水道民営化法案の真の目的。内閣で暗躍するフランスの多国籍企業。
私が日本に生まれて良かったな〜と思うことの一つ。
それは「水が美味い!」ということです。
日本では「水と空気はタダ」みたいなことを言われますが、海外に出かけてから日本に帰ってくると「蛇口をひねったら水が出る。そして飲める。」ということは、とんでもない幸せです。北欧とかの水源に近いところなら分かりませんが、変な話中国とかだと水をコップに溜めると平気で濁ってたりしますからね・・・。絶対飲めませんよ。
みなさん、本当に日本に生まれて良かったですね!(笑)
そんな“水大国(?)”である日本ですが、そのような贅沢を享受できる日に陰りが指すような法案が昨日5日に可決されてしまいました。それが「水道法改正案」。
内閣法制局によると水道法を改正する理由は次のようなものだそうです。
一応法制局のHPからコピペしておきますが、ぶっちゃけ読まなくて良いですよ(笑)。
だって、
「人口が少なくなって水を必要な人が減るし、水道も老朽化してるんだよね。ま、とりあえず民間に任せれば何とかなるっぽいんで提出しますわwww知らんけどww」
というだけですから。
人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化等に対応し、水道の基盤の強化を図るため、都道府県による水道基盤強化計画の策定、水道事業者等による水道施設台帳の作成、地方公共団体である水道事業者等が水道施設運営等事業に係る公共施設等運営権を設定する場合の許可制の導入、指定給水装置工事事業者の指定に係る更新制の導入等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
「これが法律案を提出する理由である」!! ( -`ω-)どや!
・・・・って言われてもねぇ・・・。そもそも「人口が減るから水の需要が減少する」ってそんな簡単な話じゃないでしょ。「北斗の拳」並の核戦争でも起きて、1億2千万の人口が1ヶ月で100万人にまで減少するとかなら分からんこともないけど(笑)。
じゃあ、何が目的なのか?
それについて社民党の福島瑞穂氏が指摘していることが非常に興味深いので、シェアしておきたいと思います。
内閣直属機関に民間企業が潜り込むという呆れた事態
ぶっちゃけ私はこの福島瑞穂氏のことを全く評価していませんし、それどころか「こんな人でも国会議員になれるなんて、日本ってなんて幸せな国なんだろう」くらいに思ってました。その福島瑞穂氏が初めてまともな仕事をしたような気がします(←何様ww)
恐ろしいことになんと「水道などの公共部門で民営化を推進している内閣府民間資金等活用事業推進室で、水道サービス大手仏ヴェオリア社日本法人からの出向職員が勤務」しており、福島氏は「この法案で最も利益を得る可能性がある水メジャーの担当者が内閣府の担当部署にいる。利害関係者がいて公平性がない」と珍しくまともなことを言っています。
内閣直属の機関にどこぞの企業に勤務する人間が潜り込み、自社に有利な法案を成立させる・・・もはやこれはトムクルーズ主演「ミッション・インポッシブル」の世界です。スパイ大作戦ですよ!!
そもそも内閣法制局が「この法案の目的」として挙げている
・人口減少による水道事業への需要減(が予想される)
・水道老朽化の整備
が必要であれば、それはむしろ国家がやるべきなのです。
考えてもみてください。
「老朽化の整備が必要」であれば、整備のために莫大な費用が必要になります。もちろんお金だけではありません。工事中の国民の生活への影響を最小化させるための根回しやら、他の事業(たとえば道路を掘り起こすのであれば建設業界)との調整も必要となり、相当な労力が必要になります。
その上「人口減少による需要減」が予想される状況であれば、その費用と労力に見合うだけの利益が取れるとは思えません。どう考えても赤字でしょう。"普通に考えれば"ね。
水道民営化の真の目的とは
では、"普通に考えなければ"、どうなるか?
簡単です。
- 水道料金値上げによる売上げアップ
- 老朽化に対する整備を必要最小限に留めることによるコストカット
- 水道供給範囲を制限することによるコストカット
です。
何も難しい話ではありません。「売上げアップ & コストカット」。民間企業において普通に行われていることです。
「それじゃ、私達国民が安全な水を飲めなくなるし、値上げにもなってメリットがないじゃないか!」と思われますか?
そうですね。そう思われるかもしれませんね。その質問への答えはこれです。
「はい。その通りです。だって安全性が低下しても、値段上がっても、みんな水が飲めないと困るでしょ?
だから水道事業を勝ち取った民間企業がボロ儲けできるんじゃないですかwww」
しかも今回の場合、水道事業を担うのはフランスの水道サービス"ヴェオリア社"ですから、「日本人の安全がどうなろうが知ったこっちゃないッスwww」でしょうね。
今回の水道事業改正のような"公共サービスの民営化"自体は、小泉政権以来いくつも行われて来ました。しかし、今回の水道事業改正には一つ猛毒が仕込まれているのが特徴です。
その猛毒の名はコンセッション方式。
「利益は企業に、負担は国民に」という民営化方式
コンセッション方式というのは道路や鉄道、水道など国家や地方自治体が運営するインフラ事業を「所有権は公的機関が保持しつつ、運営権のみ民間企業に譲渡する」運営方式のことです。
字面だけ見ると「いわゆる民営化と何が違うの?」という感じだと思いますが、これが大違い。運営権を民間企業が持つということは、当然そこから得る利益はその民間企業の物になります。一方、所有権が公的機関(国や地方自治体)が持つということは、「何か問題が起こった時は、その公的機関が責任を取る」ということです。つまり民間企業は利益だけ貰って責任は取らない、ということです。
これは誇張でもなんでもなく事実です。
実際、最近コンセッション方式の良くない点が際立つ出来事がありました。
そう、台風20号が直撃し陸の孤島となったことも記憶に新しい、関西国際空港です。
関西国際空港を運営している関空エアポートという民間企業は運営権は保持しているものの、土地や建物は関空エアポートが保有している訳ではありません。
産経新聞のニュースによると、関空エアポートの代表は
「海上空港として高潮、津波が大きなリスクと認識していたが、(関西エアは)空港をいちから設計するのではなく、民間の力で活性化するのが本分」
と述べたそうです。
つまり
「関空に高潮、津波という大きなリスクがあることは分かっていたが、それを解決するのは自分たちの責任ではないから放っておいた。自分たちはただそれを活用するだけです。だって、それが民間活力の活用でしょ?」
という訳です。
ちなみに・・・ですが、今回の法案の裏で暗躍したと言われる水道サービス大手"フランスヴェオリア社"の地元フランスのパリでは、このような民営化によって1985年から2009年の間に水道料金が約3倍上昇。そのため、パリでは2010年に再び公営化されています。
この水道事業に限りませんが、構造改革や規制緩和を訴える人たちは、あらゆるモノやサービスを市場競争に委ねる市場競争化を原則とさせようとします。
しかし、一般企業が商品として生産するようないわゆる「モノやサービス」と違って、水、土地、鉄道のような「モノやサービス」を生み出す下地となる「生産要素」までも市場競争に委ねることは本当に正しいのでしょうか?
こういった生産要素とは単なる財産や資産ではなく、国や国民が長期的にかつ安定的に生産を継続するための基礎的な条件になるものです。
それが市場競争に委ねられれば、本来の目的である長期的で安定的な供給ができなくなりかねません(市場競争になると「儲からないものには投資しない」ということになりますから)。
バブル崩壊とデフレ不況に陥って以来、日本では「公的機関が営む公共サービスは碌でもない。お役所仕事で甘い汁ばかり吸っている。民間企業ではそんなこと許されない!」という主張がまかり通っていますが、本当にそうでしょうか?
今回の水道事業民営化の内容を知ってもなお「民営化は素晴らしい!! 民営化すれば競争原理が働いて、素晴らしい品質のサービスが安く提供されるのだ!!」と思うのでしょうか?
私にはとてもそうは思えません。
民間企業にも悪いところがあるように、公的機関にも悪いところがある。構造的に、です。人間がやるのですから仕方がないですし、そもそも目的が違うのですから同じ評価軸並べて議論すること自体を考え直す必要があるのではないかと私は思うのです。
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆