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パリ暴動③。デモ炎上の火種はフランス国民の「群集心理」にある。

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今年の冬はずっと暖かい日が続いていましたが、この週末は一気に冷え込みましたね〜。気温としてはそこまで低くないと思うのですが(例年並?)、身体が慣れていないせいかメチャクチャ寒い気がします。

この前とある気象予報士の方が仰っていたのですが、この冬は「暖かい日が続くけと時々すごく寒い日がある」という"暖冬傾向"になるそうです。"暖冬"じゃないですからね。"暖冬傾向"です(笑)。

面白い言い方をするなと思ったのですが、確かに「暖冬」と言われていて寒い日があると「暖冬って言ったやんけ〜〜!!」と批難が寄せられるかもしれません。しかし、「暖冬傾向」と言っておけば、「あくまで傾向だからな。寒い日があっても仕方ないか」と納得してしまうわけです。「傾向」一つ付けるだけで大違いですね!

 

さて、この「暖冬傾向」という言葉のように、私達は言葉によるちょっとしたイメージの違いで色々な感情を抱いたり、色々な行動をとったりすることがあります。さっき書いた、「暖冬」と言われていて寒い日があると「暖冬って言ったやんけ〜〜!!」っていう気になる、というのも同じ。

 

そんな特定の言葉やイメージによって導かれる大衆の心理を描いた古典的名著があります。それがこれ。 

 1895年にフランスの社会心理学者 ギュスターヴ・ル・ボンが著した「群集心理」という著作です。

 

群衆心理 (講談社学術文庫)

群衆心理 (講談社学術文庫)

 

 

という訳で(?)、今日はこちらの本のレビューをお届けします。

 

なぜ今「群集心理」か? 

さて、実はわたしこの本を取り上げるのを迷いました。

なぜかと言いますと、一つはブログで"簡潔に"紹介するには内容がメチャクチャ難しいということ。言っていること自体は難しくないのですが、簡潔にわかりやすくするのが超大変・・・。

 

そして、もう一つの理由は多分この本のレビューを読むと、皆さんが嫌な気分になりそうだからです・・・(笑)。

と言いますのが、この本に描かれている「群衆」には私たち現代の大衆もほぼ全て含まれるのですが、やはり「お前は群衆の1人だ」と言われて良い気がする人っていないと思うんですよね(笑)。さらに、この本では「群衆の心理」が相当手ひどくこき下ろされます。

 

ではなぜ敢えてレビューを書こうと思ったのか?

それはいま正に起こっているフランスの暴動、そして日本の政治の混乱にこそこの「群集心理」の状況が当てはまるのではないかと思うからです。だからこそこの本を読むことで今起こっていることをより多角的に観れるようになるのではないかと思ったからです。

 

マクロンを生み出したのも排斥するのも同じ「フランスの群衆」である

先日の投稿にも書きましたが、今回のデモはEUという巨大国家連合に民主主義の根幹である「自分たちのことは自分たちで決める」という権利を奪われたことに対する反発です。

 

少し詳しく説明しますと、EUにおける法律は各国の代表によって形成される欧州議会で決められます。当然EU全体のバランスを取るために色々な法律やルールが決められる訳ですから、一つ一つの国の主義主張や伝統、価値観などはどうしても後回しにされてしまいます。「最大多数の最大幸福」的な考え方ですね。

それ自体は仕方のないことのように思えますが、問題は欧州議会で決められた法律がイギリスとかフランスとかいった一つの国の法律の上位に立ってしまうことです。つまり、自分たちの意図しないこと、望まないことを欧州議会というところで勝手に決められた上、そのルールに逆らうことができないということです。

 

それでもEU成立後しばらくの間うまく行っていたのは、経済的利益がそういったマイナス面を上回っていたからです。「まぁ、所得は増えてるし、目に見えて社会が不安定化してるわけじゃないから我慢するか・・・」という話ですね。

しかし、ギリシャの経済破綻をきっかけにした経済危機により、そのマイナス面が一気に噴出しました。しかも、そのマイナス面を払拭するために必要な社会制度の整備がフランス独自ではできないのです。あくまで欧州議会に諮らなければならない。

その上肝心の大統領が国民よりも欧州議会やグローバルに活動する民間企業を重視する政策を次々に打ち出していく・・・・そりゃね、キレますよwww

「俺たちの国のことは俺たちに決めさせろ!!」となるのは当然です。

 

ただ。

ただ、です。

そのEUの成立に対してフランスは国全体で大歓迎していたわけですよ。「近代より以前から何百年も戦い続けてきた欧州の国々が、様々な障壁を乗り越え遂に欧州連合として一つの共同体になる! 」という夢のような物語に誰もが胸をときめかせていたのです(そうじゃない人もいたでしょうが)。

 

そして実際経済的にうまく行っている時には歓迎していた。欧州連合万歳! とその繁栄に酔いしれていた訳です。マクロン氏もたまたま今のような混乱のタイミングで大統領になってこんなことになっていますが、経済的にうまく行っている時だったら「マクロン最高!!」となっていた可能性も高いです。

 

しかし、経済危機によって事態が急変した途端、大衆は手のひらを返した訳です。

そして「反マクロン」で一致団結している。

 

私はこの欧州連合成立前後から今に至るまでの民衆の動きにこそ、まさにル・ボンの言う「群集心理」が見事に表れていると思うのです

 

 

群衆の敵を生み出すのもまた群衆である

ル・ボンは「群集」の特徴として

 

・衝動的で、動揺しやすく、興奮しやすい

・暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じる

・感情が誇張的で単純である

 

という点を挙げます。

 

彼らは「反マクロン」「反グローバリズム」というイメージの下に集まり、暴動を引き起こしています。確かに私もマクロン氏のグローバリズム的な政策は、フランス人にとっては誤った政策だと思います。

ですが、以前彼らはそのグローバリズム的な政策を、恐らくそれが何をもたらすかもちゃんと吟味することなく、単なるイメージで漠然と正しいと信じ、「欧州連合結成」という夢物語を支持したのです。だからこそ、これまでのグローバリズム的な政策が打ち出されて来た。

 

確かに個人個人で言えば、グローバリズムの是非をしっかりと検討した上で反対していた人たちもいるでしょう。しかし、残念ながら多くのフランス人・・・というかフランス国民という集団としては、それを支持してしまった。まさにル・ボンが言うようにグローバリスト達の都合の良い話を衝動的に、軽々しく信じて、その方向へ突っ走ってしまったのです。

それが現在の混乱を生み出したそもそもの原因であることを今一度思い起こす必要があります。

 

したがって、現在の代表はマクロン大統領ですが、彼の政権を倒せばそれで済むという話ではない。

問題はそのような大統領を生み出した制度、そしてその原因となったグローバリズムを簡単に信じてしまったその「群衆の心理」にあるのです。

 

同じことは日本にも言えます。 

日本でもバブル崩壊以降、構造改革の美辞麗句の下、ひたすらデフレを強化する誤った政策を取り続けており、それどころか「構造改革」の意味も考えず

 

「とにかく今の状況が苦しいから、何かをどうにか改革すれば何とかなるんだろ。知らんけど。」

 

という程度の認識で、構造改革を支持し続けてきました。

 

また、自分たち民間にお金がないからと言って、"相対的に"安定している公務員を「俺たちは大変なのにあいつらばっかり安定した生活を送りやがって!」と叩き続けて来ました。バブルで民間が儲かっていた時は「公務員とかマジ底辺www」とバカにしていたくせに・・・。

 

そもそもお金というのは誰かが使わなければ回りません。

ですから、民間がお金を回さないのであれば、公務員や公共事業によってお金を使うことが景気回復には絶対条件なのですが、「自分たちにお金がないから、人が金を持ってるなんて許せない」という怨念に縛られた群衆は、自分たちで自分たちの首を締めていることに全く気付かないのです。

 

個人個人ではこのような「構造改革路線」「緊縮財政路線」に疑問を呈している人はいるかと思います。しかし、残念ながら日本人という群衆としては、それを支持し続けてきたのです。そういう意味では、日本人に厳しく外国人&多国籍企業に優しい安倍政権も、私達日本人が自ら選んで生み出してきたといえるのかもしれません。

 

 

・・・・という訳で、何か全然本のレビューじゃなくなってしまいましたがwww

この本を読むと、私ここまで書いてきたような「群衆心理」に、自分が普段何気なく取っている行動がどれだけ左右されているか。そしてその「群集心理」が誰に、どのようにして形成されているのかということが分かります。

"人が集まる"ということが、どれだけ自分の行動に影響を及ぼすのかを知ることで、自分の言動をより冷静に観ることができるようになる。それを知るだけでも自分の行動をいかに処するべきかについて、今までとは少し違った視点を持てるようになるのではないでしょうか。そして、そのような人が群衆の中に一人増えるだけで、自分たちの未来に明るい道を示すことができる。甘っちょろいかもしれませんが、そのような期待を持ってしまうのです。

 

読破するにはそれなりの時間がかかるかと思いますが、その価値は充分にあります。

今、この時にこそ読むべき本の一つではないかと私は信じています。

 

 

今回も長文を最後までお読み頂き有難うございました😆