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「CNN vs トランプ」に見るアメリカジャーナリズムと、"記者クラブ"というぬるま湯に浸かる日本メディア

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何かとお騒がせネタの豊富なトランプ大統領ですが、今度はCNNとぶつかってるようです。もはや注目を集めるための炎上商法じゃないかと思えてくるほどですが・・・(笑)。

テレビでも結構報道されているので動画をご覧になった方も多いと思いますが、アメリカCNNの記者が中間選挙直後のトランプ大統領の記者会見で、ホワイトハウスという敵陣(というと語弊があるかもしれませんが)にありながら、猛然とトランプ大統領に食って掛かり、それに対してトランプ大統領が記者をかなり不躾にいさめるという一幕がありました。

その後、その記者のホワイトハウスへの入館証を取り上げたことを巡り、CNNがトランプ大統領を提訴。アメリカの報道のあるべき姿を巡って問題になっています。

日本のメディアだったら速攻で内閣に頭を下げそうですが、大統領を訴えるという手に出るのがさすがアメリカのジャーナリズムですね。

 

日本のメディアはこの会見時のトランプ大統領を「横柄でひどい大統領だ」というような雰囲気で報じました。そして、その流れでこのCNNの記者がホワイトハウスへの入館証を取り上げられたことと、それに対してCNNがトランプ大統領を提訴したことを「CNNが横柄で独裁的な大統領に対して見せたジャーナリズムの立派な気概」のように賛同する報道がなされています。

 

確かにトランプ大統領の言葉遣いに関しては、国家運営の責任者としてはちょっとどうかと思いますし、一方の記者についてもトランプ政権への批判ありきで、他にも大勢の記者がいるのに一人でいくつもの質問を大統領に浴びせかけるのはちょっとどうかとも思います。

まぁ、どっちもどっちだな、と。

ただ、その様子を「トランプ大統領が無礼なやつで、それに対してジャーナリストが毅然と立ち向かった」みたいなストーリーで日本のメディアが報道しているのは、私は違うのではないかと思います。

なぜなら、日本ではこのようなトランプ大統領の言動を「報道の自由を歪めるものだ」という風に報道していますが、実は日本ではある意味トランプ大統領の一連の行動よりもさらに酷い言論統制システムが敷かれているからです。

 

 

日本での言論統制システムとは何か

それは「記者クラブ」なるものの存在です。

記者クラブというのは、官公庁や政党、警察などに設置されている記者の連合体のことで、新聞社やテレビなどの報道に関わる会社の記者はほとんどがこのクラブに所属しています。

官公庁などが発表するプレスリリースなどもこれらの記者クラブに所属していなければ入手できません。記者会見においても、記者クラブに所属していなければ出席できない、もしくは出席できてもただ傍聴するだけで質問することなどができません。

このようなシステムは日本独自のもので海外には存在しないため、記者クラブというのは英語でそのまま「Kisha Kurabu」と翻訳されるそうです。Fujiyama, Geisyaみたいですね。

 

日本では記者クラブが官邸発表などの情報のリソースに対するアクセス権を独占しているため、記者たちは記者クラブでの席をキープし続けることに非常に神経を使います。何か粗相をしでかして記者クラブから追い出されたら、自分あるいは自社だけ記事を発表することができなかったり、他社より遅れてしまったりするからです。

したがって、記者クラブに所属する他社はもちろん、例えばそこで会見を行う政府に対しても「記者クラブと政府の関係性を良好に保つこと」が暗黙のルールとなってしまうため、政府に対して記者会見の場で手厳しい質問をすることができないような状況になってしまっているのです。

まぁ、日本の記者のレベルではそのようなルールがなくても、政府に切り込むような鋭い質問ができることがどの程度できるか分かりませんが・・・。

 

いずれにせよ記者クラブという「報道各社と官公庁の仲良しサークル」に守られた中で、しかもルールから逸脱しないレベルで、政府に“文句を言っているだけ”の日本のメディアが、トランプ大統領とCNN記者のような真剣勝負について意見を言う資格があるとは思えません。

 

 

日本のメディアは民主主義における自分達の役割を再考すべし 

私は特にトランプ大統領を支持している訳ではありません。

先程も書いたように今回のやり取りに関しては「どっちもどっちだな」という印象です。それは馬鹿にしているのではなく、記者も大統領も真剣勝負でぶつかった結果の喧嘩両成敗的な意味です。

 

しかし、残念ながら、日本の記者クラブのような、悪い意味で“ 和を以て貴しとなす”という仲良しこよし報道統制の元では、アメリカのような歯に衣着せぬ物言いでの真剣勝負は成り立ちえません。それは総理大臣や内閣官房の記者会見がまるでお葬式のような暗い雰囲気で粛々と進められるのを見れば、誰もが感じることではないでしょうか。

 

私は基本的にアメリカという国があまり好きではありませんが、このようなやり取りがテレビ報道も含めて様々な国民の目がある中で堂々と行われるような空気があり、それによってより良い社会を作っていくという気概が広く共有されているところは羨ましくもあります。

 

そもそも私達が採用している民主主義という政治体制は単なる「多数決」のシステムではありません。それではいずれ少数派による反乱が起こり、社会は不安定化していきます。そうならないように、単なる数の論理で話を決着させるのではなく、いろいろな人達の価値観や立場の違いを議論によって乗り越えていくことが重要です。

そのためには国家に関わる情報をできるだけ広く国民が共有できるようなシステムづくりが非常に重要となる訳で、そのためにメディアが果たす役割と責任はとてつもなく大きいのです。記者クラブなどという内輪組織を守ることなどがその役割ではないのです。

 

今回のCNN記者の処遇を巡る一連の騒動を単なるトランプ大統領への批判(というか“トランプいじり”)のために消費して終わり、などということはあってはいけません。

アメリカの姿を見て、自分たちが民主主義という体制における役割を果たすために何をやらなくてはならないのか? そのことをメディア自身が問い直すきっかけになることを希望します。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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