世界を救う読書

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アメリカに訪れる不法移民は元々アメリカが生み出した「自由競争の犠牲者」だ。

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 昨日はフランスの各地で発生している「黄色いベスト運動」と呼ばれる暴動について取り上げました。

狙っている訳でもないのですが、今日はこちらです。

 

連日報道されているメキシコとアメリカの国境で騒動になっている移民問題

中南米からアメリカを目指して徒歩で移動している5,000人近くの移民が、アメリカとの国境近くの都市ティファナに到着。その内の数百人がアメリカの通関手続地になだれ込み、アメリ国境警備隊はその後、メキシコ側の国境に向かって催涙ガスを使用したと報じられていています。

 

アメリカの国境警備隊の数も6,000人規模にまで増員されているようですが、それでも先月、不法に国境を越えた後、拘束された人は6万人に以上。その数が減る兆しはなくアメリカの国境の街では、不法移民の増加に対応が追いつかなくなっているようです。

 

このような移民の大移動に対し、トランプ大統領が強行姿勢を取っているのは周知のとおり。上記の催涙ガスもそうですが、アメリカ当局に拘束された人々は脚にGPS装置を取り付けて監視対象とされています。

このようなトランプ大統領の姿勢に対し批判が集まっていますが、本当にトランプ大統領の対応は非難されるべきことなのでしょうか?

 

移民騒動は元をたどればアメリカのせい

まず前提として、私は別にトランプ大統領の対応を人道的な意味においても「正しい!」と評価するつもりはありません。

というか、そもそもなぜ中南米から移民がアメリカに押し寄せることになったのかを考えなくてはなりません。

理由はいくつもありますので一概には言えませんが、少なくともメキシコからの不法移民がここ数年増加している理由の一つは、NAFTA(北米自由貿易協定)とアメリカの農業メジャーであるモンサント社GMO(遺伝子組み換え作物)によるメキシコ農業の破壊です。

 

先日の投稿でも取り上げましたが、アグロバイオメジャー企業である「モンサント社」はF1品種と呼ばれるトウモロコシの人工種子を作り上げました。

FI品種とは強力な農薬にも全く影響を受けないように遺伝子操作された強靭な人工種子のこと。この種子とこの種子を守るための農薬(グリホサートという種類ですが、日本では「ラウンドアップ」という商品名の方が有名ですね)をセット販売することで、莫大な利益を上げています。

しかも、その種子は雄性不稔(ゆうせいふねん)といわれる品種改良(改悪?)がなされており、花粉が作られないため受粉することができません。つまり、一度実をつけたらそれっきり。次の収穫の際にはもう一度そのグローバル企業から種子と農薬を買わなければなりません。
なお、この農薬(グリホサート)も最初はよく効くのですが、年々雑草の方に耐性がついていくため徐々にさらに強力で多くの種類の農薬を使わなければならなくなります。一旦F1を使い始めると一生逃れることができない、という素晴らしい収益システムになっている訳です。

 

メキシコを壊滅させた遺伝子組み換え作物

このF1品種のトウモロコシがメキシコをNAFTA(北米自由貿易協定)という”自由貿易”によって、アメリカからメキシコに大量に流入しました。もちろん、

 

アメリカの広大な土地

・機械化

・グリホサートという強力な農薬とそれに耐えるF1品種

 

という超強力トリオによって実現された激安の作物です。

これにメキシコの穀物市場はあっという間に席巻されてしまいました。

 

実際、アメリカからメキシコへの穀物の輸出は、NAFTA発効前と、発効十年後では、トウモロコシが410%増、米が520%増。穀物以外でも、牛肉が280%、豚肉が700%、鶏肉が360%も増加しました。

こんな事をされてはメキシコの家族経営農家はとても太刀打ちできず廃業に追い込まれます。

 

また、NAFTAによって自由な貿易の扉が開かれ、モンサント社製の「安いGMO種子と強力な農薬グリホサート」がセット販売されたことにより、メキシコの農業にもGMO種子が浸透。国内の大豆とトウモロコシ生産の30%、コメは実に70%がGMO農法で栽培されていたといわれています。

さらに恐ろしいことに、そのようなGMO種子の影響はそのトウモロコシや大豆が作られる耕作地に限定される訳ではありません。なぜなら「花粉が飛ぶ」からです。

考えてみれば当たり前ですが、種子というのは花粉が受粉することで生まれます。ですから、当然様々な土地にそのGMO種子の花粉が飛び交うことになります。実際、モンサント社主導による25万ヘクタールという広大な土地の大豆の耕作地の隣にあった”ハチミツ畑”に、GMO種子の花粉が飛来。「遺伝子組み換え作物が混入した」ということで、メキシコからヨーロッパへのハチミツの輸出が禁止されました。

 

このような状況がメキシコ農家を廃業に追い込み、都市部への人口流出による地方の衰退。そして、経済的に追い込まれた人たちがアメリカへ次々と不法移民として移り住んだという訳です。

 

法治国家としての判断の難しさ

どう思われますか?

私はこの点に関して言えば、アメリカに不法移民が増えたことは

 

「いやいや、元々お前らが仕掛けたことだろうが!!」

 

という怒りを禁じえません。

そういう意味でも「アメリカが何とかしろや!」とは思います。心情的には心の底からそう思います。

 

ですが。

ですが・・・・現代の世界は基本的には法治国家なのです。

そしてその法治国家の国々が相互に関係を持つ国際社会においては、どれだけ残酷であっても「法は守らねばなりません」。その意味では、残念ながらトランプ大統領の対応は正しいとしか言いようがありません・・・・悔しいですが・・・。

いくら元の原因の相当数がアメリカのせいであっても、アメリカ国民の生活や労働、安全を守るためには少なくとも不法入国の移民・難民は排除しなければならない。それは国家元首としては正しい選択であるという一面もあり、単純に「トランプは冷徹な排外主義者だ」と責め立てれば良いというものではないということも私達は理解しておく必要があるのではないでしょうか。

 

それにしても、昨日投稿したフランスの暴動にしろ、今回のアメリカ国境での小競り合いにしろ、そのどちらにも共通するのが「自由貿易」という名の美辞麗句の下に推し進められて来た弱肉強食の世界です。

何物にも束縛されない自由。徹底的に他者から利益を貪りとる自由。そんな自由が本当に我々を幸せにするのでしょうか?

他者の気持ちを思いやり、節度と責任感という社会の調和を保つための最低限の枠組みを持った上での自由こそが私達の暮らしを豊かにするのではないでしょうか。

 

所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。

(by 志々雄真実 @るろうに剣心)

 

そんな強者からの一方的なルールに絡め取られた世界にだけはなって欲しくない。

そんな”自由”なんてクソくらえ!!!

 

今回も最後までお読み頂きありがとうございました😆

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