安倍政権の政策で景気回復は不可能な理由
先日の記者会見で安倍首相は「安定した政権の下で着実に改革を進めていく」みたいな決意表明をしていました。
そんな安倍政権にとって日本経済の回復は「一丁目一番地」です。
ところが、発足当時からずっと目標に掲げている「物価上昇率2%」という目標を、これっぽっちも達成できないでいます。
安倍政権の経済目標の中心とも言えるこの「物価上昇率2%」という目標ですが、そもそもほとんどの人にそれが何を意味するのか?が全く伝わってないように思います。
そこで先日の投稿でこの「物価上昇率2%」という目標が何なのか?という説明をしました。
色々ある理由の中で一番わかりやすいは「歴史的に見て物価上昇率2%というのが、失業率が一番低くなる傾向がある」からです。
※前回説明したようにこの傾向を表したグラフをフィリップス曲線と言います。
ただ、ここで注意しないといけないのは、あくまで「過去の実績から計測すると、そのようになると思われる可能性が高い」というだけの話であって、現実がそうなるとは限らないということです。
もちろん人間は過去の経験から未来を推測して、さまざまな方策を考えていく生き物ですから、そのような「仮定 → 実践」は大切です。
でも、仮にその「仮定」と「実践」が間違えていたり、予想と大きく外れれば臨機応変に修正していくのが人間の知恵でもあります。
そこで「歴史的に見て物価上昇率2%というのが、失業率が一番低くなる傾向がある」というのが、現在の日本でも当てはまるのかを見てみると・・・。
失業率が改善しているのは事実
失業率はバブル崩壊以降高い数値をキープし続け、リーマンショック後の2009年7月には5.5%という高い失業率を記録しました。
有効求人倍率も0.43と2人に1人しか求人がないという非常に厳しい状況。
それが生産年齢人口の減少を受けて2015年半ばには逆転。
有効求人は1.18倍を超えて順調に上昇、失業率も見る見る低下して直近では2.4%。
一応経済学的には失業率2%というのは、ほぼ完全雇用が達成されている状況と言われます。
理由としては、失業している人全員が「今すぐ働きたいのに仕事がない!」と思っているとは限らず、「まぁ、しばらく仕事はいいや」と思って失業中の人が多少いると考えられているからです。
という訳で、「失業率」に関してはかなり改善しているのは事実と言えます。
であれば今までの常識で言えば物価上昇率も上がっているはず・・・・と思いきや、物価上昇率はほぼ0%なのです。
一体これはどういうことでしょうか?
日本では既に今までの通説が崩壊している
これはもう端的に言って、「物価上昇率2%」という目標の根拠でもあったら、経済学の通説(フィリップス曲線)が、現実の日本では崩壊しているということです。
昨日の解説で書いたように日本政府が「物価上昇率2%」という目標を掲げたのは、物価上昇率2%程度が一番失業率が低い可能性が高いと思われてきたからです。
でも実際はそうなっていないのです。
物価が上がらないことはマズイのか?
もしかしたら「雇用が改善しているなら物価なんて上がらなくて良いじゃないか」と思われる人もいるかもしれません。
実際、安倍首相自身が先日の国会答弁でそのように答えていました。
確かに消費者目線で考えれば物価が安い方が助かりますよね。
ですが、残念ながらそれは間違いです。
ここで消費者とは逆の立場・・・つまり生産して売る方の立場になって考えてみましょう。
物価が下がってもその分だけ販売量が増えれば問題ありません。
「100円 x 100個 =10,000円」だったものが、物価が下がって90円になっても120個売れれば「90円 x 120円 =10,800円」ですから、むしろ売上は上がります。
しかし、今のようなデフレでは物価が安くなったらと言って、その分消費者が多く物を買うとは限りません。
ピンポイントでは「今日は半額セールだから、二個買っておこう」ということもあるかもしれません。
でも、半額だから4つ買おう、5つ買おう!とはならない訳です。
下手すれば多少価格が下がっても、もう少し待てばもっと値下がりするかも…と思って買い控えするというのが実態です。
つまり、物価が下がり、これからも下がりつつけると思えば、誰もが金を使わなくなってしまうのです。
そうすると、価格を下げることは売上の減少につながります。
売り上げが減れば利益も減って、従業員に支払う給料の減少にもなります。
つまり、個人単位で考えれば良いことでも、周り回ってみんなが貧乏になっていく…これが物価が上がらないことの怖さなのです。
異次元金融緩和したのに、なんで物価が上がらない??
ただ、ここまで読んで頂いた方の中には疑問に思う人もいるかもしれませんね。
「でも、その対策のために異次元金融緩和っていうやつをやってるんじゃないの?」って。
そうですね。たしかにその通りです。
異次元金融緩和というのは確かに物価を上げるためにやりました。
それこそ安倍政権になってから、累計で約350兆円ものお金を増やしています。
ところが物価上昇率は2%どころか0.5%辺りをウロチョロしているような状態です。
なぜでしょうか??
350兆円のお金はどこに消えたのでしょうか?
じつは350兆円のお金はどこにも消えていません。ちゃんと残ってます。“日本政府の口座”に。
政府のタンス預金が増えても国民には還元されない
当たり前ですが日本政府がどれだけお金を発行しても、それがタンス預金だったら何の意味もありません。
名探偵コナンと怪盗キッドが盗み出して、国民に配りでもしない限り永久にタンスに入りっぱなしです。
「なぜ350兆円もお金を発行したのに物価が上がらないの?」
「なんで景気が良くならないの?」
と思われるでしょうが、つまりそういうことなのです。
日本政府(と日銀)が発行した350兆円ものお金は、日本政府のタンスの中・・・日銀の口座にうず高く積まれたままになっているのです。
お金は使われてこそ初めて意味を持ちます。
日本政府が「俺、実はめっちゃ金持ってるんだぜ!! この6年間で350兆円も稼いだぜ!!」って言ったって、使ってくれなきゃ意味ないんですよ。
そんなの小学生でも分かりますよね。
でも、政府やそれを支持した経済学者たちは
日本政府が「タンスの中にめっちゃ貯めておくぜ! だから安心して皆お金使えよ!」って宣言する。
↓
国民は「そうか! 政府のタンスの中にはそんなにお金が一杯あるんだ。だったら俺たちもお金使おう!!」と思う。
↓
国民や企業がお金をガンガン使うようになって好景気になる!!
という理論(なのか???)で異次元金融緩和をやったのです。
皆さん、どう思われますか?
恐らくまともな人であれば
「そんな訳ねーだろwwwアホかwww」
と思うでしょ?
でも、これを大真面目で日本政府、日銀、(これを支持した)経済学者は信じていたのです。これで日本経済大復活!! って本気で思ってたんです。
大手メディアも日銀が異次元金融緩和を始めた時は「黒田バズーカ」とか言って、「これで日本勝つるwww」と大騒ぎしてました。
ま、一言で言えば「◯鹿」ですね。まじで。
これらの政治家よりもっと恐ろしいもの
繰り返しますが、はっきり言ってこんな方法で日本経済が再生するとか考えてた人は「馬◯」です。
ただ、恐らく財務省はこんなことじゃ景気が回復しないことは見抜いていたと思いますね。でも止めなかった。
なぜなら財務官僚は国民生活がどうなろうが、国民の大半が野垂れ死のうが「消費税を上げるという目的を達成して、自分が昇進できればOK」という人たちだからです。
「こんなバカげた理論で消費税上げさせてくれるなら、いくらでもどーぞww」と思っていたことでしょう。
そして、実はもっと恐ろしいのは、こんなバカげた理論の下、絶対に効果が出ないと分かりきっている経済政策が展開されているにも関わらず、安倍政権を支持し続けた国民です。
私がここで書いたようなことは、実はインターネットや入門書レベルの経済の本を読めば、誰にでも分かります。
でも
「何かよく分からん難しいこと言っとるわ〜。」
「お偉いさんが考えてるんだから、任せとけば大丈夫だろ〜。」
と何も勉強をせず、多くの国民が安倍政権(とその裏にいる財務省)を長らく放置してしまいました。
実はこれこそが民主主義の恐ろしさなのです。
不勉強という罪が真綿のように自分たちの首を締めていく。
そして、自分の首が締まっている理由すら理解できない。
したがって、民主主義において絶対に避けなければならないのが
「勉強しない。」
「自分で考えない。」
「周りが言っていることを無批判に信じる。」
ということなのです。
逆に言えば民主主義というのは、常に自分の周りを疑い、勉強を欠かさず、全ての事柄に対する検証を怠らないという覚悟を国民が背負わなければならない政治制度なのです。
日本人というのは無批判に「民主主義は良いものだ〜」と信じている節がありますが、民主主義というのは国民にとってメチャクチャ大変な政治制度なのです。
メチャクチャ国民に負担を強いる制度なのです。
安倍政権のハチャメチャさ加減を知れば知るほど、民主主義という制度の恐ろしさが分かる。
今回はそんな話でございました。
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆