世界を救う読書

ビジネス書から文芸書までさまざまな本を通して世界の見方を考えるブログ

インフラが中国並に堕ちないためにやるべきこと。

突然ですが、私が中国に出張する時に使うホテルの近くに、高速道路の入り口があります。その入口は日本と同じく、本線に入る手前でぐる〜〜っと回り込む構造になっています。

そのカーブの壁が結構低くて、そこを通る度に「こんな低くて大丈夫なのか? 恐いなぁ」と思っていたのですが、ある年に同じようにそこを通るとえらく高い壁に変わっていました。

 

現地スタッフに「あれ? この壁ってもっと低くなかった?」と聞いたところ、

「ああ、低かったですね。時々そこから飛び出して落ちる車がいるんで、高くなったんですよ」

とのこと・・・。

 

おいおい・・・マジか。そんな事あの壁の低さ見ればわかるだろう・・・。誰かが死なないと手を打たないのか・・・と恐ろしくなりました。

 

これを日本にいる人に話すと「やっぱり中国って恐いよね〜」というある意味笑い話になってしまうのですが、もしこれが本当に日本で起こりかねないとしたらどうしますか?

 

今はまだこれまで蓄積されてきたインフラ事業の知識や技術を継承している技術者が現役ですが、引用記事にあるように

 

建設技能労働者は、55歳以上が3分の1を占める。このため相対的に高齢な労働者の「引退」が見込まれ、25年度までの10年間に全体の3割超に当たる128万人の雇用減少が予想されている。

 

将来に渡ってこの技術が継承されていくかどうかは非常に危うい事態となっています。

 

日本の労働力の中核を担う年齢層の人口減少は、少なくともあと20年は止まりませんので(今年生まれた赤ん坊が労働力に組み込まれるのには時間が掛かるため)、その少なくなった労働力で現在のインフラ技術を保持していくためには、生産性の向上は絶対条件です。

 

そして、資本主義社会において生産性の向上は、技術投資以外にあり得ません。

 

例えば下記の鹿島の例は

鹿島は、17年秋にダムなど大型構造物におけるコンクリート型枠作業の「全自動化」に成功。型枠作業は人力を全く必要とせずロボットだけで対応できるようになった。例えば、北海道三笠市で施工中の新桂沢ダム堤体建設工事では、旧来なら5人で5時間弱の作業が必要だったのに対し、オペレーター1人が現場で対応し、3時間で完成する効果があったという。

こういった生産性を高める取り組みは素晴らしいと思いますし、これからもどんどん行っていって欲しいものです。

 

ただ、民間企業がこのような取り組みが行うのは、あくまで事業として投資以上の利益の回収ができるからこそです。建設業界の方々の「社会的責任」という矜持もあるかとは思いますが、それに頼ってばかりではいけません。

 

我々の生活の基盤となるインフラ整備を担う企業が、安心してこのような技術投資ができるように是非とも政府には必要な財政政策を採って欲しいものです。

※ちなみに私は建設業界には縁もゆかりもありません。ただ、中国のようなインフラ水準になるのは勘弁して欲しいですし、儲かる人が儲かってしっかりお金を使ってくれれば自分の所得にも繋がるので応援しているだけです(笑)。

 

以下、ちょっと蛇足になりますが、今回のテーマ「インフラ整備の技術継承の重要性」について思うことを最後に。

 

生まれてから日本という国で生活している私達は、自分たちが享受している豊かさ、そしてそれを実現している技術や知識の蓄積がどれほど凄いものかを実感することがなかなかできません。道路や水道もままならない国々に比べれば、もちろんそれは素晴らしいことでもあります。

しかし、私達にはそれを享受するだけでなく、後世に受け継いでいく義務があります。そして、何かを継承していくには「美しい日本」とか“ふわっ”とした抽象的イメージではなく、後世に継承していくべきものが何なのか、さらにそれを支えているものが何なのかを自覚的に意識できなくてはなりません。

 

そういう意味でも「日本の国土と国民を守るために長い年月と知識と経験が積み重ねられたインフラストラクチャー」について考えることは、私達の生活を支えてくれるこの国が何によって形作られているのかを知る上で、非常に良いテーマではないかと思います。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m

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