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厚労省不正統計。なぜ統計を操作しなければならなかったのか?

「やっぱりね。」

 

もはやこれ以外に言葉が思いつきません。

厚労省の不正統計問題ですが、立憲民主党など野党が実質賃金の参考値について、2018年の1月から11月までの期間で6月と11月を除きすべてマイナスになるとの試算を示したのですが、厚労省がこの試算について同意しました。つまり

 

2018年はほぼ全ての月で実質賃金が前年比でマイナスになっていたのに、プラスになるように統計データを改ざんしていたことを厚労省が正式に認めた

 

ということです。

 

つい先日「景気拡大がいざなぎ景気を超えた」とか言ってましたが、あれは何だったのでしょうか? (笑)

勿論政府としては「実質賃金だけで景気を測っているわけじゃないから。実質賃金がマイナスになってても、他が伸びてれば景気拡大ですよ。」と言って、今更「いざなぎ景気超え」を撤回したりしないでしょう。

まぁ、ぶっちゃけもうそれはどうでも良いです。”一度発表した物を撤回などできない”でしょう。民間企業でもそうですから、一国の政府ならなおさらです。

 

ただ、この問題には大きく2つのポイントがあります(いや、他にもいっぱいありますけどね(笑))。それは

 

1) 目的

2) 誰が指示したのか

 

です。

 

不正統計の目的

まず(1)の目的。

厚労省の山田雅彦 大臣官房審議官が「隠蔽の意図は否定できないと考えています」と表明しています。

隠蔽したということは「たまたま」とか「間違った」とかいうことではなく、意図して15年もの間不正な統計を行っていたことを認めたということです。では、その目的は何だったのか?

これほどの規模の隠蔽を誰か一人とか少人数で計画できる訳がありません。中小企業じゃないんですから。厚労省として明確な指示が下ったことは間違いないです。そして、厚労省とは「官僚」です。

官僚の人生の目的は出世です。それ以外にありません。

そして、その官僚が出世するための「評価基準」を作るのは国会議員であり政府です。

そうなると、何かしらそのような不正を行うための指示が政府から下った可能性が高いと言えます。

 

誰が指示したか

では、その政府とは「誰か」?

ここで次の(2)になるわけですが、この不正統計は2004年から行われているようです。当時の政権と言えば、小泉政権です。そして、その経済政策のブレーンはあの悪名高い竹中平蔵氏。

この小泉政権からいわゆる新自由主義的な経済政策が次々と行われるようになりました。「規制緩和」「官から民へ」「聖域なき構造改革」といった言葉が日本中を駆け巡っていたことを覚えている人も多いでしょう。

 

あれから15年近くが経つわけですが、果たしてこれらの新自由主義的経済政策によって国民の暮らしは良くなったのでしょうか? 国民の実感としては全く改善された兆しはありません(富裕層以外は)。にも関わらず、その政策は覆されることなくずっと続いてきた・・・いえ、むしろ第二次安倍内閣になってからは強化されたとも言えると思います。

 

では、なぜ国民の実感が得られないにも関わらず、その動きを止められなかったのか?

それこそがこの「統計データに基づいて算出された経済指標によると景気は回復している」とずっと喧伝されてきたからです。

 

勤勉な日本国民の多くは「自分の生活に実感はないけど政府がそう発表しているのならそうなんだろう。もう少し、もう少し自分も頑張ろう。」そう思って、景気回復の実感がないにも関わらずずっと頑張ってきたわけです。

言わば国民は政府に文句を言いながらも"それなりに"政府を信頼して黙って政策についてきたのです。

 

しかし、実はその国民の政府に対する信頼につけ込んだのが新自由主義でした。

 

なぜ新自由主義が力を持ち続けているか

新自由主義に限りませんが、今までの政策と違う政策を推し進めるためには、その政策が正しいものであることを立証しなければなりません。それは民間企業でも同じことです。新しい方法をとっているのに全然成果が出ないのでは、責任問題に発展するでしょう。それと同じです。

 

つまり今までの政府の方針とは違う、新自由主義的政策を進めるためには景気は回復し続けなければならないのです。

 

そして、新自由主義がそのために用いる理屈とは

 

「民間の自由な競争が作り出す、自由で開かれた市場とは、いついかなる時にも正しい絶対正義である。それによって景気が後退するなどということはあり得ない。そんなことが起こるとしたら、それは統計データが間違っているのだ。」

 

というものです。

もはや新自由主義の理論は絶対に”経済学的に”正しい。間違っているのは現実だ。」という自由絶対正義宗教と言っても良いでしょう。

 

野党は今こそ仕事しろ。

政府は「勤労統計は景気判断の一要素にすぎない」と言葉遊びで逃げるつもりですが、国民の実質賃金がマイナスということは国民が貧困化しているということです。それは多くの国民が実感していることであり、逆に言えばどれだけ"統計上"景気が拡大していようが国民の実感が得られなければ意味がないのです。

経済というのは「国民の生活を守る」ための活動なのですから。

 

また、もしそれでも「実質賃金が経済判断の一つの要素に過ぎないと言うのであれば、「じゃあ、どの数値がどうなれば景気拡大だと判断するのか」を明確にする義務があります。そうでなければ「国民がどうなろうが、政府の言ったもん勝ち」になってしまうからです。

 

今回珍しく立憲民主党が仕事をして厚労省に隠蔽を認めさせました。

ただ、これを「安倍おろし」の道具に使ってはいけません。安倍政権が崩壊しても別に構わないのですが、安倍政権が交代したところで事態は変わりません。それだけでは駄目なのです。問題はその奥にあるのです。

小泉政権から続く新自由主義という病理を徹底的に暴き出すまで、野党は絶対に手を緩めてはなりません。もしそれが出来ずに単なる安倍おろしに終始してしまえば、結局「野党は政権を獲りたい」「安倍が嫌いなだけ」なのだと受け止められ、決して国民の信頼を勝ち取るとこができないでしょう。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

 

 

 

 

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