日本の衰退の原因は「良いものをより安く」という幻想にある。
アニメの言えば日本政府が「クール・ジャパン」政策の元、日本文化の一つとして推し進める“コンテンツ”の一つですが、そのアニメ制作業界はブラック企業が常態化しています。
今回、日本テレビ子会社のアニメ制作会社「マッドハウス」が、未払い残業代の請求と長時間労働の改善、スタッフによるパワハラの謝罪等を求めて訴えられたようです。
彼が勤めていた会社を某アニメ制作会社を辞めた時も、「こんな給料でこんなに働かせられたら生活できない」と言っていたのを覚えています。彼は昔から漫画やアニメが好きで、それに携わる仕事をするのが夢でした。
私は当時まだ学生でしたが、彼がその夢を実現したにも関わらず、そのようなブラック企業化によって夢を諦めなければならなかったことに、とてもショックを受けたのを覚えています。
ただ、当時は「社会ってそんなに厳しいんだ」という衝撃でしたが、今考えればそれは「社会としての厳しさ」ではなかったですね。単にブラック化した企業の犠牲になったという“企業のエゴ”に潰された犠牲者だったのだということが分かります。
(当時はまだブラック企業という言葉はありませんでしたが)
実はブラック企業の存在に私たちも加担している
この記事の最後は「アニメは多くのファンに支えられる産業であると同時に、政府が推し進める「クールジャパン戦略」の主要コンテンツでもある。そこで働く人々がきちんと報いられる仕組みづくりなしには、魅力的な作品を継続的に生み出していくことはできなくなってしまう。マッドハウスは、Aさんの訴えにどう向き合っていくのか。日本のアニメ業界にとって試金石になることは間違いない。」という言葉で締めくくられていますが、正にその通りだと思います。
もちろんこれはアニメに限ったことではありません。
日本が今まで育て上げてきた文化は、ちゃんとそこで働く人達がまともに暮らせるような仕組みを築き上げなければ維持していくことはできません。
しかし、問題は「ブラック企業は撲滅すべき!」という言葉には多くの国民が賛同する一方、「良いものをより安く買う」ことを消費者は捨てきれない、ということです。
ブラック企業がなぜブラック化するかと言えば、(経営者の道徳的問題を除けば)「良いものをより安く」という信仰が日本では根強く、同じサービスの質でも値段は下げることが強烈に求められるからです。
品質が良いものを安い値段で提供するためには、利益を削るかコストを削るしかありません。しかし、土地の費用や光熱費などの固定費はそう簡単に削ることはできません。そうなると一番経営者が下げやすいのが、社員の給料だということになります。
つまり「良いものをより安く」ということが現実的に可能だと信じ、それが良いサービスだという日本人の信仰が、企業のブラック化を促進しているのです。
ブラック化を生む悪循環
つまり、「良いものをより安く」という幻想を抱き続けることが
労働力を安く買い叩く
↓
買い叩かれた人の所得が下がる。
↓
良いものをより安く提供することを当たり前だと思う
↓
上に戻る
という悪循環を生むのです。
自分の報酬が安く買い叩かれた人が逆に消費者の立場になると、今度は別の人に(自分が苦しめられているはずの)「良いものをより安く」の実現を求めるという構図です。
「気に入っていたお店が潰れた」
「毎回読んでいた週刊誌が廃刊になった」
「行きつけのお店の接客が悪くなった」
こんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
これが上記の悪循環こそがサービスの低下を生み、下手をすればそのサービス自体の終了という最たる例なのです。そして、この悪循環が「デフレ」の恐ろしさなのです。デフレとは単なる不況ではなく、より良いモノやサービスが継続&発展するのを妨げるところが恐ろしいのです。
悪循環を断つ唯一の方法
では、その悪循環を断つにはどうすれば良いのか?
最終的にはもちろん私たちが「良いものをより安く信仰」を捨てて、(少なくとも自分が好きな)モノやサービスに適正なお金を払うということが必要です。お金が回ってこそ人や企業は「より良いもの」つまり「より付加価値の高いもの」を作ろうという努力をするようになるのです。
適正なお金を払うことで、それが回り回って自分にとってより良いサービスを育てることになるのです。
とは言え。
このデフレ不況で賃金も上がらない中では、頭では分かっていても中々お金を払えるものではありません。私たち個人もそうですし、民間企業もそうです。
でも。
でも、です。
そのような不況の中でもたった一つお金を存分に使うことができる組織があります。
それが政府です。
日本政府は借金まみれで、日本の財政は破綻寸前などと言われていますが、あれは100%嘘です。何と言っても日銀の黒田総裁自身が財務省時代にそのように公言しているのですから。
以前ムーディーズというアメリカの格付け会社が日本国債の格付けを下げた時に、財務省を代表してその格付け会社にクレームをつけました。その意見書の中で黒田氏は
日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとしていかなる事態を想定しているのか。
と主張していらっしゃいます。
(デフォルトというのは財政破綻のことだと思って頂いて結構です。)
全くその通りで自国通貨で運用している日本の国債がデフォルトすることなどあり得ません。だって、政府が日本円を発行すれば良いんですから。
だったらやることは唯一つ。日本政府が率先してお金を使うのです。お金は誰かが使わなければ周らないのですから、誰かがまずお金を使うことが大事なのです。
別に「バラマキ」だと言われようが構わないのです。
バラマキだろうが何だろうが、それで日本経済が回って、今回のアニメ製作者のような人たちに十分な報酬が支払われるようになるならそれで良いじゃないですか。
それとも「バラマキは駄目だ。バラマキをするくらいなら、日本のアニメ製作者なんて死んじまえ!!」とでも言うのでしょうか? 個人じゃないんですから、政府が自分の口座にお金を貯めてても仕方ないんです。そのバラマキが日本の文化の促進に繋がるならそれで良いと私は思うのです。
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆