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消費税凍結と国債格下げは無関係。国民生活とどっちが大事?

 

何か発言するたびに反発を買う政治家、麻生太郎。

一時内閣総理大臣も務め、「未曾有」を「みぞうゆう」と間違えて読んだことなどからマスコミから「常識がない」という感じで散々に叩かれた人物です。そういった事もあり麻生氏はあまり国民から人気がある政治家とは言えませんが、私自身は以前はそれなりに評価していました。

ところが、安倍政権の副総理、財務相を務めるようになってからの豹変ぶりは目に余るものがあります。先日も国会でこのような答弁を行ったようで、もう心底がっかりしました。

 

麻生太郎財務相は3日午前の参院決算委員会で、消費増税の凍結論について「そのような意見があるのは承知している」としつつ、「国債の格付けに影響が出る可能性があり、格下げの覚悟も必要」と指摘した。

麻生氏のこの発言は色々ツッコミどころ満載でもう笑うしかないくらいです。笑えないけど。

ただ、この麻生氏の発言をよく考えると、よくニュースで出る「国債」とか「国際社会の信用」という言葉がどういう意味なのかが分かってきます。

そこで今回はこの麻生氏の発言を通して、よく分かる「国債」。そして、日本の借金問題で必ず話題になる『国際的信用」という言葉の意味を考えてみたいと思います。

 

そもそも国債とは何か?

国債というのは政府が発行する債権のことで、これを銀行などに買い取ってもらうことで政府は必要な資金を調達します。「日本政府があなたからこれだけのお金を借ります」という証明書みたいなものです。

そして、この国債というのには大きく2つの種類があります。それは「内国債」と「外国債」です。

内国債は「国内」で調達するもの。外国債は「海外」から調達するものです。国内で調達する場合は当然日本円ですが、外国債の場合は日本円では買えませんから外貨・・・具体的にはドルで調達します。


では、日本政府が発行する国債は内国債と外国債のどちらなのでしょうか?
日本の場合は100%、すべて内国債です。つまり日本円で調達される借用書は「円」で運用されていますので、ドルなどの外貨による調達は「0」です。
ちなみに、財政破綻したギリシャは共通通貨ユーロを採用していますし、1990年台に経済破綻したブラジルもドルという外貨での国債を運用していましたので、日本とは全然話が違います。


適当さに財務省も激怒した国債の格付け

またここで国債の格付けというものが何か?も軽く説明しておきます。
国債の格付けというのは「債務不履行」・・・いわゆる財政破綻に陥る可能性がどれだけ高いか?を表現したものです。
会社によって違うのですが、大体上からAAA、AA、A、B、・・・という感じで示されます 。

ちなみにこの格付を行っているのはただの民間企業です。
公的機関でも何でもありません。
三菱UFJとか住友銀行とかがランク付けしているような感じで、特別に政治的な影響力を持つわけではありません。

 

しかも、その格付の根拠も極めて曖昧です。
基本的には「政府の負債」と「国内総生産 (GDP)」のバランスを比較して判断しているようですが、「将来この政府は借金の返済延長を求める可能性がある」とか何も根拠のない思い込みで勝手にランク付けしています。
そのあまりの曖昧さに、実は財務相がブチ切れて抗議文を送ったことがあるくらいです(下記リンク参照)。

 

 
かつて麻生氏は国債格付けが下がっても問題ないと言い切った

さて、麻生氏は「消費増税したら国債格付けが下がる可能性がある」とおっしゃったようです。そして国債格付けというのは、先程アメリカのS&Pのような“民間の格付け会社”が、各国の国債のランク付けを勝手に、しかも曖昧な基準で行っているものです。

そのような外国の“民間企業”が独断と偏見で付けている国債の格付けが下がったとして・・・何か問題があるのでしょうか?
先程書いたように日本の国債(日本政府の借金)は100%日本円で調達されています。そしてその国債を保有しているのはほとんど日本人です。

日本の政府が日本の金融機関から「日本円」で調達している国債。それを海外の格付け会社がランクを下げたからって、一体なにが問題なのでしょう??
さっぱり分かりません。

 

ちなみにこのことは麻生氏自身が以前話していたことです。

2015年にアメリカの格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本の国債格付けを1段階引き下げたことがありました。格下げによって悪影響があるなら、国債の価格が下がるはずですが、逆にこの時は値上がり傾向でした。それを受けて麻生氏は、S&Pによる格下げを「話題にするほどの意味がない」と言い切ったのです。

 

あの・・・麻生さん、息してますか??
大丈夫ですかね・・・。

 

国債の格下げたら国債が暴落するって本当か?

ここまで来ると本当に「格付けが下がって何が問題あるのか説明して欲しい」くらいなのですが、そもそも日本が消費増税を凍結したからと言ってなぜ国債の格付けが下がるのでしょうか?

恐らくそれは「消費増税を凍結することで日本円に対する国際的信用がなくなり、国債を保持している人が国債を売り払ったり、国債を買おうとする人がいなくなる。格付け会社はそれを見越して格下げをする」という話でしょう。

ただ、それで国債を売り払った人がいたとして、その人は売り払って得たお金をどうするのでしょうか?
日本の国債が世界第一位の金利の低さであることから分かるように、日本国債は超人気商品です(=国債とは政府に対する借用証書ですから、金利が高い方が貸す方としては儲かる。金利が安いということは儲からないということですが、日本の国債は0.数%という超低金利でも貸したくてしょうがないというほど、儲け幅は少ないけど確実に儲かるということです)。

もしかしたら、資産家の中にはドルなどの外貨に変換して高飛びする人もいるかもしれませんね。
でも、円からドルに両替してあげた銀行は、高飛びした人から貰った日本円をどうするのでしょうか?
海外の銀行だろうが日本の銀行だろうが、結局一番人気の国債を買うしかありません。結局また日本の国債が買われるのです。堂々巡りになるだけで、国債を買ってくれる人が誰もいなくなって暴落する! なんてことはあり得ないのです。

 

普通の社会の「信用」と経済での「信用」は違う。

いかがでしょうか?

麻生太郎氏は「消費増税を凍結したら国債の格付けが格下げされる!」と脅し文句のように言ってますが、このように国債という物に関して冷静に考えてくれば「はぁ・・・それが何か問題なんですかね?」としか言いようがないのです。

ただ、この麻生氏の発言がロイターや各大手メディアなどで取り上げられているのは事実です。
それはこの発言が「消費増税凍結に対する脅し文句(?)」として効果があると認識され、実際に心理的な効果があるから、このように取り沙汰されているのではないでしょうか。
その根底に潜むのは日本人の「信用」に対する過剰な反応です。

海外の人たちと接するとよく分かりますが、日本という社会は「信用」で築かれている社会です。特にアメリカのビジネスのことに関して言えば、全ての活動の基盤になっているのは「契約」です。「信用」ではありません。
誰かの信用を勝ち得るために、誰かの信用を損なわないために・・・という行動基準は基本的には日本人独自の考え方であり、それ以外の国では「契約に書いてあるかどうか?」が判断基準の全てです。

 

ちょっと専門外ですが、恐らくそれはキリスト教の聖書やイスラム教のコーランなど、神と人間の契約が明記されているものが価値観の基盤になっているかどうかの違いではないかと思います。日本ではそのような明文化された神との契約などというものは存在しません。あくまで「八百万の神々」と言われるように、日本の神はこの世の至るところにいて、私達の生活に溶け込んでいます。
だからこそ、「契約」による判断ではなく「お天道様が見てる」というような、人と人、あるいは人と神々との関係性が判断に強い影響を与えるのではないでしょうか。

そのような日本人にとっては、他人からの「信用」を損ねるということは非常に悪い行いであるということが無条件に信奉されており、ましてや「国際的信用」などという言葉まで持ち出されたら、それだけで慌てふためくような心性がDNAレベルで根付いてしまっているように思います。

 

だからこそ、今回の麻生氏のような「信用」「(信用が揺らぐことによる)格下げ」と言った言葉を聞くだけで、その詳しい内容を考えることなく「それは不味いことだ!」と思考停止に陥ってしまうのではないでしょうか。

確かに日本での社会において「信用」というのはとても重要なものです。
しかし、こと「経済」においては「信用」という言葉は、私達が社会生活で使うような意味とは全く違うのです。


これからも様々な消費増税に関するプロパガンダが行われると思いますが、そのような情報に接したら脊髄反射的に「それはマズイ! 何か分からんけどマズイらしい!」と恐れることなく、「それって本当か?」「どういう意味なのか?」を考えることが重要になるのではないかと思うのです。

 

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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