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GDPがマイナス!!の何が問題なのか改めて考えてみる

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すでにニュースで大きく報じられていますが、2019年10月から12月のGDP (国内総生産)がマイナスに落ち込みました。実質でマイナス1.6%、名目でマイナス1.2%。

 

ただ「実質GDPがマイナス1.6%!!」とか言われても、恐らく普段経済にそれほど関心がない方や経済の知識に疎い方には「そんなに大変なことなの?」という感じだと思います。

でも、そういう感じの人がほとんどだと思いますので大丈夫です! (笑)

ですが、これってかなり凄いことで、私たちの生活にも非常に大きな影響が出てきますので、GDPがマイナスということがどういうことなのか絶対知っておいた方が良いです。

そこで今日は「そもそもGDPって何なのさ?」という基本的なところから、今回のGDPマイナスの何が問題なのかを解説してみたいと思います。

[目次]

 

 

そもそもGDPとは何なのか?

まずは根本的な話。GDPとは何か、です。

GDPというのはGross Domestic Productの略で、日本語では「国内総生産」と訳されます。教科書的な定義で言えば

 

「国内で行われた生産活動で生み出された付加価値の合計」

 

です。そのまんまですね。

多分わかりにくいのは「付加価値」という言葉です。付加価値というのは生産活動によって”付加された”価値のこと。たとえばあなたが100円で土を買ってきて焼き物を作ったとしましょう。その焼き物が1,000円で売れたとしたら、原材料100円との差額900円があなたが生み出した付加価値だということです (現実にはもっと複雑ですが基本の考えはこれです)。

このように生産活動を行えば必ず付加価値が発生します。その付加価値を合計したものがGDPということになります。

 

GDP三面等価の原則が暴くGDP減少の意味 

そして、このGDPで面白いのは“三面等価の原則”というものです。

三面というのはGDPを三つの面から見ることです。すなわち

1: 生産

2: 支出

3: 所得

です。

三面等価の原則というのは、この3つが必ず同じ金額になるということです。

これは考えてみれば当たり前の話で

 

「Aさんが生産した付加価値の額(上記1) → Bさんが支出をして買う付加価値の額 (上記2) → それはAさんの所得になった付加価値の額 (上記3)」

 

なので、当然これらは同じ金額になるという訳です。

これの何が面白いのか?って思います?

実はこの三面等価の原則を理解すると次のことが分かるのです。

それは

 

「実質GDPが1.6%マイナスになった」ということは、三面等価の原則により「私たちの所得が1.6%マイナスになりました」というと同じこと

 

だということです。

もちろんあくまでこれはすごくシンプルに考えた場合です。現実には所得から税金を支払ったり、あるいは税金から補助がある場合もありますので、個人間や企業間といったミクロの単位で見ると全く同じではありません。ただ、国全体で考えるとこの原則は必ず成り立ちます。

 

したがって、GDPが減少しているということは国民の生活が貧しくなっているということを意味するのです。

 

なぜGDPが減少したのか?

さて、ではなぜGDPは減少したのでしょうか?

もちろんいくつもの要因はありますが、今回のGDP発表が10月〜12月の3ヶ月間のものだと考えれば誰でも分かります。そう、消費増税です。

安倍政権は「台風のせい」「暖冬のせい」だと言っていますが、そんな訳はありません。今回の内閣府の発表を見るとそのショックの大きさが分かります。

 

・実質GDP成長率 : 年率換算ー6.3%(対前期比ー1.6%)
・民間最終消費支出 : ー11%(対前期比ー2.9%)
・民間住宅 : ー10.4%(対前期比ー2.7%)
・民間企業設備 : ー14.1%(対前期比ー3.7%)
・財・サービスの輸出 : ー0.4%(対前期比ー0.1%)
・財・サービスの輸入 : ー10.1%(対前期比ー2.6%)

 

ご覧の通り民間の消費、住宅消費、企業の設備投資、そして輸出と輸入すべてがマイナスです。

台風とか暖冬とか、そんな季節要因でここまで経済がガタガタになるほど脆弱な国家などある訳がありません。もし本当にそうなら、似たような経済指標の悪化がすでに何度も発生しているはずです。しかし、実際には今回に近い減少幅と言えば、前回の消費増税が行われた2014年の4〜6月期 (年率マイナス7.4%)以外ありません。これで「台風のせいで」とか言っているようならはっきり言って国政治を担う能力はありません。10%消費増税が最大の要因であることは疑いようがないのです。

 

実質GDPより名目GDP減少がもっとヤバい。

しかも、さらに不味いことがあります。

それは今回騒がれているのは実質GDPですが、実は名目GDPもマイナスになっているのです。

そもそも実質と名目の違いは何かというと、名目は単純にGDPを足し算したのに対して、実質はそこから物価変動の影響を差し引いたものであるという点です (本当は季節要因の調整とか色々あるのですが分かりやすくするために省略します)。今回は消費税が2%上がっていますので、その分強制的に物価が上昇しています。したがって、国内の消費量が変わっていなければ、消費税を増税した分だけ名目GDPは上昇してないとおかしいのです。

 

たとえば1000円の商品があり、これが一ヶ月に100個売れるとしましょう。

A) 消費税が8%の場合

商品の単価は税込みで1080円になります。これが100個ですので合計金額は108,000円になります。

B) 消費税が10%の場合

商品の単価は税込みで1100円になります。これが100個ですので合計金額は110,000円になります。

消費税が8%の場合と10%の場合で販売される量が変わらなければ、増税分だけ合計金額が増えるはずなのです。それが今回は(名目GDP)下がってしまっている。ということは、増税で価格が上がったにも関わらず、それを上回る勢いで販売された量が減少したということです。消費税によって消費が減少したことが統計上も明らかになったということです。

このことは元内閣官房参与藤井聡氏も指摘されているのですが、藤井氏によると前回の2014年の増税時にはこのような現象は見られなかったそうです (実質GDPは今回同様下がっていたけど、名目は何とか下がらずに済んだ)。つまり、今回の消費税増税は前回の増税を上回るインパクトを市場に与えたことが明らかになったということです。

 

この絶望の中でできること

この数字を見るだけですでに日本経済は相当危険な状況に入っていることは間違いありませんが、さらに最悪なことに新型コロナウィルスによる影響で今年の1〜3月期のGDPも確実にマイナスに突っ込むでしょう。

その次の4〜6月期は若干持ち直すかもしれませんが

 

-3月末にはプレミアム商品券終了。

-6月末にはキャッシュレス決済還元が終了。

-8月上旬には東京オリンピック終了。

 

と、悪いイベントが目白押しです。とても経済が好転するチャンスがあるとは思えません。むしろ年末にかけて増々衰退していくのが必定という感じです。

 

という訳で、今回はかなり暗〜〜〜い気持ちになる記事を投稿してしまいました。すみません m(_ _)m

ですが、どうもどのニュースや新聞を見ても新型コロナウィルスのことばかりで (これはこれで大事件なのですが・・・)、今回のGDP減少のことはすっかり忘れ去られてしまったように思います。厳しい、非常に厳しい現実ですが、この現実を見なくては正しい解決策を導きだすこともできません。まずは現状を知ること。これこそが日本の経済を好転させるための第一歩だと思うのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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