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厚労省の勤労統計不正は何が問題で、何が原因なのか

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(2019年2月19日追記)

この問題につきましては、別記事でも取り上げていますのでよろしければそちらもご覧くださいm(_ _)m

 

www.kogarasumarublog.com

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さて・・・・既に世間でも大騒ぎになっておりますが、またまた厚生省がやってくれましたね。

 

厚生省が行っている「毎月勤労統計」は、日本の賃金や労働時間、雇用の動向を把握するために行われている調査です。本来の目的に沿えば、日本国内全ての事業所に関して調査を行うべきですが、さすがにそれはとてつもない作業量になりますので現実的ではありません。

厚生省も元々その点は認めた上で、事業所をその規模に応じて区分けして影響の大きい500人以上の事業所は"全数検査"、それ以外はサンプルをいくつか選び出してその部分に関して調査するということで公表しています(この"それ以外"の事業所もさらに分類が分かれるようですが長くなるので割愛します)。

 

今回問題になったのは、この「全数検査しますよ」と言っていた対象である500人以上の規模の事業者においても

 

実は全数検査してませんでしたwww (・ω<) テヘペロ」

 

という事実が判明したことです。

しかも、全数検査していない事実を隠すために、全数検査してないんだけど、

 

全数検査しているように自動的に調整してくれる不正なデータ作成プログラムを使用してましたwww もう一回(・ω<) テヘペロ

 

ということが判明したのです。

 

(・ω<) テヘペロ 」

・・・・じゃねーーーよ!!!Σ(▼□▼メ)

なめんとんのかーーーー!!!

 

今回の件の問題は色々ありますが、主に

 

1) この統計に基づいて失業保険や労災保険などの給付額が計算されていたため、過去の給付金額が少なくなっていた。

 

2) この統計に基づいてGDPや実質賃金などを算出し、政府もそれに合わせた政策を検討します。したがってその統計自体に誤りがあったとなれば、政府の方針自体にも影響が出ます。というか、誤った政策を導き出していた可能性があります。

 

3) この統計はOECDのような海外の機関にも提出しているデータなので、そのような機関から日本の統計データに対する信憑性が疑われることになる。

 

ということです。

これらの問題については、実直に対応していくしかありません。例えば1のような過少な給付金額に関しては延べ約1973万人に、計約537・5億円の追加給付を行うことになっているそうです。

事務的なコストや該当者の手間を考えれば怒り心頭ですが、もう事が起こってしまった以上粛々と対応していくしかないと思います。

 

それ以外の2と3についても、一旦データ不正を行った信用が失墜した以上、これから真面目に取り組んでいくこと、再発防止のための対策を講じることを、これまた粛々とやっていくしかありません。「信頼回復」の大変さは想像を絶すると思いますが、これも既に起こってしまったことなのでどうしようもないです。

 

 

これらは外面的な問題ですが、根本的な問題は「なぜこんな事が起こったのか?」です。

 

厚生省はデータ不正は常態化している

今回の件を受けて厚労省が行った謝罪会見の中で、根本大臣が

 

「私が今まで報告を受けている限り、現段階で組織的隠蔽があったというような事実は、私は現段階ではないと思っています。」

 

と組織的隠蔽を否定していますが、そんなはずはありません。

「組織的」というのをどの程度の規模と考えるのか次第ですが、少なくともこんなデータの改ざんを誰か一個人の判断でできるはずがありません。町工場の事務じゃないんですから。

指示した人間、その不正プログラム作成を行った人間がいるはずですし、今年度一回の話ではなく10年以上も行われていたということは「誰かが誰かに引き継いでいるはず」です。ましてや「昇進が人生の目的」である官僚が上長の許可を得ずに、こんなことをするはずがありません。

これを組織的隠蔽と言わず何と言うのか??

 

なので、(担当者一人の判断ではありえないという意味で)組織的隠蔽であることは間違いないのですが、問題はこんなデータ不正を行った原因です。

 

実は厚生省のデータ不正は今回に始まったことではありません。

昨年の働き方改革の国会審議中にも労働者の労働時間に関して、不適切なデータ抽出を行っていることが問題になりました。

また、これも昨年全国の事業所の賃金統計データを作成するに当たり、サンプルの対象を入れ替えたにも関わらず、入れ替え前と比較し「対前年比%」を発表したりしています。

例を挙げたらきりがないのです。

 

なぜ厚労省はデータ不正を行うのか?

実はどのデータ不正にも共通して言えるのですが、全て安倍政権の方針に従ったもの、あるいはそれを正当化するための物であるのです。

今回の毎月勤労統計調査の不正は、結果的に労働者への雇用保険支払いを減額することになりました。500億円以上という規模です。それは私達労働者の側から見れば「貰えるはずの額が少なくなった」と言えますが、厚労省の側から言えば

 

「労働者に支払う金額を抑えられた」

 

ということを意味します。

そう、目的は「コストカット」なんですよ。

世間一般で信じられている「日本は財政破綻する理論」に基づいて、支出を減らすためにデータ不正を行った訳です。

 

また、もう一つの理由はアベノミックスの効果を実際以上に大きく見せること、そして「消費増税を実施するため」です。

FNNのニュースで公表されていたのですが、

この結果、公表された賃金は、データ操作の行われた可能性のある2018年1月以降、実態に近いとされる参考値と比べた場合、高い伸びを示すようになり、6月は、21年ぶりの高水準となるなど実態と乖離した数字になった可能性があるという。

そうです。

実質賃金の水準が実際よりかなり高く見積もられていた模様です。

 

つまり、国民生活を調査し正しい政策を導くための統計を自分たちの政権運営(あるいは財務省の方針)に都合の良い結果を導き出すために不正に操作した、という可能性が非常に高いのです。

「これだけ実質賃金が上がっているのだから、アベノミクスは成功しているし、消費増税しても問題ない!」と主張し、「国民には実感がない人が多い」と指摘されれば「それは価値観の問題だ (by 麻生大臣)」と切り捨てる。

それが安倍政権の現実、という訳です。

 

データは所詮データでしかない。判断するのは人間である。

そしてもう一つ最後に書いておきたいこと、それはやはり「データはデータでしかない」ということです。

別にデータなんか見ても意味がないとか言うつとりはありません。自分たちの考え方を相対化して眺めたり、置かれている立場を分析するためにもぜったいにデータは必要です。

しかし、数字は事実を表れかもしれませんが、それがデータとしてまとめられる際には、必ずそれをまとめる人や時代の価値観や方法論が加わります。神が指し示すような絶対的に正しい普遍的なデータなどというものは存在しないのです。

それらの数値からどのような意味を引き出すか、そしてそれを持ってどのように動くかを判断するのは人間なのです。

 

これは民間企業でもそうだと思いますが、社会の雰囲気的に「データ」や「数値」に過剰に依存する傾向が強いです。しかし、今回の厚労省のデータ不正は論外だとしても、上記に書いたようにデータ抽出の過程ですら既に、その時代や担当者の価値判断が入らざるを得ません。そもそも「どういうデータが必要か?」と考えることが既に価値判断なのですから。

 

データは所詮データに過ぎない。

それは勿論大事だが、何より大事なのはそれをいかに解釈するかという人間や時代の価値観です。今回の厚労省のデータ不正問題はその事を改めて考えさせてくれるキッカケにもなるのではないかと思います。

 

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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