世界を救う読書

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自由貿易の真の姿とは何かを分かりやすく理解できる本

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さて、経済学には面白い言葉がありまして、その一つが

 

「経済学を学ぶ理由は経済学者に騙されないためである」

 

という言葉です。これはイギリスの経済学者ジョーン・ロビンソンが”主流派”と呼ばれる新・自由主義経済学を批判して述べた言葉です。

このブログでも何度か書いていますが、経済学者・・・特に主流派と呼ばれる新・自由主義経済学という派閥の経済学者は、自分たちの学説の権威を守るために平気で嘘をつきます。あるいは、自分たちの学説に都合が良いように事実を捻じ曲げて伝えます。

 

このような嘘に騙されずに正しい経済政策のあり方を知るためにも、私はもっと多くの人に経済のことを知って欲しいと思っています。他でもないそれが私達の生活を向上させることにつながるからです。

 

自由貿易が世界にメリットをもたらす」は間違っている

さて、そのような主流派経済学者が述べる嘘の最たるものが、「自由貿易は世界中の国々にメリットをもたらす」という貿易の自由化の正当化です。

ブレグジットトランプ大統領の出現などから保護主義の台頭が顕著になっている中で、「世界中にメリットをもたらす自由貿易を守るべき」という議論が根強くあります。しかし、この「自由貿易のメリット」というものが本当に正しいのでしょうか?

実は、その点を検証しなくては、我々は保護貿易を避け、自由貿易を進めるべきであるという命題が正しいのかどうかは分からないのです。

 

そして、結論から言うと自由貿易が世界にメリットをもたらす、あるいはデメリットよりメリットの方が大きいというのは詭弁です。

今日はその点をわかりやすく解説してくれる本をご紹介したいと思います。

 

それが 中野剛志著 「反・自由貿易論」 です。

反・自由貿易論 (新潮新書)

反・自由貿易論 (新潮新書)

 

 

さて、自由貿易と言われてパッと思いつくのは、ここ数年さわがれたTPPです。

このTPPの経済効果を計算する上で、主流派経済学の「応用一般均衡モデル(CGEモデル)」という経済モデルが活用されます。これはTPPに限らず、政府や国際機関が貿易自由化の経済効果を計算する際によく用いられるものです。

 

この経済モデルの致命的な欠陥は、失業者の発生や産業構造の変化によるコストを計算に入れていないことです。つまり、農業などの分野において雇用が失われても、それは瞬時に別の産業分野の雇用に置き換わるということになっているのですが、現実的にそんなことが有りえますでしょうか?

 

実際、国際機関とは別に大学の研究者がTPP(アメリカを含んだ場合)の経済効果について、雇用に対する悪影響などを取り入れて試算し直したところ、TPPの発行から10年後の経済効果は、アメリカで0.54%、日本で0.12%”減少する”という試算になりました。

また、TPPは現在アメリカを除いたTPP11という形で締結がされましたが、アメリカを含んだ12カ国の場合とアメリカを除いた11カ国の場合で、その経済効果が0.2%しか変わらないと試算されているのです。 

アメリカが入るか入らないかで、たった0.2%しか経済効果が変わらないなどということは、常識的に考えられません。

 

しかし、そのような非現実的な数値を元に、実際にTPP11という自由貿易協定は締結されてしまっているのです。

 

 

保護貿易が戦争を引き起こしたから自由貿易を推進する」は間違い 

このような流れを考えると、様々なメリットとデメリットを比較考量した結果自由貿易協定を結ぶのではなく、最初から「自由貿易協定を結ぶことが良いことだ」という前提の元に進められているとしか考えられません。

 

それではなぜそこまでして「自由貿易」が進められるのか?

 一つには、第二次世界大戦の引き金になった世界的な大不況は、保護貿易の台頭によって悪化したという神話があるからです。

 

しかし、それはまさに”神話”に過ぎません。実際には保護貿易による関税が起こした貿易摩擦によって起こされた影響は小さなものであり、保護貿易世界恐慌を引き起こした。あるいは悪化させた」という説は根拠がないという研究が、この本ではいくつも紹介されています。

したがって、中野氏は第二次世界大戦前の世界恐慌を例にとって「保護主義は歴史的な過ちである」という結論を引き出すことはできないと述べています。

 

では、世界恐慌を引き起こしたものは何だったのか?

それは

 

保護主義や関税そのものではなく、雇用を確保するために海外市場を奪い漁ったり(現在の各国が進める移民政策ですね)、自国の経済圏を確保しようとブロック経済化を勧めたり(TPP11、日欧EPA、中国の一帯一路構想がまさにそれ)、そういった帝国主義的な世界市場の争奪戦

(本書より引用) 

 

これらこそが、国際紛争を招き世界大戦を引き起こしたのです。

みなさん、これらのキーワードを聞いて思い当たるフシがありませんか?

そうです。

 

・雇用を確保するために海外市場を奪い漁ったり

→現在の各国が進める移民政策

 

自国の経済圏を確保しようとブロック経済化を勧めたり

→TPP11、日欧EPA、中国の一帯一路構想

 

まさに今各国が進めている”自由貿易的”政策と同じです。

そういった帝国主義的な世界市場の争奪戦こそが世界不況を悪化させ、世界大戦へと導かれていった。実はこれこそが歴史が導き出した教訓なのです。

 

この本では、このような一般に考えられている「自由貿易」とは全く違う、その真の姿が詳細に描かれています。そして、その自由貿易という美辞麗句の元にいまもまた世界が”以前来た道”を再び辿ろうとしている・・・そんな未来がこの本を読めば見えてきます。そして、「誰が」「何のために」この自由貿易を推進しているのかも。

 

ただ漠然と自明の理のように思い込まされている「自由貿易 = 善」というイメージこそが、世界を混乱に招くという「自由貿易」の真の姿を一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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