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コロナウィルス経済対策は「事業規模30兆円」じゃ全然足りない

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新型コロナウィルスの国内経済への悪影響のために政府が超大型経済対策を打ち出そうとしています。 ただ、その経済対策の中身についてはどうも“前例に囚われない”とか“超大型”とかいう言葉だけで、中身が全く伴ってないスカスカの経済対策”になりそうな様子です。

これをこのまま実行されて「経済対策してやったぜ!」と威張られると大問題ですので、現在上がっているプランがいかにダメダメなのか。そしてなぜ駄目なのか?

細かいことを説明し始めるとキリがないので、今回は

 

・事業規模30兆円超えの経済対策

・一律現金給付見送り

・商品券配布

 

この3点に絞って説明したいと思います。

 

[目次]

  

「事業規模30兆円超」の“事業規模”とは

恐らく多くの人が「30兆円を超える経済対策」と言われると、その金額だけで大規模な対策が講じられるように感じるでしょう。しかし、残念ながら騙されていますよ! (笑)

くせものは「事業規模」という言葉です。事業規模30兆円超えと言われるとまるで全て政府が負担して30兆円以上の支出を行うように思われますが、実は事業規模というのには

 

・国の財政支出

地方自治体の財政支出

・民間金融機関から民間企業への融資

・政府事業に関係する民間企業の資金

 

などが含まれます。

分かりやすく単純化して言うと、民間金融機関に政府/日銀が働きかけて1%で民間企業に1億円融資させたとしましょう。その場合1億円に対して1%の利子分 (100万円) を政府が負担し、銀行が1億円貸し出すことになります。この場合でも政府の経済対策としては「事業規模1億円」になるのです!

いやいやいや、政府は100万円しか払わないじゃないか! と思われると思います。というか、そもそも1億円も民間金融機関が企業に貸し出したのであって、政府が貸し出している訳ではありません。

それにも関わらず“政府が関わった事業の規模”は1億円ということになるのです!!

 

事業規模マジックは政府の常套手段

恐らくほとんどの人が信じられないと思いますが、これは今回に限った話ではなく、よくある「普通の話」なのです。例えば昨年消費増税が行われた時にも「政府は事業規模26兆円の経済対策を発表」などと報道されましたが、これも中身を見てみると実際に政府が行う支出は

 

1) 災害からの復旧・復興と安全・安心の確保 5.8兆円
2) 経済の下振れリスクを乗り越えようとする 者への重点支援  3.1兆円
3) 未来への投資と東京オリンピック・パラリ ンピック後も見据えた経済活力の維持・向上 4.3兆円

 

と13.2兆円くらい。あとは全て民間の支出です。それにも関わらず「事業規模26兆円」!!と報道されるのです。

 

リーマンショック時を超える経済対策?

さて、ここまで事業規模という言葉がいかに一般常識からかけ離れた概念であるかを説明してきました。これを元に下記の時事通信の報道を見ると本当に気持ちが萎えてきます。  

経済対策は事業規模30兆円超とされ昨年末に策定した経済対策(26兆円)と合わせると、リーマン・ショック時の経済対策(56・8兆円)を超える見込み。

と書いてありますが、リーマン・ショックの時の経済対策56.8兆円というのも実際に政府が支出したのは13.9兆円。あとは民間支出だった訳です。そもそもコロナショックが起こる前に消費増税対策として行われた経済対策の事業規模と、今回のコロナショック対策の事業規模を足し算して何になるんだ??という感じです。全く無意味。

結局「リーマンショック時を超える経済対策」という言葉を使いたいから、都合が良い数字を足し算しただけでしょう。

繰り返しますが「事業規模30兆円」という言葉に騙されてはいけません。

政府が新たに国債で“最低でも30兆円以上”を支出して初めてまともな経済対策になる。

このことをくれぐれもお忘れないように。 

 

一律現金給付を見送るという愚の骨頂

これは多分森永卓郎氏が最初に提案した内容だと思うのですが、国民への一律現金給付案です。

現時点でまだ確定はしていませんが、どうもこれも見送られる可能性が高いようです。上記の時事通信の報道によると

新型コロナ拡大で休業などを強いられるケースが増えており、政府関係者は「本当に困っている人に厚めに現金が行き渡るようにすべきだ」として、一律給付は見送った上で、早ければ5月にも始めたい考えだ。

 

 とのこと。

まぁ、正直「アホかwww」の一言で片付けたいのですが・・・(笑)。

そもそもこういう事は一度「検討している」ということが漏れてしまえば、取り下げた途端国民の士気が下がります。本気で検討するのであれば外に漏らしてはいけませんし、外に漏れた以上やるしかないのです。その辺りの政治的機微が分からない時点で、安倍政権に相当政治的センスがないのがわかります。

 

それは置いておいたとしても、「本当に困っている人に厚めに現金が行き渡るようにすべきだ」という言葉に現状と先行きについての認識が根本的に間違っていることが現れています。今回のコロナショックのような恐慌というのは、遅れれば遅れるほど本当に困っている人はねずみ算式に増えていくのです。

“今”困っている人を助けている間に、次の瞬間には別の人がもっと困っているのです。その都度困っている人を救済するような対処療法的な対策では間に合いません。戦力の逐次投入は最も愚かな行為であり、最初に全精力を注ぎ込んで叩き潰さなければならないのは兵法の基本です。 

 

特化型商品券の愚かさ

私個人の意見としては商品券の配布自体は意味がある対策だと思います。

ただ、それは当然他の経済対策へのプラスαとしてであり、むしろ「最低でも消費税をゼロにしろ」が基本です。今回はそこまで踏み込みませんが。

 

したがって政府が商品券の配布を検討していること自体は別に否定するつもりはありません。問題はこれです。

五輪延期を補うための景気刺激策として、政府・与党は観光やイベント向けに特化した期限付きの商品券発行などを検討する。新型コロナの影響が収束した後に、国内観光を盛り上げてインバウンドの減少をカバーしたい考えだ。

国内観光を盛り上げることは確かに大事なことです。それに観光地に限らずとも、地域密着型の商店街なども大打撃でしょう。政府の自粛要請により人の移動が制限されたことで、どこの業界でも壊滅的な損害を受けている事業者は大勢います。

商品券発行による救済を企図するのであれば、当然どのような消費活動にでも使える商品券にするべきです。分野や給付対象を絞るべきではありません。結局そのような分野特定型の商品券は国会議員が自分に有利な分野への消費を促したいための利権奪取の活動でしかないと思います。

という文章を書いていたらこんなニュースが・・・。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が4月にまとめる緊急経済対策をめぐり、国産牛肉を購入できる「お肉券」や、魚介類を対象とした商品券を配る案が自民党内で相次いで浮上している。高級食材を中心に減った需要を下支えする狙いだが、幅広い分野で需要が減っている中で対象を絞った商品券が実現するかは不透明だ。 

 やっぱりそういう利権絡みの話になりますよね。もう本当にこの国いやだ・・・・(泣

 

 今の経済対策案の何が一番まずいか? 

さて、ここまでボロボロに批判してきた政府の経済対策ですが、変な話「中身もボロボロだが言葉も中身と同じくボロボロ」ならそれはそれで良いのです (当然経済対策としては駄目なんですが)。問題は「言葉は勇ましく、いかにも大規模な対策を打っている感を出しているけど、実は中身がボロボロ」という場合。そしてそれが広く浸透してしまう場合で

この場合にまずいのは、たとえ全然効果が得られず日本経済がガタガタになっても「安倍政権はやれることは全てやった。今回のことは前例のないことなのだから、誰がやっても完全な対策はできなかった。安倍政権だからここまでやれたんだ。」という空気が出来上がってしまうこと。

これは非常に厄介です。

 

そうではなくて「安倍政権のやとうとしていることは最初から規模もしょぼく、内容も的外れで、まともな経済対策とは思えないとんでもない代物だった」ということが共通理解にならなければなりません。そして、まともな経済対策がスピーディに行われるように世論を盛り上げなくてはならないのです。そうしなければ、この1年の間に大量の失業者や経済破綻した人たちが生まれ、バブル崩壊後を超える大量の自殺者を引き起こし、下手したらアメリカのように国民が自分たちの身を守るために武装しなければならないような社会的混乱を招きかねません。これは大げさでも何でもなく、本当に私たちはそのような歴史の転換点にいるのだということを一人でも多くの人が考えてくれることを願っています。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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