世界を救う読書

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当事者が語るアベノミクス失敗の原因。三本の矢はなぜ放たれなかった?

このままでは日本は年収250万円の「衰退途上国」に堕ちる!!

 

何とも刺激的な文字が帯を飾るのがこちらの本、前内閣官房参与である藤井聡氏の著書「令和日本再生計画」。

今日はこちらの本の感想です。

令和日本・再生計画: 前内閣官房参与の救国の提言 (小学館新書)

令和日本・再生計画: 前内閣官房参与の救国の提言 (小学館新書)

 

 

 「年収250万円」。

何とも刺激的な煽り文句ですが、これが案外笑えそうにないのが今の日本の恐ろしいところです。

多分20年前だったら「そんな馬鹿なww」と一笑に付されたことでしょう。

でも、いまの時代においては「うーん・・・あり得るかも・・・」と多くの方が思うのではないでしょうか。

 

藤井聡 前内閣官房参与とは?

さて、そんな本を書いた藤井聡氏とはどんな人物なのか?

色々と肩書の多い方ですので詳しい説明はWikipediaに譲ります(笑)。

ただ直近の肩書であり、一番みなさんの気を引きそうなのは「前・内閣官房参与」でしょう。

 

正直私もあまり内閣官房参与という仕事がどのようなものかは知りませんでしたが、藤井氏の言葉を借りれば「総理のアドバイザー」という立場のようです。

「参与」というのは各省庁にいらっしゃるようですが、“内閣官房”参与は内閣総理大臣みずからが任命するようです。

参与に課せられた義務は「守秘義務」のみ。

官邸の内部で知り得たことを外部にもらしてはいけない。それだけ。

それ以外は特に決まったことをやる訳ではなく、自らの頭で政策に関して知恵を絞り、総理を捕まえて政策アドバイスをする、というのが仕事のようです。

 

藤井氏は6年間安倍総理の下で内閣官房参与を務められて、昨年その職を辞されました。

そのようにいわば「政権内部にいた」からこそ分かったこと、総理にどういうアドバイスをしてきたか(そしてどのようなアドバイスを華麗にスルーされたのか)ということを書いていらっしゃいます。

 

なかなかそういった「現政権の内側」に居た人の経験を知る機会というのはありませんから、それだけでもこの本は十分に読む価値があるかと思います。

 

内容を超ざっくり追うと・・・

この本の内容を簡単に言ってしまうと

 

「藤井氏は“3本の矢”を駆使したアベノミクスの経済政策を安倍総理に提言した。

しかし、その経済政策はある障害によってことごとく骨抜きにされ、藤井氏が提言した“オリジナル・アベノミクス”とは似ても似つかぬものになってしまった。

その原因はプライマリーバランス目標であり、それを主導したのは財務省である。

藤井氏は“オリジナル・アベノミクス”を実現するために、内閣官房参与としてやれることは全てやった。

あとは、国民に広くその意義を理解してもらい、世論を動かす提言を世間に発信していくことが必要。

その提言を“令和八策”としてまとめ、この本で公開した。」

 

というものです。

 

この本を読むと、藤井氏がアベノミクスの立ち上げに意欲的に取り組んだにも関わらず、それが骨抜きにされ予定していたような成果が全く得られなかったことをとても悔しく思っているのが伝わって来ます。

だからこそ藤井氏は実際に行われたアベノミクスと、自分が提言した「オリジナル・アベノミクス」を明確に区別して解説されています。

 

アベノミクスを丁寧に、しかしボロカスに批判

内閣官房参与という立場にいた都合もあるのでしょうが、藤井氏は色々な方面の方々に非常に気を遣った言葉遣いをしながらも、現在のアベノミクスをズタボロに批判しています。

それは目次を見るだけでも明らかで

 

・最も大切な実質賃金は激しく下落した

・物価の上昇は見られない

・アベノミクスを台無しにした2014年の消費増税

・「アメリカ等の好景気」がなければ、安倍内閣期の日本経済は「ゼロ成長」だった

・世界の潮流を見誤り、周回遅れのグローバリズムを推進

 

などなど・・・・。

実際の文章の中では非常に遠回しに、上品な言葉を使いながら

 

「アベノミクスは全然駄目だった。大失敗だった。そもそも3本の矢とか言っておきながら、実際には矢は1本しか放ってねーし。こんなんで上手くいく訳あるか!! 俺が言ったオリジナル・アベノミクスと全然ちゃうやんけ!! このどあほうが!!!」

 

と仰っています(笑)。

 

藤井氏のアベノミクスの現実がどれだけ無残だったかが、非常に分かりやすく書いてある一冊です。

経済学的なことも多く書いてありますが、とても平易な文章で読みやすく書かれていますので、とてもおすすめです。

 

今この時この本を読むべき理由

ここまで紹介したように、この本の多くのページがアベノミクスの実態についての解説に割かれています。

ただ、それだけではこの本の真価は半分しか語れません。

私がこの本で注目すべきだと考えていること、そして「今こそこの本を読むべきだ」と思う理由。それは次の一文の中にあります。

 

筆者はしばしば、いわゆる政府要人たちの口から、

「財務省と闘うには、選挙とかなんだとか、そういう相当荒っぽいことをやらないと、勝てないんだよね。一回怒らしちゃうと、何されるか、ホント分かんないんだよ。」

というような台詞を何度も聞いたことがある。

 

本の中に詳しく書かれていますが、財務省というのは他の省に比べて特別な力を持っています。

徴税権(税を徴収する権利)、査察権(税金の不正を検査する権利)があり、その直下に国税庁を従えています。

税を徴収するとか税金の不正を検査すると言えば聴こえは良いのですが、火のないところに煙を立たせて、あれやこれやと難癖をつけてくるのです。

どこの企業でもそうだと思いますが、国税や税務署が来るとなれば仕事そっちのけで彼らの対応をしなければなりません。

彼らのご機嫌を損ねれば、ちょっと書類に不備があっただけでものすごく複雑な事務作業を課せられた上、追徴課税まで行われます。

 

ましてや政治家ともなればどうしてもグレーなお金の動きは出てきてしまいます。完全に清廉潔白という訳にはいきません。

仮に自分自身が清廉潔白だとしても、政治という利権に群がる人たち全てをクリーンに保つことは不可能です。

いわば国税庁に本気で叩かれればホコリの出ない政治家などいないのです。

 

そのような強力な力を持った財務省ですから、財政健全化という目的のためには手段を選びません。

消費増税のような税金取り立ての強化を行い、国民の命を守るために必要な防災のための財政支出も削減を行っています。

 

政府にとって大切なのは、国の財政よりも国民生活を豊かにすることのはずです。

しかし、それを金庫番の財務省が阻んでいる。

そして、政治家は財務省が怖くて手が出せず、財務省の言う通りに国民を貧困化させる増税を行おうとする。

このような状況を変えるためには、やはり選挙しかありません。

財務省のいいなりの安倍政権を選挙によって鉄槌を加え、「参議院選挙でこれだったら、衆議院選挙の時はもっとマズイことになる。財務省の言うことに従っている場合じゃない」という危機感をもたせるのです。

 

正直私も面倒臭いです。

もっとスパッと簡単に変えられないものかな?と思います。

でも、残念ながらこのように面倒くさいのが民主主義なのです。

だったら自分がやれることを何か一つでもやる。精一杯やる。そんな思いで今回もこのブログを書き連ねています。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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