どうせ服を買うのなら中国製と日本製、どっちが良いですか?
「暖冬傾向」にあるという今季の冬ですが、さすがに年末になるとかなり寒くなってきますね。暖冬ゆえにあまり冬用の服を買わなかった人も、さすがにこの1〜2週間くらいはセーターやニットを買い足す人が増えたのではないでしょうか。
さて、そんなみなさんにお伺いしたいのですが、服を買うとしたら
「メイド・イン・ジャパン」
「メイド・イン・チャイナ」
のどちらが良いですか?
多分この質問をしたら多くの人が「だって日本製は高いじゃん」と言いたくなると思います。まぁ、実際そうですよね。この時期に多用するセーターやニットでも、日本製だと値段が倍以上することも珍しくありませんからね。
では、もし中国製と同じくらいの値段で日本製が買えるとしたらどうしますか?
ユニクロなどのファストファッションブランドの台頭ですっかりお馴染みになった中国製の服ですが、やはりまだ「品質で選ぶなら日本製」というイメージはとても強いと思います。値段がそれなりなら日本製を選ぶ人が増えてくるのではないかと思います。
そのような「日本製の復権」を目指して、生産性向上を掲げるある会社の取り組みを取り上げます。
山形県に建設された最新式縫製工場
日本の大手アパレルメーカーである「TSIホールディング」が山形県の米沢市に約6億円の資金を投じて最新式の縫製工場を立ち上げたそうです。
今やどこの、どのような業種の工場でも外国人がいない工場は珍しいくらいになっていますが、この工場は日本の縫製工場としては珍しく従業員はすべて日本人とのことです。
その秘密はITと融合した繊維機械のデジタル化。
縫う強さなどの細かな調整を自動で行え、生産数のデータ連携など可能なJUKI(という日本の繊維メーカー)の最新デジタルミシンや、CADデータを延反から裁断、マーキングまでを全自動で行う裁断機を導入したことで、生産に掛かる時間の大幅な短縮やカスタマイズ生産に対応することを可能にしたそう。
TSIホールディングの同社の西内渉・社長は「将来的には、朝注文を受けた分はその日の夕方に生産して出荷する、などいずれは従来の2〜3倍の劇的な生産性の向上を目指したい」と語っているそうです。
これこそ正に”資本主義の正しいあり方”だと思います。
人手不足が社会問題になりつつある昨今「移民受け入れ拡大」によって解決しようという風潮がありますが、これを経済学的には「労働集約型」と言います。実は、この移民受け入れ拡大は”その場しのぎ”の政策であるばかりか、私達の賃金を低く押さえるものでもあるのです。
労働集約型と資本集約型
労働集約的というのは、モノやサービスの生産工程において「人間の労働力に依存する割合が大きく、機械などに依存する割合が小さい」という意味です。これの逆は「資本集約的」で、「人間の労働力に依存する割合が小さく、機械などに依存する割合が大きい」ということです。
つまり
◯ 労働集約的
人の作業量 > 機械(=資本)の作業量
◯ 資本集約的
人の作業量 < 機械(=資本)の作業量
ということですね。
したがって、“生産拡大よりも労働集約的プロセスの自動化に向けた投資に力を注いでいる”というのは、生産量そのものを拡大するよりも、人の労働力の割合が高い生産工程をロボットなどの導入により自動化させること(資本集約的にすること)で、労働人口が少なくても同じ生産量を確保できるようにしているということになります。
資本集約型を簡単に言うと
すごい難しいことを言っているようですが、メチャクチャ簡単な話なんですよ。
例えば私は仕事で自社商品の撮影を行っています。
撮影スタジオは会社から遠い場所(車で1時間)にありますので、撮影のためには商品をスタジオまで移動させなくてはなりません。
仮にそこで私が“商品を手で持って歩いて移動させる”としましょう。車で一時間ですから、そんなことやっていたら10個、20個の商品を撮るのに何日かかることでしょう。気が遠くなります。
これが「労働集約的」です。
ですが、トラックを購入して20個の商品を一度に、一時間で運べるようにしたとしたらどうでしょうか?
「労働集約的」だった時に比べて、数十倍の速さで撮影することが可能になります。もちろん、それによって浮いた時間で別のサービスを行い収益を上げることが可能になります。この「トラック購入」が設備投資であり、「労働集約的から資本集約的」に移行することになります。
そして、明らかに資本集約的の場合の方が、圧倒的に生産性を上げることが可能になります。「撮影」というサービスの質も向上しますし、このWebショップ最強の世の中においては、より多くの写真を提供できることで収益も飛躍的に高まるでしょう。
何も難しいことはありませんよね。
ところが今日本がやろうとしている移民受け入れ拡大というのは、「トラック買うよりも、歩いて運ぶ人を雇った方が安い」という理由でトラックの購入を渋って、その分の過酷な労働を低賃金労働者に強いていた訳です。つまり、企業がトラックを買うという投資をするのをケチって、その分の負担を労働者に押し付けているのです。
負担を労働者に転嫁するよりも適切な投資をするべし
ですが、この当たり前のことを全くやっていない国があります。そう我が国、日本です。ようやく少しずつレジの自動化などの流れが起こって来ましたが、それはごく一部。基本的にはこの人手不足のご時世どこの会社も「人手不足を外国人労働者という安い労働力で補うしかない!」とやっているのです。
先に私が書いた撮影という仕事の例をみてください。
今日本がやっているのは「トラック買うより外国人を雇った方が安いから、じゃんじゃん外国人を日本に呼び寄せろ」ということと同じなのです。そして、その安い外国人の賃金に日本人労働者を合わせようとしているのです。
トラック買うより外国人雇った方が安い
↓
外国人はトラックを買わなくても喜んで歩いて運ぶんだから、日本人労働者も働きたいなら外国人と同じ賃金で歩いて運べ
これなんですよ。日本企業がやっているのは。
皆さんどれだけ日本企業がアホなことやっているかわかりますよね?
「ってか、トラック買えよwww」って叫びたくなりませんか?
何も難しいことではありません。
TSIホールディングの新工場のように、生産性を高めるために必要なのは設備への投資と、それを扱う人間の技能を上げるための投資です。上記の例で言えば、「トラックを買って、それを運転できるように労働者を訓練する」。
それだけの話なのです。
確かにTSIホールディングがこの新工場に6億円を投じたように、設備投資にはお金がかかります。ですが、資本主義というのは本来そういう物なのです。その設備投資をケチってその分の負担を労働者に押し付けて良い理由にはなりません。
「生産性向上のために必要なのは投資であり、外国人受け入れによるコストカットではない。」
そんな当たり前のことが2019年には皆さんに広く共有されて、みんなが豊かになれることを祈っています。
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆