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これだけは知っておきたい「ファーウェイ」問題。

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先週アメリカのGoogleが中国のHUAWEI (ファーウェイ)へのスマホ用OS「アンドロイド」の提供を中止すると発表して以来、次々と大企業からファーウェイとの取引を時事上中止する方針を打ち出して来ました。

これを受けて、下記のロイターのように、ファーウェイのスマホが中国以外の世界市場から姿を消すのではないかという予測まで出てきています。

もはやサイバー空間での米中戦争は始まっていると言っても過言ではない状況ですが、そもそもなぜこんな事態になったのでしょうか?

 

そこで今回は

 

・そもそもファーウェイとはどんな企業なのか

・なぜアメリカはファーウェイを排除しようとしているのか

 

について説明してみたいと思います。

 

そもそもファーウェイとはどんな企業なのか?

1987年に創業したファーウェイは、元々スマホのような端末ではなく通信機器を製造する会社でした。それが2013年頃から高級端末志向を強めてメキメキと市場シェアを伸ばしていき、既にスマホの出荷台数ではアップルを抜いて世界第二位にまで登りつめています。

2018年の売上高は何と日本円で「11兆6474億円」!!

 

そして、もう一つファーウェイの凄いところは、次世代通信規格5G関連の特許保有数が1554件と、ノキアやサムスンを抜いて世界第一位だという点です。

つまりこのまま5G企画の通信サービスが開始されれば、世界の通信事業の主要部分をファーフェイが担う可能性が非常に高いということです。

 

ファーウェイの通信機器シェアは既に世界30%

勿論ファーウェイが圧倒的特許数を持っているからと言って、それだけで世界の通信事業を中枢を担えるわけではありません。

ただ、実はヨーロッパにおいては現在主流の4Gから既にフェーウェイの通信機器を採用している携帯電話が多いのです。そもそも4Gの通信システムが世界で初めて構築されることになった北欧のノルウェーで、その通信システムの構築を担ったのがファーウェイだったのです。

もちろんそれはヨーロッパ諸国だけではありません。アジアやラテンアメリカ、アフリカでもその存在感をまし、今では世界の通信機器市場の30%がファーウェイ製になっているのです。

 

そのようにヨーロッパ諸国の通信システムにおいて、ファーウェイの技術が浸透している状況では、当然次世代の5Gにもファーウェイのプラットフォームを使って乗り換えた方が早いし、コストも安くなるということになります。

 

次世代規格の特許数も世界一。

市場シェアも世界トップクラス。

普通に考えれば、このままファーウェイが5Gの主導権を握るのは当然といえるでしょう。

 

ところが。

それに「待った」とかけたのがアメリカだったわけです。

 

5G規格こそがアメリカによるファーウェイ外しのきっかけ

これだけ実力と好条件が揃ったファーウェイ。

結論から言ってしまえば、その実力こそがアメリカがファーウェイ外しにやっきになっている理由です。

すわなち、そのファーウェイの実力がアメリカにとっては「脅威」と映ったということです。

 

既にいろいろな所で話題に上っていますが、次世代規格の5Gというのは現在の4G規格とは次元の違う通信規格です。5Gと言えばその圧倒的な通信速度によって

 

・動画配信が格段に速くなる (2時間の映画を5秒でダウンロード可能)

・仮想現実(AR)サービスの拡充

・クラウドサービスによるゲーム事業の拡大

・自動運転技術の実現

 

など色々な利点が喧伝されています。

しかし、光があるところには闇があるのも必然。5G規格による様々な問題が懸念されているのも事実で、その1つがセキュリティー確保の問題です。 

 

5Gによって、車の自動運転や工場のロボットの自動操作いわゆるIoT化の動きが圧倒的に進むと言われています。5Gが浸透すればするほど、それらがハッキングされた際の被害も莫大なものになる可能性が高まります。

もし中国のファーウェイが5G通信規格の中核を担うようなことになれば、そのようなセキュリティーが国家の安全保障レベルで問題になる可能性が非常に高い。それこそがアメリカがファーウェイ外しを推し進めている本質です。

 

なぜ今ファーウェイ外しを行うのか?

では、なぜこのファーウェイ外しにアメリカが”今”取り組みだしたのでしょうか?

それも中国が打ち出している「中国製造2025」という国家政策が関係しています。

これは中国が2025年までにITや軍事に関わる10の分野において重点的に製造業の実力を高め、海外に依存することなく国内で全て賄うことができるようになることを目的とした政策です。

 

中国は確かにここ10年余りで科学技術の分野で大きく成長を遂げてきました。ですが、例えば半導体などの中間生産物においては、まだまだ日本やアメリカに遅れを取っており、それらを輸入しなくては生産をすることはできません。「知識」はあるけど、実際に生産する「技術」がないということです。

これが中国の弱点であり、それを2025年までに解消しようというのが「中国製造2025」です。

 

そして、このタイミングで次世代規格5Gの問題が浮上してきました。

“今”このタイミングで中国の情報通信技術を叩き潰しておかなければ、中国による5G通信事業の覇権獲得を止めることができない。むしろ、今ならまだ中国は全ての生産物を自前で賄うことができないので、今ならまだ止められる。「今がラストチャンスだ。」とう考えたのでしょう。

 

 

アメリカは本気で中国とのサイバー戦争を開始している

2018年7月、アメリカの連邦議会は「国防権限法」という法案を圧倒的多数で可決しました。この法案の中にはアメリカは政府機関で中国製品の使用をする条項が含まれています。

どうも日本では今回のファーウェイ外しの件も含めて「トランプという馬鹿な大統領が“自国第一主義”で無茶なことを言って、世界経済に迷惑をかけている。ファーウェイには日本の企業の部品製作で協力しているんだから、日本企業にも迷惑がかかってるんだぞ。困ったやつだ。」みたいに捉えられていることが多いようです。

しかし、この「国防権限法」が可決されたことからも分かるように、これは「トランプ個人」の判断ではないのです。アメリカという国自体が中国に対して警戒心を非常に強めているということなのです。

  

だからこそ、それを受けて

 

GoogleがアンドロイドOSの提供を中止。

Microsoftがファーウェイからの新規受注を停止し、サービスチームは中国から退去。

イギリスの半導体設計メーカーのARM (アーム)がファーウェイ向けのマイクロプロセッサーの供給を中止。

 

という事態が発生。

恐らくファーウェイ製のスマートフォン事業は大打撃を受け、5G事業は相当遅れることになるでしょう。そしてその間に何とかアメリカが5G事業で主導権を握る。それがアメリカがもくろんでいるシナリオです。

 

日本のメディアでは「どこまでこの貿易戦争が激化するか」「日本経済への影響が不安視される」などという、ある種能天気な報道が続いています。しかし、もはやこれはほぼ戦争が勃発しているのと変わらない状況だと考えるべきです。少なくともアメリカは中国製造2025の政策を完全に封じることができるまで、そして5G覇権をアメリカが確実に握ることができるまで手を緩めることはないでしょう。

 

政治的にはアメリカ依存、経済(っていうか民間経営)的には中国依存、という間で右往左往しているようでは、日本は遠くない将来どちらの国からも見限られることになるでしょう。

5Gをきっかけとして世界の覇権をめぐる勢力図が変わりつつある。その中で日本が独立国としてどうすべきかを考えなくてはならない時代に既に突入しているのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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