移民先進国の欧州でも持て余す移民問題を、“日本ごとき”が乗り越えられるわけがない。
突然ですが皆さん、「奴隷貿易」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
中学校や高校の歴史授業でも取り上げられますので、ほとんど人が聞き覚えはあるのではないかと思います。
念のためコトバンクさんの説明を引用しておきますと
アフリカ住民を奴隷としてアメリカに売込んだ近代ヨーロッパの貿易形態。 16世紀以来新大陸の植民地化が進むにつれて,アフリカ黒人を捕獲して植民地の労働力として売ることが始った。
この貿易の輸送船に乗船させられる黒人の待遇は拷問に等しく,輸送される全黒人の少くとも 20%は,航海中に死亡したといわれる。
とのことです。
なんとなく思い出されましたかね?
さて、この奴隷貿易。
上記のコトバンクの説明にも書いてあるように16世紀以降18世紀くらいまで行われたものですが、これが現代でも繰り返されているということを書いたら信じられますでしょうか?
「え? これって歴史上の出来事じゃないの?」
と思われますよね。
ところがどっこい、現代でも平然と行われているのです。
しかもヨーロッパにおいて。
この記事によると
マリ、セネガル、コートジボワール、ギニアなどフランス語圏に募集グループがあり、旅行会社を装い、ヨーロッパでの仕事を斡旋するともちかけて代金を支払わせる。陸路、地中海沿岸までいき、別のグループに引き渡され、少人数で小型船でスペインに渡る。
偽のパスポート・身分証明書書類でスペインに入国すると、スペイン国内の組織に引き渡されてバスク地方まで移動する。ここからフランス国境を越えて「買主」の組織に渡されるのだ。
こうして密輸された移民は、農場で闇労働させたり、乞食のグループに入れられたりする。「フランス、英国、ドイツでは4、5人のアフリカ人を買い、教会やスーパーマーケットの入り口で物乞いさせたり、馬小屋ではたらかせたりする」。
働けたとしても、労働したとしても、イタリアの例よりももっとひどくて、月に100ユーロもらえるかどうかだという。
だそうです。
この記事のタイトルにもある通り、正に「ヨーロッパによみがえった奴隷貿易」と言って過言ではないでしょう。
ヨーロッパと言えば、EUの憲法である欧州条約にも書いてあるように
「人間の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配、人権の尊重の諸価値を基礎として、多元主義、無差別、寛容、正義、連帯及び男女平等という価値を共有する社会」
として一般には受け止められています。
そして、このベースになっているのは、いわゆる18世紀以来ヨーロッパで脈々と受け継がれてきた啓蒙主義を体現した価値観。
人間の可能性は正しい「理性」によって切り開かれるもので,そこにこそ真実の認識と人類の幸福とが実現できる世界があるという信念、あるいはイデオロギーです。
すなわち、人間の「理性」に対する絶対的な信頼といえるでしょう。
そのような「人間が理性的に判断できる環境を作り上げれば、人間は常に正しい判断ができ、世界は幸福になる」という信念こそが、様々な民族や価値観を受け入れ社会を多様化させることで、社会がより豊かになり、そして活性化されるという多文化共生主義を生み出しました。
戦後ヨーロッパで推し進められた移民受入拡大は、そのような多文化共生主義をベースとして行われていったのです。
民間企業にあらゆる民族を平等に自由に雇用する機会を与え、民族も国境を超えて自分が自由に働ける場所で働くことができる。そして社会の側もそのような他民族によって構成される状況を許容する。
そのような理想社会の実現を目指す。
しかし。
そのような自由と平等の追求の結果として実現されたのは、17世紀、18世紀の奴隷貿易の再来だった。
つまり啓蒙主義に基づいた自由や平等という近代的価値観は、進歩してきた“はず”の人類の歴史の時計の針を逆回りさせただけに過ぎなかったということです。
これが今ヨーロッパで起こっている現実です。
にも関わらず。
ヨーロッパで繰り広げられているにも関わらず、むしろ日本では移民受け入れを拡大しようという動きが政府を中心に活発になっています。
人手不足に悩む民間企業のみならず、メディアに出演するコメンテーターのようないわゆる知識人もいまだに
「今までとは考え方を変えるべきだ。」
「人手不足への対応待ったなし」
「移民受入のルールづくりをしっかり行って対応すべき」
などと移民受入を容認、推進すべしという見識を述べる人間が大勢います。
そういった人たちは
「日本は遅れている国である」
「日本は世界から閉ざされた国である」
という先入観の下「とにかく日本はもっと門戸を世界に開くべき」という結論ありきで話しをします。
ですが、そのような価値観からすれば“移民先進国”でもあり、“世界に門戸を開いている”ヨーロッパ諸国でさえも、移民に関してはこの有様。
解決の糸口が見えないどころか、ヨーロッパの連帯を破壊するような事態にまでなりかけているのです。
そのようなヨーロッパ諸国でさえ持て余すような事案を“移民後進国の日本ごとき”に無事に取り扱えるなどと本気で考えているのでしょうか?
わざわざヨーロッパが身を挺して移民問題の深刻さ、一度その政策を進めたら二度と下には戻れないという現実を示してくれているのに、今更同じステージに乗り込んで行こうとするのは、私にとっては正気の沙汰とは思えません。
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆