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あなたの食卓が危険で一杯になる日。日本の食料安全神話崩壊 その2

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早速ですが今回は前回の記事に続き、種子法が廃案になったことによって私たちの食生活にどのような影響が出るかについてです。

 

 

 

 [目次]

 

種子法廃止後、誰が種を作るのか?

さて、前回の投稿でもご説明したように日本の食料の基盤となる「食物の種子」を守るために、採取農家 (種子の生産を主にする農家) の方々が「採算度外視」とも言えるほどの努力を行っています。ただ農家の方々も生活しなければなりませんので、その支援を国や地方自治体が行っています。その予算の根拠となるのが種子法だった訳です。

その種子法が廃止されたことにより、採取農家の方々への支援が途絶えることになります。

そうするとどういう事になるでしょうか?

 

地方自治体からの支援がなくなると当然農家は今までのような価格や形態での販売ができなくなります。そうなると採取農家の廃業が相次ぐことになり、逆に資金力のある大手民間企業が参入してくることになるでしょう。

もちろん民間企業が参入してくること自体は別に問題ではありません。

ただ、民間企業が参入して来ても種子法の下で採取農家が行っていたような厳格な管理の種子生産を行うことはできません。同じ金額では。

なぜなら民間企業であれば(当たり前ですが)利益を取らなければいけないからです。そうしなければ企業は倒産します。しかし、現在採取農家が行っているような厳格な管理での生産は非常にコストが高くなりますので、同じ金額、同じ品質での販売は不可能です。ではどうするか?

 

A. 十分な利益が取れるくらいの高額設定にする

B. 現在の価格でも元が取れるように品質を落とす

 

このどちらかになります。

 

 

民間企業が担う種子の問題点1

まずAの「十分な利益が取れるくらいの高額設定にする」の場合ですが、これはもう小学生でもわかるように、当然増加した金額は私たちの食費に跳ね返ってきます。仮に現在の状況と同じレベルの品質が維持されたとしても、私たちが支払う食費は下手すれば数倍に跳ね上がるでしょう。

後でも詳しく書きますが、民間企業が開発する種子の代表的な種類にF1品種というものがあります。これは病害に強いとか、型崩れがしないとかいろいろなメリットがあるのですが、かなりコスト高の種類なのです。このF1品種が蔓延したことで、たとえばアメリカでは種子の価格がこの20年で数倍に跳ね上がっているという研究があるほどです。

 

F1品種とは?

恐らくほとんどの人は「F1品種」という名前をご存知ないでしょう。

 

F1品種・・・聞き慣れない言葉ですね。F1って何??って感じですよね。

これは「Final 1 Hybrid」の略で、日本語だと「一代品種」です。

普通遺伝子情報というのは親から子へと代々引き継がれますが、F1品種は遺伝子操作によって特定の一代には優れた性質が備わるものの、次の世代以降には引き継がれません。ですので一代品種 (F1品種) という訳です。成長が早く、形が整うということで大量生産/大量消費にはもってこいということになります。「そんな良い物があるなら最高じゃないか」と思われるかもしれませんが、F1品種には大きな問題があります。

 

その問題は

 

・この特性が一代限りである

・食物の花粉による伝播を防ぐのは非常に難しい

 

ということです。

 

F1品種訴訟 

まず「特性が一代限りである」ことの問題点。

特性が一代限りであるということは、この種子を購入するとこれを継続して取り扱うならば、毎年種子を購入し続けなければならないということです。種子メーカーが善意のある会社であれば問題ないのでしょうが、利益最優先の会社の場合、農家はそのメーカーに一方的に有利な契約を更新し続けなければならない可能性があります。

たとえば、世界中で農業事業を手掛ける超大手企業モンサント社では、農家に対して種子は毎年購入するよう契約をさせ、研究や品種改良の目的でも複製することは一切禁止。もし違反した場合は巨額の賠償金を請求することになっています。

 

「企業の商品なんだから複製なんかしちゃ駄目だろ」と思われるかもしれません。

確かにそれはそうなのですが、問題は「花粉の飛散がコントロールできない」ということです。

この時期花粉症で苦しんでいる人が多いと思いますが、マスクをしていてもそれほど細かい粒子です。これは食物でも同じことで、花粉の飛散を防止することは非常に難しいです。たとえばある農家Aさんがモンサントの品種を購入したとしましょう。Aさんには当然モンサントの品種を複製しない義務があります。しかし、Aさんの畑から少し離れたところにあるBさんの畑に花粉が飛んでいった場合にはどうなるでしょうか?

BさんはモンサントからF1品種を導入していませんし、そのつもりもありません。しかし、F1品種を導入したAさんの田畑からF1品種の花粉が飛んできて、Bさんの田畑でF1品種が発芽する可能性があるのです。この場合でもモンサントはBさんに損害賠償を請求することができるのです。Bさんには何の落ち度もないにも関わらず。

「そんな馬鹿な」と思われるかもしれません。しかし、実際にカナダではこのような“難癖”に近い方法で数千に上る農家に対し、モンサントは損害賠償を求める勧告を行い、従わなかった農家550件以上に対し訴訟を行いました。 

 

民間企業が担う種子の問題点2

そしてもうひとつの民間企業が採用する方法はB案の「現在の価格でも元が取れるように品質を落とす」方法です。価格上昇を抑えるのであれば、品質を落とすしかない。これも当たり前ですね。ですが問題は、食料の品質を落とすということは多くの場合安全性を犠牲にするということです。代表的な例は遺伝子組換え作物。

遺伝子組換え作物の危険性はいろいろな所で取り上げられていますが、有名なのはやはりモンサント社が開発した遺伝子組換え大豆「ラウンドアップ・レディ」でしょう。

ここ数年ホームセンターなどで販売されている「ラウンドアップ」という除草剤を目にしたことがある人も多いかと思いますが、実はこれアメリカの大手農薬メーカー「モンサント」社が開発した除草剤。アメリカの開発した除草剤ということで実際かなり強力です。値段も比較的お手頃なため日本でも使用する人が増えてきているようです。

 

ところがこのラウンドアップ実は以前から発ガン性物質「グリホサート」が含まれているということで欧州などではむしろ規制対象になっており、使用できない国が世界で増えています。

先程のラウンドアップ・レディという遺伝子組換え大豆は、このラウンドアップという除草剤でも枯れないという強力な除草剤耐性を人工的に持たせた大豆なのです。つまり、ラウンドアップレディという大豆を畑に撒いてラウンドアップ除草剤を撒くと、あら不思議、雑草はすべて枯れさせられますが、ラウンドアップ・レディという大豆だけは何も影響を受けずに生育するのです。

確かにラウンドアップを撒きさえすれば除草の手間が省ける訳ですから、生産性は向上します。ですが、そんな「発がん性物質を物ともしない遺伝子組換え大豆」を食べたいですか?・・・ちょっと私は遠慮したいですね・・・。

 

「実質的同等性」という恐ろしさ

F1品種にしろ、遺伝子組換え作物にしろ、まだここ20年くらいで開発された技術ですので、人間が長期に食物として摂取して大丈夫かどうかは実証されていません。そんな怪しい物がなぜ市場で出回るかというと「実質的同等性が認められているから」です。

実質的同等性とは何でしょうか?

これは「遺伝子操作を施された植物から作られた食物の構成要素は、一般的な食物の構成要素と同じであるか、あるいは"実質的に同じである"」という考え方です。分かりやすく言ってしまえば「自然の食物とほとんど一緒。ちょっと違いはあるけどほとんど一緒。だから実質的に同じ。」ということです。

「いやいやいや、“ほとんど同じ”と“全く同じ”では意味がぜんぜん違うだろ!!」と即座に突っ込みたいところですが、実際にこのような言葉遊びの類で安全性が確認されていない食物が生産されているのが現状です。

 

すでに遺伝子組換え作物汚染は始まっている

そして、驚くべきことに日本は既に遺伝子組換え作物を年間数千万トン輸入する、世界でも有数の遺伝子組換え作物輸入大国になっています。つまり、我々の食卓はすでに遺伝子組換え作物、あるいはそれを原材料にした食材で侵食されている、というのが実態なのです。

現在のところ日本では遺伝子組換え作物の生産はそれほど進んでいません。その陰には、種子法によって確保されていた安全で安価な種子が日本の食糧生産を支えていたからです。しかし、それが廃案になったことによって徐々に採取農家廃業し、民間企業による非安全もしくは高価な種子が席巻することになるでしょう。そうなった時に私たちの食卓はどうなるのか。

「高価だが安全な自然作物」か「安価だが危険な遺伝子組換え作物」。この二択の中から選択を迫られる恐ろしい未来がやってくる可能性が非常に高いのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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