世界を救う読書

ビジネス書から文芸書までさまざまな本を通して世界の見方を考えるブログ

伊藤羊一著「一分で話せ」。左脳で組み立て、右脳を刺激し、人を動かすプレゼン力。

さて、早速ですが、今日ご紹介する本はこちらの45万部超えのビジネス書。

伊藤羊一著「一分で話せ」です。

プレゼンなどで人に何かを伝える時に必須の技術を詰め込んだ書籍です。

プレゼンを前提に書かれていますが、誰かに自分の考えを説明したり、協力をお願いをする時など、頭の中にあることを“誰かに伝える”シーンで役に立つ技術が満載です。すでに45万部以上売れているそうですが(2020年10月時点)、それもうなずける内容で非常にオススメです。 

著者紹介 

著者の伊藤羊一氏は、ヤフー株式会社Yahoo!アカデミア学長。グロービズ経営大学院客員教授という肩書。さまざまなビジネスマン向けの授業を通して、プレゼンの仕方を教えているそう。ただ、意外にも本人は元々プレゼンが苦手だったとのこと。

この本は、その著者が少しずつ現場で学び、プレゼン指導をするまでになったその秘術を詰め込んだ一冊。プレゼンが不得意、人にうまく伝えられないという人には期待の一冊といえるでしょう。

なぜ「一分で話せ」なければならないのか

まず、本書の目的をズバリ言ってしまえば、それは

自分の考えを伝え、人を動かす力を身につけること

です。

したがって、この本では

1) 自分の考えをまとめる方法

2) それを人に伝える実践的な方法

が数多く紹介されています。

 

タイトルである「一分で話せ」もその技術のひとつですが、なぜ一分で話さなければいけないのでしょうか?  

著者はそもそも「人は相手の話80%聞いていない」と言います。考えてみれば当たり前で、自分が言っていることを一言一句残さず聞いて、100%理解し、しかもそれを後々まで覚えていてくれるなんて人はいるわけがありません。すごく熱意を込めて懇切丁寧に説明したのに「で、結局何なんだっけ??」「要するに何が言いたいの?」と言われて愕然としたことは、あなたも経験したことがあるはず。

 

だったら、まずはとにかく短くシンプルにする。“一分で話せるくらい”短く、シンプルに話を組み立てることから始めようというわけです。

そしてそれが出来たら、自分の考えを伝えて相手を実際に動かしていく。

その技術を著者は余す所なく伝えています。

 

頭の中をシンプルにする“構造化”作業

まず大事なのは自分の頭の中にある主張をシンプルに整理することです。自分の頭の中がゴチャゴチャのままだったら、相手に伝わるわけがありません。

この「頭の中を整理する方法」として著者が提案しているのが、下記のような形で構造化してみることです。

 

f:id:Kogarasumaru:20201012210113j:plain

 

文字で書くと

「話の枠組みを明確にする。主張(結論)は一つ。その根拠はこの3つ。」

ということ。一番良いのはこのような図を紙に書いて、実際に自分の言葉を当てはめてみることです。そうするとシンプルなだけに、自分の主張がどういう理屈で、どういう構造になっているのかが視覚的に分かりやすくなります。

人間は自分の頭の中で考えている時は「完璧に理解した。」「これなら誰もが納得するはずだ。」と思っていても、実際に人に説明しようとするとうまく説明できないことが多いですよね。よく言われることですが、こういう時には一度何かに書き出して視覚化すると、自分がちゃんと理解できていないポイントがわかりやすくなります。 

左脳への働きかけて伝える

自分の主張が構造化されたら、次はその構造を相手に伝える段階に進みます。

著者によると相手に自分の主張を伝えるには、「左脳」と「右脳」の両方に訴えかけることが効果的だそうです。何だか難しそうに聞こえますが、実は左脳に訴えかけるのは先程の「構造化」ができていればほとんど出来たも同然です。

 

よく左脳は論理的な思考を司る器官だと言われます。ではその「論理的」とはどういうことかというと「主張と根拠の意味がつながっていること」です。どんなにハッキリとした主張で、根拠がどんなに精密に数値化されていたとしても、それらに因果関係が見い出されなければ人は納得しません。

この論理的なつながりというのは頭の中で考えているだけだと“何となく”誤魔化されがちです。自分自身が何となく理解しているから、人に伝えようと思った時にうまく伝えられない。だからこそ前節で紹介したような図で視覚化するのがオススメ。

視覚化すると主張と根拠がちゃんとつながっているかどうかわかりやすくなるのです。

 

自分の伝えたいことを視覚的に構造化し、主張と根拠の論理的つながりが確認できたら、あとは簡単。

①これから伝えることの枠組みを明確にする。

②根拠となる3つの要素を示す。

③最後に主張 (結論) を述べる。

これだけです。

もしかしたら最初に結論を言ってしまった方が人の心を引き付けられるかもしれませんが、それはケースバイケースで臨機応変に。

右脳への働きかけ方〜イメージが湧く仕掛けづくり〜

左脳に訴えかける論理構造ができたら、その次に必要になるのが相手の感情に訴えかける方法です。前節に書いた論理構造は、相手に自分の考えを伝えるための基礎づくりみたいなもの。これがなくては、そもそも相手に自分の言葉は届きません。

しかし、相手に言葉が届いて理解してくれたからと言って、相手が自分の望むように動いてくれるかは別問題。大切なのは相手が「よし。それでやってみよう!」と心を動かされることです。確かに、自分の立場などを利用して論理で相手を追い詰めれば、一瞬は相手も動いてくれるかもしれません。でも、それも一瞬だけの話。

結局人は心が動かされなければ、積極的に動いてはくれない。ひいては自分が望む結果を出すことも難しくなるのです。

 

では、どうすれば人の心を動かせるのか?

それは相手の頭の中に具体的なイメージを生み出させることです。

そのためのアプローチとしてこの本では2つの方法が紹介されています。

 

イメージを伝える方法① ビジュアル素材を使う

一つめは画像や動画などをビジュアルで見せること。これは分かりやすいですね。

私は職業柄コピーライター的な仕事もやっているため、文字で表現する機会が多いです。しかし、文字や言葉はどうしても解釈の幅が広くなってしまいます。そこで実際の作業に入る前に写真や動画などを補足してイメージを共有することで、できるだけ他の人とイメージの齟齬が出ないようにしています。これで根本的なやり直しはかなり防ぐことができます。

 

もちろんプロ並みのクオリティは必要ありません。

スマホで撮った写真やネットで見つけてきた画像、あるいは下手でも手書きで書いた絵など、自分のイメージが伝わる視覚的な素材を見せることができれば良いのです。

イメージを伝える方法② 言葉で表現する

写真や動画のようなビジュアル素材を用意できない場合に用いられるのが、言葉でイメージを掻き立てる方法。

今の時代だれでもスマホを持っているでしょうから、できれば先程書いたビジュアル素材を用意する方法を使った方が早いです。またその方が伝えられるイメージもより具体的になります。しかし、あまりに先進的なことで前例がなかったり、どうしても自分のイメージに合う画像や動画が見つからない時には次点の策として有効。

 

ただ、言葉で伝えることに自信があるのであれば、相手にイメージさせる方が効果的という場合もあります。これはラジオ通販がよく売れるのと同じ。目に見えないからこそ想像が掻き立てられ、より強く印象が残るという手法ですね。

かなりの話術が要求されますが、著者は取り入れやすい方法として

 

・具体的な例を出すときに「例えば」と一呼吸おいてから始める

・「想像してみください。」という言葉を投げかけてから具体例を出す

 

という手法を紹介しています。このような言葉を使うことで、相手も”イメージを浮かべるモード“に入りやすくなります。シンプルな方法ですがなかなか有効です。

 

ちなみに、言葉によってイメージを連想させるには言葉の語感も大事です。言葉が持つ語感の影響力については、前にこちらの記事で取り上げたので良かったら参考までに。

 

一分で「吉野家がなぜ好きなのか」を伝える技

ここまでのまとめとして、著者の分かりやすいプレゼンの例を紹介します。それが「吉野家がなぜ好きなのか」を伝えるごく短いプレゼンです。

吉野家が好きです。 (結論)

まず、早い。座ったかどうかのタイミングで、店員さんが牛丼を出してくれますよね。(根拠①)

次に、安い。今どきどこで食べても大抵500円はかかります。(根拠②)

最後に、うまい。想像してみてください。お腹がすいた時に牛丼をかきこんだことを。(根拠③と言葉によるイメージ想起)

だから、僕は吉野家が好きなんです。(結論の念押し) 

一つの結論に対して3つの根拠を提示し、食べている状況を想像させて吉野家の牛丼のイメージを伝える。ものすごく簡単なのですが、「一分で話す」プレゼンの妙技が詰まったプレゼンだと思いませんか?

 

まとめ

今回ご紹介した内容をまとめると、下記のようになります。

 

1) 人を動かすには左脳(論理性)と右脳(感情)の両方に訴えかけることが必要。

2) 左脳に訴えるには自分の考えを構造化することが大事。その構造は「枠組み設定」、「一つの結論」、「三つの根拠」とし、それぞれに意味のつながりを持たせる。

3) 右脳に訴えるには、写真や動画、あるいは言葉を駆使して相手のイメージが湧きやすいよう心がける

 

恐らく一番難しいのは2番の構造化の工程です。ただ、これができないと一分で相手に伝えるのは難しくなりますので、是非ここは乗り越えたいところ。慣れると案外簡単にできるようになりますよ!

 

おまけ 〜感想〜 

私はあまりビジネス書は読まないのですが、これはなかなか面白かったです。特に私は言葉で説明するのが苦手なタイプなので、かなり参考になりました。いわゆる「プレゼン」をする機会がない人でも、誰かに説明をする機会がある人なら誰でも参考になる内容です。逆に誰かのプレゼンを“聞く”時にも、この本の内容が頭に入っていると相手の話を理解しやすくなると思います。

 

ちなみに、個人的に一番響いたのは次の言葉でした。  

プレゼンというのは、自分が伝えたいことを「伝えていく」行為ではなく、「相手の頭の中に、自分が伝えたいことの骨組みや中身を、『移植していく』作業」なのです。

 

私は「伝える」ということは「自分が伝えたいことや誰か(クライアントとか)が伝えたいこと」を"言ったり""書いたり"することだと思っていました。極端に言えば「自分が伝えたいことを言うこと」だと。しかし、この本によるとそもそもその前提が間違っているということなんですね。

言われてみれば当たり前なのですが、妙に納得してしまいました。

この「自分の伝えたいことを移植する」という意識でこの本を見ると、著者が伝えたいこともより分かりやすくなると思います!

 

という訳で、今回はこちらの書籍のご紹介でした。

最後まで長文をお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

このサイトについて プライバシーポリシー
Copyright ©2020 Sekadoku (世界を救う読書管理人)