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災害時の情報収集に必須のAMラジオをなぜ廃止するのか?

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現代社会では電気がないと何もできない。

それを強く印象づけたのが、先週東日本を襲った台風15号。

家や建物が倒壊する被害もひどかったようですが、特に停電の被害は甚大なようで、長引く地域では27日までかかるところもあるとのことです・・・。実際にはそれすらも「予定」でしかありませんが…。


 

災害時において重要なのは・・・

このような災害時に重要なものとは何でしょうか?

筆頭はやはり水や食料です。

ですが、実はそれと同じくらい大切なのが「情報」です。

どのような被害であっても起こってしまった以上はどうしようもありません。重要なのは「被害の状況はどの程度なのか?」「いつ復旧できるのか?」という見通しです。

被害が自分の家の周りだけのようだったら「それほど心配する必要はないな」と思えますし、逆に関東全域に及ぶような被害であればそれなりの覚悟もできます。

また、復旧に関しても1週間我慢すれば良いのか、1ヶ月我慢しなくてはいけないのか。

その見通しが立てば人間は何とかなるものです。逆に言えばその見通しが立たないということが一番つらい状況なのです。

 

ではその情報はどのようにして入手するのか?

今の社会においてその筆頭はスマートフォンです。

最近ではスマホがあまりに便利過ぎて、日々の生活に必要なものを全てスマホに取り込んでいるため「財布を失くすより、スマホを失くした方が怖い」とすら言われる時代です。

しかし、そのようなスマホ依存状況が今回のような大停電では裏目に出てしまいました。

停電のためにスマホの充電ができない。それどころか、そもそもスマホの電波を飛ばす基地局が停電のために機能しない。

そのような状況で一体情報をどこで入手すれば良いのでしょうか?

 

災害時に重要な情報手段としてのラジオ  

実はそのような災害時に重要な情報源になるのがラジオです。

今回もスマホで情報を入手できない多くの方々がラジオで多くの情報を入手していたようです。

 

動画のようないわゆる「リッチコンテンツ」に慣れ親しんだ現代人にとっては、「ラジオとか今更誰が聞いてんのww」というのが実情だと思います。実際ラジオ聴取率は年々下落しており、ラジオ放送局も厳しい運営を強いられています。

でも、これは個人的な意見ですが、ラジオって案外面白いですよ。

私も学生時代は全くラジオなんて聞いていませんでしたが、仕事をはじめてからは移動中に聞くことがかなり増えて、今では毎朝通勤時間にラジオ番組を聞いているくらいです。 

そんなラジオはご存知の通りAMとFMの2種類があります。

最近ワイドFMというものが出てきて、FMでもAMラジオが聞けるようになってきましたが、それでもまだAM放送は継続されています。

ところが、実はラジオのAM放送を廃止しFM放送に転換する方針が総務省で決定されたことをご存知でしょうか?

 

 

総務省がAMラジオ廃止を決定?

 

「総務省の有識者会議は30日、AMラジオ局のAM放送廃止とFM放送への転換を容認することで一致した。日本民間放送連盟(民放連)が3月に総務省に要望していた。現在、大半の民間AMラジオ局が補完放送(ワイドFM)としてFM放送を併用しているが、この設備投資の重複の負担を減らし、経営改善につなげる。令和5年にもAMを事実上停波するラジオ局が出てくる見通し。」

 

まだ法整備がなされた訳ではありませんので最終決定ではありませんが、既定路線に乗せられたことは間違いないでしょう。


そもそもAMとFMの違いとは?

確かにワイドFMの登場により、AMは“聞きづらさ”が増した感が否めません。「AMがなくなって何が悪いんだ?」と思うかたもいらっしゃるでしょう。

それが、事はそれほど単純ではありません。

 

AMとFMの違いについて、ここで事細かく説明するのは省きますが、これらは音の波である周波数が違います。AMは波がゆっくり流れる長波、FMは波がスピード感を持って流れる短波。

よくドラマで誰かが入院している時に、心臓の脈拍をピコン、ピコンって表示するメーターがありますよね。あれで見えるような波形がせわしなく動いているのがFMで、ゆっくりと波形が流れているのがAMと考えればイメージが湧くのではないでしょうか。

 

この波形によってFMは音質が良い反面、届けられる距離が短いという弱点もあります。

一方AMは音質はFMに劣りますが、遠くまで届けられるという長所もあるのです。それが「AMは災害に強い」ということです。 

 

災害時にはAMがチカラを力を発揮する

今回のように災害が起こった時に大事なのは、音質が悪くても遠くまで届けられるAMの方なのです。特にFMはAMに比べ電波が遠くまで届かず、多数の中継局が必要になりますので、災害時にFMだけで対応できるかと言えば、甚だ疑問です。

どれだけ立派なラジオを持っていても、肝心の電波が届かないのでは意味がないですからね(笑)。

 

普段平和に暮らしていると、なかなかAMの必要性を実感することはありません。しかし、こういう災害時になると、普段では必要性を感じない物の重要性がより高まるのです。

東日本大震災の時も、スマホの接続障害により多くの人が連絡取れない中、公衆電話が大活躍したということがありましたが、それと全く同じです。

では、そのような大事なAMを何故廃止しようというのか? 

 

AM廃止案の理由

AM廃止案の理由はAM局の多くが広告収入の低迷しており運営の健全化を図るため、ということのようです。AMラジオは出力に大規模なパワーが必要になるため、電波送信設備は広い敷地に高さ100メートル規模のアンテナが必要となります。したがって、FM放送の設備に比べ数倍の維持費用がかかります。したがってお金のかかるAMよりもFMに集中したいということなのでしょう。

大規模でコストがかかるから維持ができない…確かに民間企業の理屈としては理解できます。

ですが、本当にそれで良いのでしょうか?

 

企業は公共利益に資する義務があるのではないか?

今回の台風15号のような台風に限らず、地震、火山など日本は全世界でも有数の「災害大国」であります。

その日本という災害大国において、万が一の時のインフラであるAMラジオを「広告収入のために廃止する」ということがどれ程愚かな選択であるか。今回のような災害が起これば誰でも分かるはずです。

 

確かに民間が行う以上、一定の利益が得られなければ運営ができないというのはその通りだと思います。

しかし、放送事業というのは普通の民間事業とは違います。公共の電波という国民の財産を利用して営んでいる事業です。だからこそ、その参入には規制が敷かれ、国に認められた事業者しか参入できないのです。

企業というものは様々な形で社会に依存して成り立つものです。例えば、そこに社会が存在しなければその社会の構成員である労働者を雇うこともできませんし、そこに社会がなければ事業を営むこと自体できません。

ですから、企業である以上は公共の利益に資する義務があると思います。ましてや公共の電波を利用する放送事業であればなおさらです。

その義務を放棄して自分たちの利益を確保するためにAMを廃止するなどという行為は、公共放送から得られる利益だけは貰うけれど、義務は果たしませんという実に身勝手な行いとしか思えません。

しかも、それを総務省が認めるとは呆れて物も言えません。

 

目的は自分たちの利益の追求のみ。

公共の利益という責務からは全力で目をそらす。

そんな我欲しかない事業者ならば、公共の電波を利用する資格はない。そんな腰抜けの事業者であれば、むしろ放送権を剥奪し国が買い取って全部NHKとしてAMラジオ放送を続けるべきではないでしょうか。

想定外の災害においても、国民の生活を守るための最低限のインフラは必ず確保しておく。それこそが国民の生命を預かる者の義務だと思うのです。

 

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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