世界を救う読書

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移民問題。なぜ欧州が犯した失敗を日本は繰り返そうとするのか。

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先週の報道ですが、政府が外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格の創設に関し、対象業種に外食・サービスや製造業などを加える考えを示したそうです。

「新たな在留資格制度を創設する」と遠回しなことを言っていますが、要するに


外国人が容易に単純労働に従事できるように制度を変更します


というわけです。

 

また、在留期間を区切ることなどを挙げ「移民ではない」と説明したそうですが、

馬鹿を言っちゃいけません。

 

移民とは国連人口部によると

 

「出生あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人」

 

と定義されています。

 

あるいはOECDによると

 

「移住先において1年以上滞在している者」

 

と定義されています。

 

そんな中日本政府は「技能実習生」とやらに、最大10年の在留資格を与えようとしています。

国際的な定義によれば、これは完全に移民受入拡大政策なのです。

それを日本政府の独自の勝手な解釈によって「これは移民ではない」などと言い張っている訳です。

「どうせ国民は移民の定義なんか知らんだろう。移民じゃないと言っておけば、そのうち黙るわ。ほっとけ。」と馬鹿にされているのですよ。皆さん。

 

このような状況を黙って見過ごしていてはいけません。

実際、現在のヨーロッパの移民問題もこのような不確かな定義の下で進められた政策によって生まれたのです。ヨーロッパ・・・いえ、当時の西ヨーロッパ諸国は第二次大戦後かなり長期にわたって「我々は移民国家ではない」という建前の下、「数年で帰る一時的出稼ぎ労働者」を大量に受け入れてきました。

 

その端的な例が西ドイツ。第二次世界大戦後の労働力不足を解消するため、ドイツは1950~60年代にかけて180万人を超える外国人労働者ガストアルバイター」を「期限付き」という前提でトルコ、イタリア、ユーゴスラヴィア等から受け入れました。

労働契約が切れたら母国に帰る「はず」だったので、ドイツ語教育や社会保障制度の整理などはほぼ全く行われませんでしたが、予想に反して彼らは労働契約が切れても帰らず家族を呼び寄せドイツに定住していったのです。

政府の言葉遊びに基づいた安易な移民受入拡大を許したことによるツケを、今西ヨーロッパ諸国は払わされているのです。

 

 

そしてもう一つ重要なことは、政府が「対象業種に外食・サービスや製造業などを加える考えを示した。」という点です。

 

これはよく考えると

 

「肉体労働は頭脳労働と違って、人が変わってもすぐ置き換えできる」

 

と考えているということに他なりません。肉体労働を馬鹿にしているのです。

 

しかし、現実の労働とはそんな甘い物ではありません。

 

外食サービスであろうが、建設業や製造業であろうが、その仕事をきっちりこなすためには、それなりの経験と知識、そして訓練が必要です。

他でもないそのような経験と訓練の蓄積こそが、効率化や生産性の向上を生み出すのです。

そんな事は何かしらの現場で働いたことがある人間であれば分かるはずです。

 

頭脳労働で働く人は汗水垂らして働く肉体労働を下に見る向きがありますが、自分たちの生活がそのような労働による社会基盤の上に成り立っていることを忘れてはなりません。

むしろ、今後の人工知能やロボット技術の発展の可能性を考えれば、頭脳労働こそパソコンに置き換わられ、「人間がやることの意義」を示すのが難しい立場に追い込まれる可能性が高いくらいです。

 

しかも、そのような肉体労働やサービス業を移民に固定化すれば、「そのような職業は日本人がやるものではない」という意識を植え付けることになるでしょう。

そこで生まれるのは、特定の職業に就く人達への侮辱と偏見です。

 

侮辱と偏見を「する方」と「される方」が同じ地域に暮らすことになった時に何が起こるか。

それは現在のEUの惨状を見れば明らかです。

それは立場の異なる人々がお互いを排斥し合い、暴力と怨嗟が渦巻く社会です。

 

 

政府は「(人手不足に悩む)中小企業から強い要請がきている」という点を移民拡大政策の理由の一つにしているようですが、本来政府はそのような経営者を甘やかすべきではありません。

 

人手不足に悩むのなら、それを埋めるためには生産性向上を図るのが正道です。

そのために人的投資、設備投資、そして国家は教育環境への投資を行うべきでしょう。

 

決して安易な移民受入で将来への禍根を残すようなことがあってはならないのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

 

 

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