ラクダにテントを乗っ取られた男と移民拡大を進める日本政府の共通点
さて、今日は珍しく英語の問題から始めましょう!!(笑)。
The camel's nose under the tent.
この言葉の意味がおわかりになりますでしょうか?
Tentはキャンプとかで使う「テント」。Camelはラクダ。Noseは鼻。
という訳で、これは「テントの下のラクダの鼻」という意味になります。「は? なんじゃそりゃ?」という感じですよね。ごめんなさい。これは「英語のことわざ」なのです。
これは中近東の寓話を由来にすることわざです。
ある1人の男が一頭のラクダを連れて旅をしていました。ある夜、疲れたラクダは男にこう頼み込みます。「外は寒いので鼻だけテントに入れても良いですか?」と。
男は「鼻だけなら・・・」と了承するのですが、その日を境にラクダはどんどん大胆になっていき、鼻だけでなく顔も、そして首、胴体・・・と結局ラクダはテントで眠るようになってしまったとさ。
というお話。
日本のことわざに「千丈の堤(つつみ)も螻蟻(ろうぎ)の穴から潰いゆ」という言葉があります。螻蟻というのはアリのことですが、これも「ごく小さな欠陥や油断が、取り返しのつかない大きな損害や事故の原因になるという戒め」です。同じような意味ですね。
つまり
「これだけ、このちょっとだけで良いですから」
「駄目だったらやり直せば良いからお試しで」
詐欺でよくある手ですが、要求をすごく小さいものに見せかけてほんの少しだけ飲ませればこっちのもの。みんなに気付かれないレベルで少しずつ穴を広げて、最後には全ての要求を飲まざるを得ない状況に追い込む手法です。
あるいは(最近はいないかもしれませんが)「ちょっとホテルで休もうよ。トイレ行くだけ。何にもしないから。」と言って、女の子をホテルに誘おうとする男みたいなものです(笑)。
移民先進国ドイツに見る「一旦ラクダの鼻を入れたら全部乗っ取られる」方式
後から考えれば誰でも分かる話であり、正しく「後の祭り」なのです。
一昨日、衆議院を通過した移民受入拡大法案(正しくは「入国管理法改正案」ですが)も同じ。
例えば移民先進国であるドイツを例に挙げましょう。
第二次世界大戦後の労働力不足を解消するため、ドイツは1950~60年代にかけて180万人を超える外国人労働者「ガストアルバイター」を「期限付き」という前提でトルコ、イタリア、ユーゴスラヴィア等の東欧諸国から受け入れました。労働契約が切れたら母国に帰るという規定でしたので、ドイツ語教育や社会保障制度の整理などはほぼ全く行われませんでした(これは今の日本と同じですね)。しかし、予想に反して(?)彼らは労働契約が切れても帰らず家族を呼び寄せドイツに定住していったのです。
そしてそのような制限を設けた上で進めたにも関わらず、結局はなし崩しに拡大が進み、もはや移民なしには経済が成り立たなくなってしまいました。今のドイツの政治的混乱はその時のツケを払っているのです。
もちろん全てが上手く行っている時はそのような負の側面は表面現れてきません。
多くの人が「うーん、不満はあるけど凄く生活に困っている訳でもないし、仕方ないか」と飲み込んでしまいます。あるいはそれで声を上げるような人がいたとしても「そんな大騒ぎして大人気ない。みんな我慢してるんだからさ」と、むしろ声をあげる人を非難するわけです。
しかし、リーマンショック、ギリシャ危機のような大きな危機が発生し、状況が一気に悪化すると事態は急変します。みんなの中に溜まっていたわだかまりが一気に噴出するのです。現在のドイツやフランスで起こっていること、そしてイギリスのブレグジットもまたそのような現象の一つなのです。
ちなみに、ですが。
戦後の(西)ドイツは我が国と同じくらいの成長率の「超高度成長」を実現していました。西欧諸国が5%程度だったのに比べて日本は年率10%程度をキープ! 西ドイツもそこまでは行かないまでも10%近い成長率を誇っていました。
・・・が、それが1950年代半ばから急速に鈍化します。理由は上にも書いた通り、東欧からの移民受入によって人手不足を解消しようとしたからです。
日本は地政学的に外国から労働力を呼び寄せることができなかったため、「投資による生産性向上」という"資本主義的に正しい"方策を取ったために、高い成長率を維持することができたのです。
資本主義とは投資(投機ではありませんよ)を行うことで生産性の向上を図り、それによって生み出す価値を増進させるという経済システムです。
投資をすることなく「安い人間」をどこかから買ってきて現状の生産力をキープすることは資本主義ではありません。それは単なる現代版人身売買です。
それは「これだけの生産をするには、これだけの人が必要だから他所から買ってこよう」という、"計画にそった経済政策"という意味で「計画経済」でしかありません。
人手不足を人を買ってくることで補おうとするのは資本主義の否定なのです。
メディアや野党は、移民を受け入れる体制作りができていないとか、移民を受け入れるための制度設計を早急になどと言っています。しかし、ラクダの話と同じくそもそも技能実習生という名の事実上の移民受け入れの拡大する方針そのものが間違っているのです。
受入体制がどうとか、移民の社会保障がどうとかいう話をする時点で、既に「人手不足は別の国から安く人を買うことでしか対処できない」という資本主義の否定が前提あることに野党もメディアも全く気がついていません。
あるいは、その事に気付いているけれども、
「それをまともに言うと人手不足で困っているけれど投資はしたくないという大企業から睨まれるのが恐い。だけど与党批判はしたい。」
という2つを同時に満たすために"国民の側についているフリをして"いるだけなのでしょう。
いずれにせよ法案が衆議院を通過した以上、成立するのはもう確定事項となってしまいました。ただ、法案は別の法案により打ち消すことは可能です。
そのためにも「人手不足を補うのは投資による生産性向上しかなく、移民という安い労働力で解決しようとしているのは間違えている」ということを私達が理解し、そういう空気を作り上げていくことこそが大事だと思うのです。
一人ひとりにできることは限られています。でも何もしなかったら「そこで試合終了」なのです。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました😆