世界を救う読書

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時差Bizって単なる時差出勤だよね?

東海地方に住んでいる田舎者の私は知らなかったのです。

東京では「時差Biz (ビズ)」なんてものがあるんですね。なんでも時差Bizとは

 

「深刻な通勤ラッシュの解消に向け、東京都が朝の出勤時間をずらすこと」

 

なんだそうです。

 

 そして、その一昨年から始まった「時差Biz」をさらにPRするためのキャンペーンが昨日から始まった模様。

 

2020年東京五輪パラリンピック期間中の混雑緩和を目指し、時差出勤を呼びかける冬の「時差Biz(ビズ)」キャンペーンが21日、始まった。小池百合子知事は働き方改革に取り組む企業や保育園を併設したシェアオフィスを視察し、大会期間中の円滑な交通輸送と経済活動の両立に向け、さらなるPRに力を入れる考えを示した。

 

 なんだそうです。

 

都の担当者が「多様な働き方への取り組みが着実に広がっている」と言ったり、小池都知事が「働き方を見直すことで企業は生産性が上がり、働く人も健康になる。ウィンウィンの関係になるように取り組んでいきたい」と述べて、「時差Biz効果」をPRしているようですが・・・。

 

これには大きな問題があります。それは

 

「効率性の向上」を「生産性の向上」と勘違いさせることになりかねない

 

からです。 

 

「生産性の向上」と「効率性の向上」は全く違う

「生産性の向上」と「効率性の向上」は全く違う概念です。

生産性の向上とは同じ仕事量でより多くの付加価値を生み出せるようになること。一方効率性の向上とは決められた時間でより多くの仕事量をさばけるようになることです。

もちろんある程度のレベルまでは、かなり近い意味合いになります。しかし、人間の時間は1日24時間しかありません。どれだけ効率性を向上させたところで、その人の努力だけでは限界があるのです。

 

したがって、生産性の向上・・・つまりより高い付加価値のモノやサービスを生み出せるようにするためには、同じ仕事量でより高い付加価値のモノを生み出せるような「投資」をしなくてはならないということになります。

この2つを混同することが、労働者を不当な安い賃金で働かせたり、サービス残業&過労死などの過酷な労働条件を生み出す原因になるのです。

 

小池都知事はその発言の中で「働き方を見直すことで企業は生産性が上がり〜」と言っていますが、正に効率性と生産性を混同している人間の典型です。

「働き方」をどれだけ見直しても企業の生産性は上がりません。企業が生産性を上げるために必要なのは投資(技術投資、設備投資、人的投資)です。

 

また、記事の中で都の担当者が一昨年には319社だった参加企業・団体は約990社まで増加していることに、「多様な働き方への取り組みが着実に広がっている証しではないか」と言っていますが、これも同じことです。

そりゃ、企業にしてみれば投資をすることもなしに、同じ労働賃金で"勝手に効率的に働いて"くれるようになる訳ですから、喜ばないはずがありません。当たり前です。

また、「多様な働き方への取り組みが着実に広がっている」などと言っていますが、それは利用する労働者にちゃんとアンケートをとった上で発言しているのでしょうか?

 

もちろん「証ではないか」という言葉にあらわれている通り、単なる「希望的観測」に過ぎません。「自分たちが一所懸命考えたんだから、良い方向に働いているに違いない」と思い込みたいだけなのです。

 

 日本人は昔から「一所懸命に働く」ということそのものに美徳を感じる気質があります。個人的にはキリスト教のような「働くことは罰」という考えよりは、それはそれでとても素晴らしいことだと思います。

しかし、特に昨今の生産年齢人口の減少に対応するために、「生産性の向上」が必須な日本においては、時としてその「勤勉さ」が間違った方向に利用されることがあります。そして、労働者自身がそれを悪いことだと気付きにくいという構造的問題を生み出しています。

 

一所懸命に労働すること。

一所懸命打ち込めるような仕事があるということは、とても素晴らしいことです。

 

しかし、それが逆に"労働力を搾取される"という形で自分のクビを締めることがあることもまた事実です。

東京のような大都市で時差Bizのような取り組みは大切なのは事実かもしれません。

ですが、それが本当に自分たちの労働環境を良くすることに繋がるのかをもう一度冷静に考えることも大切なのではないでしょうか。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

 

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