お金稼ぎは悪いことか?
先日とあるテレビ番組で、以前インサイダー取引で逮捕された村上何某が出演し、お金についての講義とやらをしておりました。
その中でとある男性が「なぜお金儲けは悪いことだと言われるのか?」という質問がありました。インサイダー取引で捕まった人にその質問を投げかけるのも中々シュールでしたが、実際日本では「お金儲けは悪いこと」と捉えられる風潮が強いと思います。
そこで今日はそのことについてちょっとお話してみようかと。
「良いお金儲け」と「悪いお金儲け」
敢えて単純化して言えば、お金儲けには二つの種類があります。良いお金儲けと悪いお金儲けです。
この場合の良い、悪いというのは単に道徳的な意味ではありません。社会や国民にとって良いかどうかです。
つまり、社会や国民を豊かにするお金儲けであれば良いお金儲けですし、自分だけが過剰に得をして社会を貧しくするようなお金儲けは、悪いお金儲けとなります。
なぜならそもそもお金とは国家の永続性を基盤にしてこそ成立するものです。もし国家の永続性が不安定であれば、お金をもらってもいざ使おうと思った時に使えないかもしれません。
それならお金よりも現物をもらった方が良いことになります。
だからこそ、お金が流通するということ自体、国家が永続的に存在するということが前提になっているのです。したがって、当然そのお金を利用するのであれば、その方法が国家や社会を豊かにするかどうかということが良い悪いの判断において重要になります。
だからこそ社会や国民を豊かにするお金儲けであれば良いお金儲けですし、自分だけが過剰に得をして社会を貧しくするようなお金儲けは、悪いお金儲けとなる訳です。
良いお金儲けとは?
では、具体的に良いお金儲けとは何なのか。
それは企業家が行う「産業」です。
産業によって利益を確保するにはお客さんに付加価値を提供しなければなりませんし、従業員の能力を最大限に活用する必要があります。したがって、適切な競争と労働環境で企業が利益をあげようとすることは、良いお金儲けなのです。
悪いお金儲けとは何か。
では、その反対に悪いお金儲けとは何でしょうか?
ズバリ金融業…その中でも「投機」です。
村上何某もそうなのですが、投機とは一見すると派手にお金を稼いでるように見えます。なので多くの人が投機によってお金を稼ごうとして、村上何某のような投機家にアドバイスを求める訳です。
しかし、そもそも投機とは単なるギャンブルです。何か新しい付加価値を創造しているわけではありませんし、そこから所得が生まれるわけでもありません(事務手続きをする手数料くらいは所得が発生しますが)。
賭博の切った張ったの世界と同じく、誰かの富が別の誰かの手に渡るだけの"ゼロサムゲーム"なのです。
投機家の人たちが華やかに見える陰で、その富を奪われた人たちがいるのですが、その負け組にスポットが当たることはありません。
したがって投機によって獲得されるお金は国家にとって何にも寄与しません。税金は払ってるかもしれませんが、税金は所得を再分配するためのシステムであって、税金を払っているからといって社会を豊かにする訳ではありません。
ましてや昔のような累進課税システムとは違い、今は高所得者への課税額は軒並み減額されています。その上消費税や社会保険の支払いにより、むしろ低所得者の方がバランス的には所得再分配の負担が大きくなっているとさえ言えるでしょう。
デフレ不況が続く中、多くの国民の所得が減っています。あるいはほとんど伸びていません。そのような中で少しでもお金を稼ぎたいと思うのは当然です。
しかし、労働や起業による「付加価値の創造」ではなく、投機という名のギャンブルによって楽に効率的にお金を手に入れようとさる風潮が強まっているのは健全とは思えません。なぜなら、最初に書いたようにお金とは国家の永続性を担保にして存在するものだからです。
悪いお金儲けは社会を不安定化する
投機という名のギャンブルによって、得られた富は単なるゼロサムゲーム(誰かの富を収奪すること)の結果でしかなく、それは富の配分を歪めます。
そして、歪められた富の配分は社会に格差を引き起こし、必ず社会の不安定化をもたらします。現在のヨーロッパの混乱もまさにその実証です。
お金儲け自体は悪いことではありません。
しかし、どのようにそのお金を稼ぐのか。そして、そもそもお金とは何を源泉にして生み出されているのか。
そのことをしっかり考えなければ、お金を稼ぐという行為は「ただ純粋に自分の金銭的利益を追求する行為。そのためには他者がどうなろうが知ったっこっちゃない。」という独善的な社会を生み出すことになるでしょう。
今回も長文を最後までお読みいただきありがとうございました😊