世界を救う読書

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“物事の本質”なんて見抜かなくていい。必要なのは断言する勇気。

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突然ですが私には以前から悩みがあります。それは仕事上のやり取りで何かの物事を説明する時に「丁寧でわかりやすいけど、説明が長い」と言われることです・・・。

たまに、ですよ。たまに(笑)。

誤解がないようにちゃんと伝えたいという心意気の表れだという自負もあるのですが、やはり

・簡潔に、的確に説明するのがうまい人

・物事のポイントをパッとつかめて理解が速い人

を目にすると、コンプレックスを感じる時もあるわけでして・・・。

そんなコンプレックスを抱える私がこの度読んだのがこちら!

 

細谷功 著「『具体⇄抽象』トレーニング 〜思考力が飛躍的にアップする29問〜」

 

 

著者略歴

著者は細谷 功 (ほそや いさお) 氏。ビジネスコンサルタントをなさっている方で、問題発見・解決や思考力に関する講演や研修を国内外の大学や企業などに対して実施しているそう。

著書には「地頭力を鍛える」「問題解決のジレンマ」「なぜ、あの人と話しがかみ合わないのか」などがあって、コミュニケーションを円滑にするための思考力アップ方法を提案していらっしゃるようです。

 

こんな人にオススメ

この本の目的は具体⇄抽象トレーニングを通じて思考力を向上させること。それによって人とのコミュニケーションもより円滑にできるようになります。したがって、人と関わる仕事をしている方なら誰でも応用できる内容ですが、特に

・問題解決能力を磨きたい

・アイデアを出す技術を身に着けたい

・本質を見抜く力を身に着けたい

という人にはオススメです。

 

この本を読んだ理由

冒頭で書いた通り、私のコンプレックスは「簡潔に、わかりやすい説明できない」ことです。その私がなぜ一見関係のない「具体⇄抽象トレーニング」なる本を読んだのか?

それは、簡潔で的確な説明をできる人というのは

・物事の外見ではなく本質を捉える力に長けている

・説明する相手の理解力に合わせて、その本質を具体的な事柄に落とし込む力がある

ように感じているからです。

 

「物事の本質」。よく聞くフレーズですよね。

そもそも物事の本質というのは、物事を構成するさまざまな要素の中から抜き出された特に重要なもの。

そしてこの本のタイトルでもある「抽象化」とは「物事から特に重要な要素を抜き出す」という行為です。

したがって、物事を抽象化する力が鍛えられれば本質を見抜く力も身に付けられる(はず)。

 

この本を読んで「抽象化する力」を身に付け、本質が見抜くけるようになれば、それが私の目標である「簡潔に、分かりやすく説明する」ことができるようになる!というわけ。

これが私が本書を手にとった理由です。

はてさて、そんなに上手くいくのでしょうか(笑)。 

 

物事の本質なんて存在しない?

さて、ではこの本を読めば本質を見抜く力を身に付けることができるのでしょうか?

読んでみた結果は

半分YESで、半分NO

です(笑)。

というのは、この本を読んで妙に納得したのですが、そもそも物事の本質などという物が幻想に過ぎないということが分かったから。

 

恐らくこれは日本人の真面目さ故だと思うのですが、どんな時でも、どんな状況でも通じる“大正解”みたいな「本質」があって、それを見抜けることが重要という風に考えがちです。

どうもこれが「抽象化する」「本質を見抜く」ということを考える時の根本的間違い。著者はこれを「本質の罠」と呼んでいます。

 

「物事の本質」というのは物事の根幹となる部分や重要な部分のこと。つまり、本質とは物事を抽象化した結果導きだされた要素のことです。

しかし、よく考えれば当たり前なのですが、そもそも物事の何が重要なのかは状況や人によって異なります。

 

たとえばスマホを選ぶ時を考えてみましょう。

ある人にとってはスマホを選ぶ上で重要な要素、つまりスマホの本質とは「必要な時に必要な情報を得られるツール」かもしれません。その場合、スマホを選ぶのに重要なのは接続の安定性であるので、どの携帯会社を選ぶかが重要で、スマホの機種自体はどうでも良いということになります。

一方、別の人にとってはスマホの本質は「ファッション性」かもしれません。その場合、スマホを選ぶのに重要なのは “見た目の格好良さ”ということになります。スマホの機能や接続の安定性は二の次になるのです。

 

このように同じ物事でも重要視する要素は人や状況によって異なるので、いわゆる世間一般で言われるような「いつ、どこででも通用する物事の本質」などという物は存在しません。

本質というのは“幻想”にしか過ぎないのです。

「本質を見抜く目」なんて物は探しても仕方ないし、そもそもそんな物存在しないってことですね。

 

これがこの本に書かれていることでも一番大事なことで、変な話これだけでも覚えていれば十分だと思います。まぁ、穿った見方をすれば私にとってはこの知見こそが“この本の本質”かもしれません(笑)。

POINT

● 「(いつ、どこででも通用する)物事の本質」などという物は存在しない

 

「本質」を求める人の心理

本質なんてものは幻想である。

それは分かった。

ただ、恐らくこの記事を読んでいる方の多くはそれでは納得して頂けないと思います。

なぜか?

それは現実に物事の要点をつかむのが上手い人がいるからです。

逆に「本質を見抜く目を身につけたい」と思っている人は、「自分はそういうことが上手くできない。そういう能力がパッと身に付けられる“何か”があるはずだ!」と思っているでしょう。

「“本質”が存在しないなら、それでもいい。だったら、それに代わる何かをくれ!」

そう思っているのではないでしょうか。

なぜそう断言できるのか?

何を隠そう、私自身がそう思っているからです!!(笑)

 

「お前のことかいwww」とツッコミをされそうですが、まぁ実際そうですね(笑)。

でも、多かれ少なかれそう思っている人が大多数なのは間違いないでしょう。それでなければ世の中にいわゆる「自己啓発本」が溢れている理由が説明できません。みんなが「俺は本質を見抜く目を持っている!」と思っているのであれば、誰も自己啓発本など買わないでしょう。

POINT

● 本質を見抜く目がほしい人は本質を見抜きたいのではない。簡単に要点がつかめるようになれば良いと思ってるだけ。

 

本質を見抜けない人=自分に自信がない人

ではなぜ多くの人は「本質を見抜く力がほしい」という欲求を持つのでしょうか?

結局のところ、それは「自分に自信がないから」ではないでしょうか。

この本によれば

抽象化というのはある意味で(目的に合わせて)「都合の良いように特定の属性だけを切り取る」こと

を意味しています。(本書P98)

 

都合の良いように切り取るということは、逆に言えば「都合の悪いところは切り捨てる」ということです。この「切り捨てる」という行為はなかなか勇気がいります。

切り捨てること自体は簡単ですが

「切り捨てた部分に何か重要なものが残っているかもしれない」

「切り捨てることで誰かからクレームを付けられるかもしれない」

そんな不安が頭をよぎります。

その不安から逃れられないために、いつまで経っても「本質をつかむ=都合の良いところだけ切り取る」ということができないのです。

 

したがって、物事を抽象化し、本質をつかむのに必要なのは何か? と言えば、自分が必要ないと思うところを思い切って切り捨てる“勇気”であり、その勇気を裏付けるための“自信”なのです。

POINT

● 物事の本質とは、目的に合わせて物事を都合よく切り取ること。

● 本質を掴むためには重要じゃない部分を切り捨てる勇気と自信が必要。

 

 

自信をつけるためにやるべきこと

ここまでで

・本質なんて幻想

・重要なのはいかに自分が大事だと思う要素を都合よく切り取るか (=抽象化するか)

・抽象化するために必要なのは自信

というポイントを引っ張り出して来ました。

 

とは言え、ですよ。

じゃあ、自信を身に付けるにはどうすれば良いのか?という話です。

結論から言うと、これはやはり「研究と検証、そして実践しかない」と思います。

いや、本当に月並みで申し訳ないですm(_ _)m

 

でも、一つだけ補足させてください。

私は専門分野が音楽なので音楽に話を置き換えますが、一般の人たちがテレビやライブで見るアーティストは楽しそうに、そして自信に満ちあふれて演奏しているように見えますよね。

しかし、あれは外から見るとそう見えるだけで、ほとんどの場合は心臓バクバクで演奏をしています (少なくともライブが始まる直前までは間違いないです)。常に失敗と隣合わせですし、今自分がやろうとしていることが正しいのかどうかの葛藤を抱えています。

 

アーティストというと、何か天賦の才能があって“ヒラメキ”で何かを作り出せるような人だと思われていると思います。確かに中にはそういう人もいるかもしれません。しかし、そんな人は10年に1人とかそれレベルの話で、ほとんどのアーティストは違います。

 

私は職業柄そういったアーティストと接することが多いのですが、伸びるアーティスト、長続きするアーティストは常に研究と練習を怠りません。

素晴らしい演奏をするアーティストほど、他のアーティストのプレイをチェックして、新しいテクニックを貪欲に吸収しています。そして、それを自分なりに解釈し、何度もトライ&エラーを繰り返しています(それが一般人の目と耳ではほとんど分からないだけ)。

音楽の世界でも知識や技術は日進月歩で、ギターやドラムのフレーズひとつにも「時代の風」があります。どんなに名フレーズでも必ず「古い」と言われるようになります。ですから、新しさを常に追求し、自分の演奏力の改善のために努力を怠らない人しか残っていけません。これは間違いないです。

そして、そういう人だからこそ新しい局面を迎えた時にも

「どのような解決法 (=フレーズ) が考えられるか?」

「いくつもの選択肢の中で、どれがより多くの人の合意を得られるか? (=みんなが“カッコイイ!”と思ってくれるか)」

を考えて、その場に合わせた演奏を瞬時に繰り出せるのです。それは常日頃からの研究と検証、そして実践があればこそ可能になります。

ちょっと知識や感覚を掴んだくらいでパッと解決できるようになる“コツ”なんて物は存在しません。

POINT

● 日々の研究と検証、そして実践を怠らない人だけが物事の本質をつかめる

 

 

 

まとめ

ちょっと長くなってしまったので、最後に整理しておきます。

まず、物事の本質を見抜く目などという都合の良いものは存在しない。

重要なのは本質をつかむことではなく、「これが物事の本質だ」と断言できる勇気と自信をもつこと。

そして、それを身につけるためには、日頃から周囲の動向に目を配り、知識や技術を研究 & 検証し、それを実践する努力が必要です。逆に言えば、そのような努力を日々行っていれば、本質を見抜く目は誰にでも身に付けられるということ。

そのような努力の一環として考えると、今回ご紹介したこちらの本はとても参考になると思います! 

長文を最後までお読み頂きありがとうございました!
 
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