世界を救う読書

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敵に送った塩で自分がやられちゃ洒落にならねーぜ!

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さて、ここ数週間は毎週日曜日に下町ロケットを観て、「よし。明日から頑張ろう!」と気を引き締める日々が続いております。案外熱血ドラマに弱い私です(〃∇〃)

という訳で? 先週に引き続き下町ロケットからロケットスタート(笑)します。

 

下町ロケットで主役を務めるのは阿部寛演じる「佃製作所」の社長、佃航平(つくだ こうへい)。
その佃製作所のロケット事業におけるパートナーでもあり、(若干)敵対関係でもある帝国重工という会社があるのですが、これが三菱重工をモチーフにした会社になっています(誰かに聞いた訳じゃないですけど、ドラマを見る限り間違いないです)。
その規模もさることながら、ロケット事業という国家プロジェクトに参加するなど、帝国重工の姿は三菱重工と瓜二つと言えるほど酷似しています。
 
その三菱重工が属する三菱グループは、創業者である岩崎弥太郎以来、日本という国家が帝国主義の世界の中で生き抜いて行くために、一企業という形を超えて日本国家のために尽力してきました。
その三菱のグループ会社である三菱電機が中国が進める国家プロジェクト「中国製造2025」に協力することを表明しました。
 

 
中国製造2025というのは、中国政府が2015年に発表した、中国における今後10年間の製造業発展計画のことです。中華人民共和国建国100周年である2049年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標に掲げて、製造業立国を国家レベルで推進するものです。
ちなみに、その計画というのは2049年までの発展計画を3段階で表して
 
第1段階「2025年までに世界の製造強国入り」
第2段階「2035年までに中国の製造業レベルを世界の製造強国陣営の中位に位置させる」
第3段階「2045年には製造強国のトップになる」
 
としています。
 
 

中国製造2025への協力の何がまずいのか。 

わたしがこの動きがマズイと思う理由は、一つには本来日本で行われるべき投資が中国へ逃げてしまい、ただでさえ縮小し続けている国内需要がさらに縮んでしまうこと。
簡単に言えば、同じ金を投資するなら自国に投資しろ!って話しです。
 
もう一つはそれが中国と日本のパワーバランスを崩してしまい、日本の安全を脅かすからです。
中国はたしかにここ10年余り科学技術分野での伸長が目まぐるしく、特にITやAI関連事業ではビジネスの規模や技術発展のスピードアメリカに次ぐ存在になっています。
 
 
そもそも現在中国がこれほど国際社会、国際経済で力をつけたのは何故でしょうか?
それは他でもない、その莫大な資金力です。金目に糸目をつけず投資を行い、技術者を海外から呼び込み、そして海外とくにアメリカの優良企業を政府系の投資ファンドが買いあさり、それらの技術力を自らの中に取り込んでいるからです。
そのような政府系ファンドをソブリン・ウエルス・ファンド (SWF)というのですが、世界の10大SWFのうち3つが中国系。その中でも中国投資(CIC)の規模は1兆ドル近くに上るそうです。これらの中国系ファンドはシリコンバレーなどのIT企業の集積地で絶えずターゲットを探し回っており、アメリカが国家ぐるみで基盤を築いた革新的技術を持つ優良事業を買収しようとしています。
 
わかりやすく言えば、アメリカなどの国々が畑を耕し、水をやり、何年もかけて育てた果樹がようやく果実をつけ始めたところで、中国が「じゃあ、その土地も含めて1億円で買うわー」と持ち掛け、根こそぎ奪っていくというような構造です。
 

間抜けなことに中国を巨大にしたのは自分たちだった。

では、その莫大な資金力を中国はどこから手に入れたのでしょうか。
それは他でもない世界の「自由貿易」というシステムからです。
1990年代からアメリカは、中国を経済的な相互依存関係の中に絡めとり、グローバルなルールの下に服させれば、米国主導のアジア太平洋の秩序を認めさせることができると考えました。その戦略に基づき中国の世界貿易機関WTO)への加盟を後押したのですが、その2001年の世界貿易機関WTO)への加盟以来、アメリカのみならず、EU諸国、そして我が国日本も「世界の工場だ」などと称して、その人件費の安さを理由に中国へ技術移転を強化。それによって中国は製造業を圧倒的に強化しました。その結果、2015年までには世界の自動車の28%、船舶の41%、冷蔵庫の50%強、テレビの60%強、コンピューターと空調機の80%強をそれぞれ生産するようになっています。
 
その巨額の貿易黒字によって、巨額の外貨準備を保持することに成功しました。実際、その世界第一の外貨準備高を背景に、中国はアメリカ国債保有量が世界一になり実際的にアメリカの国債を買い支えているのです。
 
通常ならそのような不均衡が起これば為替によってバランスさせる圧力が高まります。ですが、中国政府が変動相場制を採用しておらず、中央銀行を通して外貨との相場を中国貿易にとって有利になるように切り下げているからです。このことについてアメリカは一応中国を避難して来ていましたが、実際にその状況が長い間変わっていないことから考えると、中国の巨大資本を武器に何らかのロビー活動がアメリカで行われているせいではないかと思います。
 
本当にそうなのかは分かりませんが、実際にその不均衡が是正されないまま進み、ここまで中国が巨大な資本を蓄えたことは事実です。そして、その資本を元にアメリカや日本の技術を吸い込み、その技術を元に日米とのパワーバランスを崩そうとしているのです。そうであれば、私たち自身の安全保障を高めるためにも私達がやるべきことは、そのような中国を利する技術供与、技術協力を中国に対して行わないこと、のはずです。
そういう意味において、三菱電機や他の企業が「中国製造2025」にビジネスチャンスを見出そうとするのは、目先の利益に目を奪われて回り回って自分たちの首を締めることになるということに他ならないのです。
 
敵に塩を送ったと言えば美談のように聞こえますが、それで自国の安全保障が危険に晒されていては、全く洒落になりませんよ・・・。
 
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😊
 
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