世界を救う読書

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ギリシャ財政危機の再発は必然。問題は“日本とギリシャは違う”という事がそれまでに広く認識されるかだ。

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ちょっと遅くなってしまいましたが、ギリシャ財政破綻後に欧州連合から受け続けてきた金融支援プログラムが先月完了したようです。

 

・・・が、あまり報道されませんでしたね。

財政破綻した!という不安を煽る時には大騒ぎになるのに、財政が落ち着いた時にはベタ記事扱い。

危機だとか、災害だとか何か事が起こった時に騒ぐのは簡単です。

しかし、本当はこういう騒動が一段落した時こそ、メディアはその騒動が持つ意味をしっかり検証しなければならないはずですが、残念ながら日本のメディアはまだまだそういう真の意味でのレベルが低いようです。

 

さておき。

この支援プログラム終了によって何が変わるのでしょうか?

いわゆる投資家サイドの意見としては

「これで後はギリシャも自分たちで財政の黒字運営の軌道に乗せられるだろう。やれやれだぜ。」と考えている人も多いでしょう。

前回号(かな?)のNewsweekでも、「これからはギリシャに投資して一儲けできる時代だぜ!」みたいなコラムを書いている人がいました。

 

が、そんな簡単に行きますかね。

いや、私は敢えてこう言いましょう。

 

支援プログラムが完了しても何も変わらない。

ギリシャはもう一度財政破綻する。そして、今度こそEUから離脱する。

 

まぁ・・・同じことを言っている人は一杯いますので、別に私の独自説じゃないですけどね(笑)。

 

私がそのように思う理由は、別に何も難しいことではありません。

確かに欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金IMF)という外部団体によって国家財政を管理されるという屈辱的な事態が解消したとは言え、ギリシャの根本的な問題は何一つ解決していないのです。

 

ギリシャの失業率は19.5%前後。若者にいたっては45%近い。

ギリシャ政府の債務はまだGDP比で177%

基礎的財政収支(国家のお小遣い帳みたいな物です)は、2022年までGDP比3.5%の黒字を維持することをEUに約束している。

・従って、あと数年は緊縮財政を継続しなければならず、必要な財政政策は打てない。

 

 

などなど、問題は山積みです。

 

致命的なのは(今更言っても仕方ありませんが)、統一通貨をユーロを採用したことによる弊害が大きすぎる。

ユーロを採用せず独自通貨であれば、為替によって国際競争力を高めることが可能ですが、、統一通貨ユーロを導入している以上、為替メリットによってそれを実現することは不可能です。

そうなると自力で生産性を高めるしかありませんが、そもそもEU統合による莫大な利益を吸収したドイツなどのインフラ(公共設備、IT設備、教育レベルなど)が整った国に比べ、生産性を高めるための基礎力がまるで違います。

 

たとえて言うなら、戦前のトヨタ社のトラックとフェラーリのスポーツカーが、同じコースで「よーい、ドン!」でレースを始めるような物なのです。

そもそも勝負になるわけがない。

「負けるのはお前の努力と創意工夫が足りないからだ!」と言われても、そんな次元の話ではないのです。

 

必ず負け続けます。

そして、そのたびに「レース参加費用」として借金が積み重なっていくのです。

もしかしたら、フェラーリが勝手に事故って大破して、一回くらいは勝てるかもしれませんが、そんな奇跡を期待するのはナンセンスでしょう。

 

ですから、今の体制を維持し続ける限り、ギリシャは必ず再び財政危機に陥ります。

それを回避する策があるとしたら、EUから独立して独自通貨を復活させるしかありません。それでも立ち直れる保証はありませんが・・・。

 

 

という訳で、私はギリシャの財政危機の再来を確信している訳ですが、問題はそうなった場合の日本への影響です。

ギリシャが再度財政破綻という事態に陥った場合、必ず

 

「ほら見ろ。ちょっと落ち着いたと思ったらこれだ。日本も危ないぞ! 緊縮財政だ!」

 

と、また日本の財政破綻論者が声高に主張し、世論がそれに同調する空気が醸成されるだろうということです。

そしてもし、それが来年の消費増税前に起こったら最悪です。

「消費増税待ったなし!」ということになり、今度こそ消費税が10%に引き上げられるでしょう。

ただでさえ、前回の8%への引き上げ以来、日本の国民の実質所得はほとんど伸びていません。その一方「社会保障費に充てる」という公約だった税収はまるで伸びておらず、相変わらず「社会保障費の増大が〜」と叫んでいる訳です。

税率は法律によって変えることができます。しかし、税収は簡単に計算通りに上げることはできない、ということを日本は身をもって証明したのです。

 

ですから、もしそういう「ギリシャはまた破綻した。日本も!」という議論が活発になったら、是非みなさんに思い出した欲しいのです。

自国通貨の発行権がある日本と、自国通貨の発行権をEUに明け渡したギリシャでは条件が全く違うということを。

「自国通貨の発行権がある」というのは、それほど強大な力がある。それを保持し続ける限り、ギリシャとは違い日本には数多くの選択肢が残されているということを決して忘れないで欲しいのです。

 

 今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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