欧米で進むLRT化(最新式路面電車)がなぜ日本では進まないのか。
欧米で注目されているLRTだが日本では・・・
最近日本でもたまーに目にするようになった「LRT」。
みなさん何のことかご存知でしょうか。
LRTは「Light Rail Transit」の略で、最新式のいわゆる“路面電車”のことです。厳密にはイコールではないですが、まぁほぼほぼ同じと考えてOKかと。
路面電車と言うと古臭いイメージがありますが、実はこれがここ10数年の間に世界的に注目されています。
「過剰な自動車化」による環境への影響などにより、都市住民の暮らしの豊かさに悪影響が出ており、そこから脱しようという「脱モータリゼーション」の流れから注目されてきたものです。
京都観光に行ったことがある方ならお分かりかと思いますが、まぁ車を使って観光地へ赴こうものなら、あまりの渋滞のために「これ、一体いつ目的地に着くの・・・」と不安とストレスで一杯になります。これも「暮らしの豊かさ」の悪影響の一つと考えて良いでしょう。
さて、このLRTですが、ヨーロッパの都市部ではだいぶ浸透して来ているようです。日本でもだいぶ前から議論がされてはいますが、あまり導入されてはいません。
2015年にようやく富山市で導入されたようで、LRTを含めた駅周辺には店舗や住まいが集まりつつあり、都市の形が変わりつつあるようです。
なぜ日本では導入が進まないか
しかし、日本全国で見るとまだまだその導入が進んでいるとは、とても言い難い状況です。その理由を考えるとき、私が今回の引用記事でもっともだと思ったのが次の部分。
欧米の公共交通は黒字経営を目指すこと以上に、より良い公共サービスを提供することを重視している。高齢者や子供など、すべての人に等しく移動の便利さを提供するためだ。公立学校や図書館は税金で運用され、道路も税金で作られているわけだから違和感はない。逆になぜ日本の公共交通が民間企業的な運営を強いられているのか不思議に感じる。
全く仰るとおりで、日本と欧米のインフラそのもに対する考え方の違いが大きいことが、日本でのこのような脱モータリゼーションの発展が欧米に比べて遅い根幹原因だと思います。
本来鉄道整備のようなインフラストラクチャーとは「社会の基礎構造」を意味する言葉で、その効果には「フロー効果」と「ストック効果」の2つがあります。
フラストラクチャーの2つの効果
1) フロー効果
政府からの発注により民間企業などにお金が流れ、その企業へ利益が生まれたり、雇用が生まれるといった効果です。
2)ストック効果
インフラ整備により交通や物流が改善される経済効果や、河川整備や堤防建設などにより国民の安全を高める安全保障上の効果のこと。
恐らく世間一般で「公共事業」というと、(1)のフロー効果のイメージが強いのではないでしょうか。確かにその効果はとても大きいものです。しかし、長い目で見れば(2)のストック効果の方が影響が大きいと言えます。必要な道路や電気、ガス、インターネット通信網などがなかったとしたら、私達の生活や経済活動は成り立ちません。
したがって、公共事業のことを「公的資本形成」とも呼びます(厳密には定義がちょっと違いますので、ざっくり言えば、です)。
このLRTも地元への波及効果を考えれば公的サービスの運営ですので、国と地方が強力して整備を図るべきものです。しかし、そのような「公的性」を考慮せず、ただの「交通“サービス”」だと捉えてしまっているため、民間交通業者へ過度な負担を強い、その結果「議論ばかりで導入が全く進まない」という事態になっているのではないでしょうか。
インフラが果たす重要性
このような公共事業への投資の重要性。そして、だからこそ政府が積極的に行っていくべきであるという認識は、実は世界ではごく当たり前のこと。「公共事業」に対する脊髄反射的な嫌悪感を示しているのは、日本だけなのです。
以下の引用は、インフラ整備の重要性に対して以前イギリスのキャメロン首相が行った演説の一部ですが、公共事業への嫌悪感を示す人たちに是非読んで頂きたいものです。
「インフラは、現代生活を支えるとともに、経済戦略において重要な位置を占める。決して二流であってはならない。それはビジネスを成功へと導く見えない糸である。社会資本はまたビジネスのためだけに存在するものではない。それは市民が活動するためのプラットフォームである。もし、我々のインフラが二流になれば、我々の国も二流になる。」
イギリスが国家戦略としてはどれだけインフラ整備を重要視しているのかが、はっきりと分かる演説です。
今回も長文をお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m