世界を救う読書

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「マツダ車がなぜ魂を揺さぶるのか」。日本のブランドが在るべき姿を探るための要諦を説く本をレビュー。

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 ここ数年一番元気のある自動車ブランドと言えば何でしょうか?

一番売れている、ではなく、ブランドとしての価値を順調に伸ばしている会社。

その意味では私はやはり「マツダ」ではないかと思います。

地域にもよるかもしれませんが、車に乗っていて信号待ちをしていれば大体マツダ車が近くにいます。

それにあの「ソウルレッド」と呼ばれる特徴的な赤い車は、誰しもが記憶に残り、「あ、マツダだ」とひと目で分かるインパクトがあるのではないでしょうか。

 

かく言う私も、今マツダCX-3という車に乗っています。

実はその前も同じくマツダCX-5

そして、その前もまたマツダDEMIO

 

という感じで、ここ10数年の間私はずっとマツダ車に乗り続けています。

 

ですが、別に昔からマツダファンだった訳ではありません。

むしろ「車は所詮道具なんだから壊れなければ何でも良い」くらいの感じで選んでいました。

 

そんな私がひょんな事から人生で初めて“新車で”DEMIOを買い、その後もずっとマツダに乗り続けています。

 

それはマツダの車・・・特にCX-5に乗ったときに「走る楽しさ」を感じ、マツダのクルマづくりに惚れてしまったからです。

CX-5が発売される少し前くらいから、マツダは(多分聞いたことは皆さんあるのではないかと思うのですが)あの「魂動(こどう)」プロジェクトをスタートさせました。

それは「車で走ることにワクワクやドキドキをもたらす。そんな車作りをする。」というプロジェクトで、私は正にそれにどストライクでハマってしまった、という訳です。

 

そんな「魂動プロジェクト」を手がけたのが、マツダのデザイン本部長としてプロジェクトの立ち上げ、推進を行った前田育男氏。

今回の投稿では、その前田氏がマツダがなぜ今のような地位を築けたのかを語る著作

 

「デザインが日本を変える」

 

の読書レビューをお届けします。

 

 

この本の目次を見ると、内容が組織論、ブランド論、言葉論というような章立てになっています。

ですので、つい組織のリーダーやブランドを牽引するような立場の人に向けて書かれているように考えられそうな気がしますが、案外そうでもありません。

確かにそのような人には、より実践的な内容として前田氏の言葉が受け止められるかもしれません。

 

ですが、多分これは「何かしら人と協力して物事を進めたい人」であれば、誰にでもお勧めできる本ではないかと私は思います。

 

と言うのが、この本で前田氏が述べている色々な持論は、すべて

 

「誰かと一緒にチームで仕事を行う上で大事なことは何か?」

 

に集約されているからです。

 

その事をプロジェクトリーダーならどうやるべきか、組織としてはどうやるべきか、そしてそのためにブランドとはどうあるべきかという様々な切り口から述べている本だと言えると思います。

 

そして、色々な「誰かと一緒にチームで仕事を行う上で大事なこと」とは、(私なりの解釈ですが)

 

自分が理想とするイメージを「カタチ」と「言葉」により表現し、それをただの情報ではなく、自分の情熱と共に仲間と共有すること

 

です。

 

それを会社組織に当てはめれば、社内で共有されやすい状況、共有された上でみんなが一丸となって取り組めるような環境を作り出すための組織論になり、

それを対ユーザーに当てはめれば、会社が目指すイメージを伝えるにはどのような方法が考えられるかというブランド論になる。

 

ぶっちゃけて言うと、この本の肝はその一点です。

もちろん、そのイメージを作り出すためには外から借りてきたようなマーケティング理論ではなく、自分たちの歴史や社員一人ひとりのあり方を見つめ、「自分たちとはそもそも何者なのか?」という根源的問題を突き詰めなくてはならない、とかそういう具体的な方針も書いてあります。

 

それはそれで参考になります。

ですが、やはりそれは方法論の話であり、肝はやはり上記の1点に絞られると言って良いかと。

 

特に私は前田氏の言う「イメージを“カタチ”と“言葉”にする。この両輪が絶対必要。」というのは、正に至言だと思います。仰る通り!

 

会社やチームというのはいろんな価値観や判断基準や経験を持った人たちの集まりです。

もちろんそれを「できるだけ同質の人を集める」という方法で、最初から方向性を揃えるということは可能でしょう。しかし、それではやはり全ての結論が予定調和にしかなりませんし、「意外なプラン」というモノは出にくい状況を生み出します。

 

どうせチームでやるのなら、一人では出せないような意外なプランが出せた方が面白いし、チームでやる意味がある。

 

でも、いろんな人が集まると、みんなが描くイメージや方向性は少しずつズレて行きます。打開策やアプローチは異なっている方が面白いですが、やはり方向性や終着駅はある程度揃っていないと、そもそもプロジェクトを進めること自体が困難になります。

 

その時に重要になるのが、この前田氏が言う「イメージを“カタチ”と“言葉”にする。」ということだと思います。

ちゃんと具体的にイメージが落とし込まれた「目に見える絵やカタチ」、そしてその絵やカタチがどのような意味を持つのか解釈するための「言葉」。

これら両輪が揃うことでチームは初めて同じ方向を向いて仕事をすることができる。

 

 

絵やカタチだけでは人によって何とでも解釈できるし、逆に言葉だけでは「同じ単語」でも人によってポジティブな意味だったりネガティブな意味だったりするのでイメージは共有できない。

 

やはりチームで仕事をするには、この両輪が揃ってないと駄目だというのは、誰かと一緒に仕事をしたことがある人であれば、「我が意を得たり」とストンと心に落ちてくるのではないでしょうか。

 

そういう意味において、この本は

 

「誰かと一緒にチームで仕事を行う上で大事なことは何か?」

 

を机上の空論ではなく前田氏自身の経験から導き出した、独自の・・・しかし非常に汎用性の高い方法論として落とし込まれたものになっているのではないかと思います。

 

 

 

うーん・・・マツダ車に乗っているからって持ち上げすぎですかね(笑)。

でも、やはり私も日本のブランドにはもっと元気を出して欲しいですし、ブランドとしてのプライドをもっと真剣に考えるべきだと思います(私も日本のブランドの一角を担っている身ですので)。

 

その意味でもこういった「ブランドが自分たちの夢や理想、目指しているものを語る」というコンテンツが注目されることはとても良いことだと思います。

マツダだけでなく、そういった日本のブランドを応援するという意味でも、微力ながら応援できないかとので、少しでもそのような気持ちを持っていらっしゃる方には、是非立ち読みではなく、購入して頂けるとありがたいです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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