イタリア国債急騰。財政の主権は誰が持っているのか。
さて、混乱から一転。
シュセッペ・コンテ首相の組閣により、とりあえず混乱を脱したイタリア。
早速首相により所信表明演説が行われましたが、
新たに就任したイタリアのジュセッペ・コンテ首相が5日、議会上院で所信表明演説に臨んだ。経済政策について「緊縮でなく経済の富を増やすことで公的債務を減らしたい」と述べ、歳出拡大で景気を刺激する方針を示した。目玉公約として失業者への最低所得保障や大幅減税を実行する方針を掲げており、財政悪化への懸念を誘った。
これを受けてイタリア国債の利回りが上昇した模様です。
※利回りが上昇するというのは、国債で政府がお金を借りる時の利率が上がるということなので、政府がお金を借りにくくなります。
言い換えれば、「それだけ利幅がないと誰も貸してくれない」ということで、それだけ信用が低くなったということになります。
私は正直コンテ首相の表明は真っ当なものだと思います。
資本主義の世界では、誰かが負債を背負って投資をしなければ経済は回って行きません。家庭、民間企業、国家が全て黒字運営という訳にはいかないのです。ですから、バブル期でもなく民間需要が特段活発でもない状況で、公的債務を減らすのであれば国が積極的に歳出拡大を図るというのは理にかなっています。
しかしながら、市場ではこれを受けて「財政悪化への懸念を誘った」と評価され、国債の利回りが上昇しました。これは相当理不尽な話だと思います。
イタリアを苦しめる共通通貨ユーロという蟻地獄
でも、残念ながら構造的に“仕方がない”というのがイタリアの・・・いや、EUに所属する全ての国の辛いところなのです。
というのは、以前の記事にも書いたようにユーロという共通通貨を使っていること、しかも国債はそれぞれの国が別になっていることがそもそもの原因なのです。
※EU国債というものがある訳ではなく、イタリア国債、ドイツ国債、フランス国債などと国ごとに国債が別れているという意味です。
ユーロという共通通貨を使っていながら国ごとに別の国債になっているため、ユーロを運用したい投資家は「イタリア国債が危ないなら、安全なドイツ国債に移しておこう」ということができてしまうのです。
ですから、常に投資家がイタリア国債から引き上げてしまわないように気を配りながら、政策を決めていかざるを得なくなります。
今回も恐らく本音では「ユーロを離脱する!」と言いたかったのではないでしょうか。でもそんな話をしたらイタリア国債は大暴落。ギリシャの二の舞になる上、さらにユーロからも離脱できないという蟻地獄にハマってしまうのが分かっていたので、
「歳出拡大という方針で行く!!!・・・でも、ユーロには留まるから投資家の皆さん逃げないでね☆(ゝω・)vキャピ」
という所信表明になってしまったのはないでしょうか。
自分たちのお金の使い方くらい自分で決める!!
そんな独立国として当たり前のことすら投資家に配慮して言えないという蟻地獄にはまり込んだイタリア。この混迷から抜け出すには、まだまだ時間が掛かりそうです。
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆