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「パリ暴動の原因は燃料の高騰」はフランス人を馬鹿にしている

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先日の投稿でも取り上げましたが、フランス全土で「黄色いベスト運動」と呼ばれるデモが広がっています。パリの高級ブランド点や富裕層の邸宅いが集まる地域で暴動が発生。パリで4,000人以上が高速。133人が負傷。治安部隊が出動し、催涙ガスが閃光弾、放水などによって事態の収拾を図ったようです。

また、一部報道ではすでに死者も出ているようです。

 

私もパリの凱旋門は一度だけ訪れたことがあるのですが、あの美しい街並みがこのような「戦場」になるとはとても信じられません。よろしければ下記のYoutube動画をご覧ください。その文字だかでは伝わらない凄まじさがお分かり頂けるかと思います。

 

 

日本でこのデモ騒動について取り上げられる時に気になるのは、(引用記事でもそうなのですが)「燃料税引き上げに抗議するデモが前日にパリで急拡大し、一部が暴徒化した」という報じ方をすることです。

これが100%間違いだというつもりはありません。

ですが「燃料税の引き上げに抗議するためのデモ」だという報じ方は、この出来事を確実に矮小化した捉え方であり、問題の本質が全く分かっていません(あるいは、分かっていて、それが広まると不味いから矮小化しているかのどちらかです)。

 

では、問題の本質とは何でしょうか?

 

それは他でもない「グローバリズムに基づく改革が生み出した社会の分断」。

そして、何よりもその分断の中で打ち捨てられて追い込まれた国民の怒りです。

 

マクロン氏は、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政権の誕生に代表される「右派の台頭」によって、警戒感を強める左派との摩擦や衝突が深まる中で「右派でも左派でもない」と主張して大統領に選ばれました。

確かにマクロン氏が言うように、彼の政策は右派でも左派でもありません。「グローバリズム派」あるいは「富裕層派」なのです。

 

具体的にはマクロン氏は大統領に就任以来、富裕層や企業への減税を行う一方、

 

  • 集団解雇の手続き簡素化
  • 雇用維持の規制の緩和
  • 解雇不服申し立ての期間短縮 (解雇された労働者が企業を訴えにくくする)
  • 年金受給年齢引き上げ
  • 社会保障増税
  • たばこ増税
  • 住宅手当の削減

 

といった労働者、そして一般国民に厳しい政策を次々に実行してきました。

 

その”業績”を評価する形で、今年7月に行われた調査では、企業経営者の54パーセントがマクロン大統領の活動に「満足している」と回答し、65パーセントが「改革が進んでいる」と回答しているそうです。

 

しかし、その一方で失業率は9%台後半と高い比率を維持。しかも、25歳未満の若年層の失業率は22%を超えるほど高い失業率となっています。

それを反映してか、世論調査によるとマクロン政権の政策に対する「よい」という回答は29パーセント、「マクロン氏を信頼できる」という回答は32パーセントにまで下落。しかも、約70パーセントが今回のイエローベスト運動を支持しているそうです。

 

企業に優しく、労働者に厳しいマクロン氏の政権運営が国民の分断を引き起こしたこと。そして、今回の暴動を起こさせる下地となったのは間違いありません。「燃料税引き上げ」は単なる引き金に過ぎません。

「燃料税に反対した暴動」などという報道は今回の騒動を矮小化するだけでなく、その真因である「富裕層優遇政策が国民の分断を引き起こした」という点から、私達の目をそらすことになりかねません。

 

アジアの東側にあるどこかの国も同じような「富裕層優遇策」を全力で推進しているようですが、その国の未来の姿がこのパリ暴動にあるかもしれないのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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