わり」が来るかのように慌てふためく必要は全くないのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m

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