世界を救う読書

ビジネス書から文芸書までさまざまな本を通して世界の見方を考えるブログ

お金のこと知らない経済学者が発するデタラメが国民生活を破壊する

f:id:Kogarasumaru:20191126082453j:plain


 

かつてジョーン・ロビンソンという経済学者はこう述べました。

「経済学を学ぶのは、経済学者に騙されないためだ。」と。

経済の話、お金の話というとついつい敬遠されがちですが、私たちの生活を直接左右するのが他でもない経済の話です。

ですから、経済学を専攻するというほどではなくても、一人一人がある程度興味を持って接することはとても大切なことです。

「面倒くさそう」

「お金の話ばっかりでケチくさい話をしてる気がする」

そういう気持ちもすごく分かります。

でも、この話を避けていると、経済学者のとんでもない理論のために私達の命も脅かされてしまうのです。

 

例えばこちらの記事が典型ですが、国民の人生を左右するような政策を提案しながら、実のところ自分は「お金とは何なのか」すら全く理解していないというトンチンカン経済学者の典型。

これはニッセイ基礎研究所の専務理事という肩書の人物のものですが、これ位の地位の経済学の専門家でも、「お金って何なのか?」を理解していないことが明らかに分かります。

 

曰く 

社会資本を使用可能な状態に維持するには、毎年相応の維持コストがかかるだけでなく、何十年かに一度は大規模な改修工事を行う必要がある。

(中略)

社会資本を作れば子供や孫の世代も利用できるので資産になるが、一方でそれを維持・更新する費用が将来の世代の負担として生じることになる。社会資本を後世代にできるだけ多く残せば、それだけ将来世代が助かるというわけではない。人口減少が予想されている我が国では、利用者が大きく減少する施設の発生が予想される上、社会資本整備に割ける費用も大きく伸ばすことは難しくなるので、現在保有している社会資本を全て維持した上で、さらに新しい社会資本の整備を行うことは無理だ。

 とのことです。

難しい言葉で書いていますが、要するにこういうことです。

 

「日本は借金大国でお金がない。災害対策でインフラが必要だとか言ったって、建設費用だけでなく、その維持の費用も掛かるんだぞ。お前らわかってんのか?

そんな金が掛かることをやるくらいだったら、危ない所からはさっさと引っ越してインフラに投資する費用を削れ!」

 

と。

 

はっきり言って、この人は経済の専門家でありながら「お金とは何か?」を全く理解していません。昔の大判小判のように使えば無くなるもので、お金は有限だと思っているのです。

ズバリ、これは西欧が中南米に侵略して金銀財宝をぶんどり、それを富の源泉にしていた「中世の価値観」です。

 

前回の投稿で紹介した現代貨幣理論でもそうですし、歴史的に見てもそうなのですが、お金というのは誰かが誰かに貸し付けた「債務の記録」です。具体的には銀行が誰かに貸し付けた時に生み出されるものなのです。

<参考: 前回取り上げた現代貨幣理論>

 

したがって、貸付が増えるほど世の中に出回るお金も増えます。

現在の日本でお金が不足しているのは、銀行から貸付を受けようとする人がいない・・・つまり個人や民間企業が借金をしてまでお金を使おうと思ってないからです。

 

だから、むしろ「通貨発行権」といういくらでもお金を生み出せる宇宙最強の権力を持つ日本政府がガンガンお金を使えば、世の中に流通するお金が増えるのです。

そういう意味では、むしろ昨今の災害の増加に対応して国土強靭化を図ることは、是非とも日本政府がガンガンお金を使って行うべきなのです。

「お金は天下の周りもの」とは昔から言いますが

 

個人もお金を使わない。

企業もお金を使わない。

政府もお金を使わない。

 

そんなんじゃ、世の中が潤うわけがないのです。

確かに個人や企業はお金を発行する権限がありませんから、手元にあるお金で何とか対応するしかありません。しかし、国家は違います。国家は通貨を発行できる権利があり、日本のように自国通貨で運用している国であれば、いくらでもお金は発行できるのです (実際にはインフレ率という制限があり「無制限」ではありませんが、面倒くさい話になるのでここでは割愛)。

 

そんなことも知らずに「インフラ整備は将来世代への負担になるから止めろ。諦めて、ふるさと捨てて都会に移れ」などという経済学者には「経済」を語る資格はありません!

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

お金の秘密がわかる。「MMTによる令和新経済論: 現代貨幣論の真実」

突然ですが質問です。

皆さんが普段使っている「お金」ですが、あの薄っぺらい紙や硬貨をなぜみんなが欲しがるのか分かりますか?

 

金貨や銀貨、あるいはダイヤモンドであれば分かります。でも、紙幣はただの紙ですし、硬貨もそんなに高価な物質ではありません。ましてや、最近流行りの仮想通貨なんかはただの「0と1」の電子信号でしかありません。なぜそんな物に価値があるのでしょうか?

 

この謎を知ること自体も知的探究心を掻き立てられますが、それ以上にこの「なぜお金は価値があるのか?」がわかると、なぜ私達が日々の生活にあくせくしてお金を稼いでいるのか。

そして、なぜみんなが頑張っているのに日本人の生活が良くならないのか? が分かります。

今回はそんな「お金ってなんだ?」という問いに答える画期的な本をご紹介します。

それがこちら! 

 

藤井聡著「MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣論の真実」です。

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実

 

 この本のタイトルにもなっている「MMT」というのは「Modern Monetary Theory」の略。日本語では「現代貨幣理論」と言われています。

この現代貨幣理論ことMMTの理論を理解すると「なぜお金が価値があるのか?」ということが分かります。そして、それを理解すると今まで視ていた世界が180度ひっくり返って視えるような、驚きの体験を味わうことになるでしょう!

 

[目次]

 

MMTは異端の経済学?

MMT、現代貨幣理論という言葉は今年になってからニュースや新聞で少しずつ取り上げられるようになりましたので、もしかしたら聞いたことがある人もいるかもしれません。

ただ、その取り上げられ方というのはなかなか辛辣なものでして、

 

異端の経済学

トンデモ理論

 

などと言われ、日本では麻生財務大臣が「日本をMMTの実験場にするつもりはない」などと非常に手厳しい言葉で批判していました。また、国会でも財務省がMMTを批判する文書をわざわざ作成して批判しています。

経済分野だけでなく、何か特定の理論がこれだけ日本中のお偉いさんから叩かれるというのも珍しいことではないでしょうか。

でも、逆にそんだけ叩かれるとむしろ「ちょっと面白そうだな」と思ってしまうのが人の性な訳で・・・(笑)。

 

なぜMMTは批判されるのか?

そもそもなぜこんなにMMTは世間から叩かれるのでしょうか?

実はこれはとても簡単で

 

MMTは現代の貨幣の意義というのを非常に分かりやすく説明する理論であること。

そして、これを理解されてしまうと、ここ何十年も世界で流布されてきた経済理論が全くのデタラメだったことが分かってしまうこと。

だからこそこれを理解されてしまうと、現在偉そうに経済を語っている経済学者のほとんどが「嘘つき」あるいは「無知」ということが明らかになって、露頭に迷ってしまうから

 

です。

だからこそ、今の経済理論の上で偉そうに発言している経済学者や経済アナリストにとっては、絶対にこの理論を認める訳にはいかないという訳です。

そんな危険な理論ってどんな物なのかww

 

MMTの根幹は非常にシンプル

この本で詳しく紹介されているMMT。

とても分かりやすく書かれていますが、根本から理解しようと思うとかなり大変です。ただ、その中心となるエッセンスは非常にシンプルです。

まず「なぜお金に価値があるのか?」という疑問に対する答えは

 

「徴税権のある国家が”このお金で納税しろ”と規定しているから」

 

です。

日本という国で言えば、日本政府が日本国民に課す税金は日本円で払うことが決められている。だからみんな日本円を使うのだ、ということになります。

「え? そんだけ??」と思うかもしれませんが、考えてみれば当たり前ですよね。

もし来年から「税金はアメリカドルで支払いなさい」と言われたらどうしますか?

日本円で給料貰っても困りますよね? (笑)

当面は日本円で貰った給料を銀行でアメリカドルに両替して納税するかもしれませんが、所得税、地方税、社会保障費、消費税・・・それを全部アメリカドルに両替しますか?(笑)

そんなことになったら誰もがこう言うでしょう。

 

「給料はアメリカドルでくれ!!」

 

とwww

日本では税金を日本円で払うことになっている。だから日本円の価値があるのだ。

こう考えると実に当たり前で、シンプルな話です。

 

お金を生み出す方法

ではこの日本円という通貨はどこで生まれるのでしょうか?

大きく言うとそれには2つの方法があります。

ひとつは政府が発行する日本円。そしてもう一つが銀行が発行する銀行預金です。

みなさんも学校で習ったと思いますが、政府には通貨発行権というのがありますので(いろんな制限はあるものの)自由に通貨を発行する権利があります。これはわかりやすい。

でももう一つの「銀行が発行する銀行預金」。これはちょっと「????」と思う人も多いのではないでしょうか?

「だって、銀行ってみんなからお金を集めて、それを運用してるんでしょ??」と思いますよね。

実はこれは間違いなのです。

 

お金を好きなだけ生み出す万年筆マネー

詳しい説明は本書をお読み頂くとして…(笑)、結論だけ言えば銀行はみなさんからお金を集めなくても、銀行預金を発行できます。実は銀行は元手の資金がなくても銀行預金を生み出すことができるのです。実際に銀行が企業などにお金を貸し付ける時は、借り手の口座に1億円とか数字を書き込むだけ。これを万年筆マネーと言います(昔の銀行は万年筆で口座に金額を書き込んでいたから)。

 

これはニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授も仰っていましたが、もし本当に銀行が私達から集めたお金を運用しているのだとしたら、お金を投資する時には私たちに「あなたのお金を使わせてください」と連絡をしてこなければならないはずです。

でも、そんな連絡が来た経験は誰もありませんよね?そうなんですよ。別に銀行がお金を運用する時は私達の口座のお金を使っている訳ではないのです。

 

元手となる資金がなくてもお金を貸し付けられるということは、貸し手である銀行側には貸し付け金の制約はないということになります。

その代わり、「貸したお金が返ってこない」とその銀行はその貸し付け金をまるまる負担しなければなりません。下手をしたら倒産します。

つまり、銀行がお金を貸し出す時に発生する制約は「借り手の返済能力」だということなのです。

 

これは世間の常識からはかけ離れています。でもこれが本当なのです。

理論的なことは本書に譲りますが、これが実際に起こっていることなのです。

 

「日本は財政破綻しない」というのはMMTから導かれる必然

MMTによると

 

・現代の貨幣は誰かが誰かにお金を貸した時に生まれる

・お金は貸し手の元手が仮にゼロであったとしても貸し付けることが可能だが、借り手が返済できなければ貸し手も破綻する

 

ということが証明されています。

この2つを日本という政府に当てはめるとどうなるでしょうか?

まず、日本政府にお金を貸し付けているのは日本銀行です。日本政府は民間の銀行からお金を借りているようなイメージがあるかもしれませんが、日本政府は民間の銀行には口座を持っていませんから、民間銀行から借りることはできません。あくまで日本銀行からしか借金できないのです。

したがって、日本政府がお金を借りる時は日本銀行からお金を借りることになるのですが、先程書いた通り日本銀行は日本政府にお金を貸し付けるときに元手は必要ありません。日本銀行が日本政府にお金を貸す時に、日本銀行の元手の額は何も関係ないのです。

しかし、これも先程書いた通り、借り手の資金力つまり「日本政府の返済能力」には縛られます。もし日本政府が借りたお金を返せなければ、日本銀行は破綻してしまいます。

では、日本政府の返済能力はどうなのでしょうか?

ここで関係してくるのが日本政府にだけ認められた「通貨発行権」です。日本政府は日本円を自由に発行できるのです。

そう。日本政府の返済能力に限界はありません。

 

これは何を意味するのでしょうか?

簡単です。

日本銀行はいくらでも日本政府にお金を貸し付けることができる。そして日本政府はいくらでも返済できる。

そうなんです。

日本の財政が破綻するなどということは原理的にあり得ないのです。

 

多くの人は「そんなバカなww」と、にわかには信じられないと思います。でも、これが現実なのです。実際、財務省自身が公式に「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と発表しています(※)。

(デフォルトというのは債務不履行のことで、「破綻」というのと同義です。)

※下記財務省HPに記載

外国格付け会社宛意見書要旨 : 財務省

 

 

という訳で、読書レビューの割にえらく長くなってしまいましたが(笑)、この本で紹介されている「現代貨幣理論 (MMT)」が示す「お金の正体」について説明してきました。

世間一般の常識からすると容易に受け入れることができないことばかりだと思います。しかし、このMMTから引き出される結論と同じこと、つまり日本の財政が破綻するなどということは理論的にあり得ないということは、日本が海外に示している公式見解なのです。「日本は財政破綻する!」と騙されているのは、私達日本国民だけ、というわけです。それが現実なんですから仕方ありません(笑)。

それでも「本当かよ???」と思う人は是非本書をお読みください。私のブログでは紹介しきれなかった理論的な内容を詳しく、わかりやすく説明してくれています。

 

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実

 

 

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

マインナンバーで25%ポイント還元キャンペーンにご注意を!

消費税が増税されてはや二ヶ月。

増税に伴って実装されたキャッシュレス決済によるポイント還元キャンペーンですが、世間ではこれが大好評の模様。というか、好評過ぎて一日当たり10億円が還元費用に当てられる計算になっているらしいです。

このキャンペーン用に確保していた予算が1786億円ですので、このままのペースで行くとキャンペーンが終了する2020年6月より前に、予算が尽きてしまうのではないかと言われています。本当に一日10億円だとしたら一ヶ月で300億円ですから、6ヶ月で底突きますね(笑)。

 

実際には補正予算ででも追加発行すれば良い訳ですから、キャンペーン期日前に突然終了なんてことはあり得ません。なので、「キャンペーン終了したらどうしよう」なんて心配する必要はまったくありません。

が、問題は2020年6月にキャンペーンが終了した後のことです。

一応今のところはこのキャンペーンによって消費増税の影響が少ないように見せかけられていますが、来年にはオリンピック特需が終了。

世界経済を見ても日米貿易摩擦やEUの失速、イギリスのEU離脱などなど不安材料が盛りだくさんです。

そんな「2020年6月問題」の対策として、政府が新しく検討しているのがこれ。

 

なんと居住する自治体でマイナンバーカードを取得してスマートフォンなどでIDを設定して、IDを電子マネーなどと関連づけてカードで一定額を前払いすると、25%のポイントがもらえて買い物に使えるんだそうです。

 

日経の記事では「今年10月に消費税増税対策として導入したキャッシュレス決済へのポイント還元制度は20年6月末に終了する。マイナンバーカードを使った新制度は20年10月の開始を想定していたが、対策に空白が生じるとの懸念が強く、1カ月前倒しする。」ということですが・・・

 

アホか!!

だったら始めから増税すんなwww

 

 先日消費増税前の7月〜9月期のGDPが発表されましたが、駆け込み需要が予測されたこの時期でさえ年率0.2%成長。

ロイターのこちらの記事によれば

 

「潜在成長率を下回ったという意味で、景気は消費増税を待たずに停滞していたことが確認された」

「10―12月期について、調査機関のエコノミスト35人による「フォーキャスト調査」では年率マイナス2.6%程度の落ち込みが予想されている。」

 

とのこと。

もちろんこのような経済成長の低下は以前から懸念されていたことで、「やっぱりね!」でしかありません。そもそも消費増税自体が間違いだったというのは火を見るより明らかなのですが、何とそれを逆手に政府はマイナンバーの普及を図ろうと言うのです。

マイナンバーとクレジットカード、そしてスマートフォンを連結させることで、国民の個人情報や資産状況をしっかりゲットしよう!・・・ってわけですね。中国ばりの管理社会を目指そうとしているようです。

ところがそれでも国民は「ビッグデータを活用してイノベーションと経済成長を引き起こすのだ」と何だかよく分からない話をされると、「それで経済が良くなるなら仕方ないか。ポイント25%還元だしね!」と喜び勇んでマイナンバーを使って個人情報を政府や金融機関に売り渡してしまうわけです。

 

みなさん、完全に政府にバカにされてますよ!

「目先にポイント還元をぶら下げれば、どうせ国民はさっさと個人情報を売り渡してくれるんだから楽勝wwwちょろいぜwww」

それが政府の本音です。

ポイント還元という甘い蜜に騙されちゃ駄目ですよ〜〜〜。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

遅読家にオススメの身になる読書法「精神科医が教える良質読書」

本が速く読めるようになりたい!

限られた時間でたくさん読書をしたい!

遅読を解消したい!

このような願望は多くの人が持っていると思いますが、そんな方にオススメの一冊を今回はご紹介。

それがこちら

 

名越康文著「精神科医が教える良質読書」です。

精神科医が教える 良質読書

精神科医が教える 良質読書

 

 

この名越康文さんという方は知る人ぞ知る精神科医の権威 (と言われると本人は嫌がるでしょうが (笑))。

ですが、いわゆる医者としての活動に加えて「精神を患っている」とまではいかないまでも、何かしら心に負担を抱えている人にアドバイスをするような活動を行っていらっしゃいます。

精神科医でありながら、歯に衣着せぬ物言いで多くの支持を集めています。

特に最近は超人気の占い師である「しいたけ。」さんとのコラボレーションなどで有名になっていますね。

 

さて、そんな精神科医の名越先生。実は本を読むのはあまり好きじゃないそうで(笑)。

「それじゃ、読まなければ良いじゃん」と思われそうですが、やはり精神科医という職業上、そしてメディア出演や講演の際のアウトプットに必要ということで努力して読書をしてらっしゃるそうです。

そして、名越先生が本を読まれるもう一つの理由は「自分に会うため」つまり「人間とは何か」を考えるためだそうです。何か深いですね・・・さすが精神科医。哲学的です。

ただ、基本的には読書嫌いで、読むのも遅い。

そんな読書嫌いの人が勧める「良質読書」とはどんな物なのでしょうか?

 

[目次]

 

良質読書は「速読」とは違う。

「精神科医が教える良質読書」というタイトル通り、この本の内容は“大量に”、“素早く”読むためのものではありません。いわゆる「速読」とは全然違います。

そこを勘違いするとこの本の評価は180度変わりますので、ご用心ください。

名越先生が勧める「良質読書」というのは、「素早く一冊の本を読み切る」ことでも、「読んだ本の内容を完璧に理解する」ということでもありません。むしろ一冊の本を綺麗に読み切る必要はない、というものです。

 

名越先生はこう書いています。

 

「つまらない本を最初から最後まで読むのは、私にとって悪です。人生は必ず終わりが来ますし、時間はどんどん減っていくのですから、自分の時間の無駄遣いです。

誰でも知っているけど意外と意識していないのが、この『人生は日々、減っていっている』ということです。私の読書術は、それが基本になっている読書術なのです。

 

と。

つまり、そもそも人生の時間というのは限られているのだから、自分が面白くないと思う本に時間を使うのは無駄だということです。そんなことに時間を使うくらいなら、自分にとって必要だと思う本の、しかも重要だと思うところだけを読んでしまえば良いという訳です。

 

良質読書にまず必要なこと

この本の中でも書かれていますが「本は一章を読めば大体内容が分かる」。だから自分が大したことないなと思ったら、さらっとななめ読みすれば良い訳ですし、何なら読むのをさっさとやめてしまった方が良いのです。

つまり、いきなり読み進めるのではなく、まず「この本がどの程度読む価値があるのか」を判断すること。そして、その価値に合わせて読み方を変えれば良いというわけです。

 

私もこれは完全に同意します。

真面目な人ほどよくあると思うのですが「こういうことを学びたいのだったら、この本は読んでおくべき」とか「ビジネスマン必読!」とか言われると、大して読みたいと思わなくても読んでおかなくちゃいけないのかな?と思って手を伸ばすことってありませんか?

しかも、それが理解できないと「全然分からない・・・。この位知っていないようじゃ、私は駄目かもしれない・・・」と余計に焦りを感じてしまう。

真面目な人であるほど、何か悩みや迷いがある人ほどその傾向は強くなると思います。

 

でも、そのような「出版社のプロモーション」に引っかかっていたら、特に自分が興味ないような本ばかりに埋もれて、本当に自分に必要な本を読む時間がなくなります。

そういう意味では、名越先生が仰るように「無駄な時間を使わない」「その本に自分の時間を使う価値があるのか考える」というが、良質な読書をする上で最も重要なことだと思います。

 

本の必要な部分だけ身につける方法

そのようにして自分が読むべき本を選別ができたら、後はその本の内容をいかにして身につけるか? です。

私は名越先生と違って読書が好きです。

読書をしているとストレス発散になるし、時間を忘れて没頭してしまいます。

ただ、それだけだと“本に飲み込まれて”しまって、その本から何かを身につけるということが弱くなってしまうことがあります。平たくいえば、読むだけで満足してしまう、という感じですね。

名越先生の言葉を借りれば

 

「1000冊読んでもバカなままの読書と、一日2行でも成長できる読書の差」

 

といったところでしょうか。

 

この本では、この「1日2行でも成長できる読書」の方法が書かれています。

どれも特殊な技術は不要で誰でもすぐにできる簡単な方法がいくつか書いてありますが、これをここで全部書いてしまうと著作権侵害で怒られてしまいますので止めておきます(笑)。

興味がある方は是非本書をお読み頂きたいのですが、私が「面白いな〜」と思った読書方法を紹介しておきます。

 

本を読むのに集中力は不要!

これは「読書法」というか「読書に対する考え方」みたいなものなのですが、それは

 

集中力ならぬ”散漫力”によって読書の効果を上げる

 

というものです。

集中力はよく聞きますが、散漫力はあまり聞きませんよね(笑)。

半分謙遜だとは思うのですが、この名越先生は読書嫌いの上に集中力が低く注意力が散漫で、1つのことに集中できない質なんだそうです。ただ、その名越先生がカウンセリングの先生にこんなことを言われたそうなんです。

 

「名越君はつくづく集中力がないね。でも散漫力はとてもある。いや、きみの散漫力はすごい。その散漫力を生かして勉強しなさい。」

 

と。その散漫力を生かした読書法こそが自分に適しているのだと思ったのでしょう。

具体的には難しい本を一冊集中して読むのではなく、自分がすらすら読めるレベルの本を何冊か代わる代わる読むのです。そうすると集中力がない人でも飽きないだけでなく、「あ、この本とこの本のこの部分ってつながってるな〜」とか新しい発見があって、より深く本の意味を理解できるようになるのだと。

 

真面目な人であればあるほど一冊の本をしっかり最初から最後まできっちり読もうとします。で、長すぎて挫折する。

まぁ、よくあるパターンですね。私もあります(笑)。

でも、本当に面白い本だったら「最後まで読もう!」と力まなくても面白くて最後まで読みたくなるはずなんです。それが苦痛だと感じるなら、その本がつまらないだけ。読めない人のせいでもなんでもないのです。

つまらないと思えば無理して読む必要はないし、当然そんな本を買う必要もない。さっさと別の本に移り変えれば良い。そして、どんどんと新しい本と出会っていけば良いのです。興味がある分野であれば10冊もパラパラと読めば1冊は本当に面白い本に出会えるでしょう。むしろ、そんな風にパラパラといろんな本を”注意力散漫に”読むことで、逆に理解が深まることの方が多い。そんな「散漫力読書」も全然アリだと思います。

 

本の読み方は無数にある

先程紹介した散漫力読書の他にもこの本では名越先生オリジナルの面白い本の読み方がいくつも紹介されています。

たとえば

 

・「直感力」で20ページで一冊を理解する

・多ジャンル組み合わせ読書

・「読むに値する本」か、「ただの紙の束」かを見分ける方法

 

などなど。

どれも面白い内容ですが、ひとつ共通していると思うのは「本にとらわれず、本との適度な距離を保つことでいかに本を”自分の物”にしてしまうか」という本との向き合い方が基盤になっているということです。

私もそういう所があるのですが、本をちゃんと読もうとすればするほど本の著者の言葉に引きずられて、都合が良いように思考を誘導されてしまいがちです。そうすると本の内容は理解できるのですが、それを応用することができないんですよね。

その著者が本を書く上で作った枠組みや前提条件の下では通用しても、自分の生活や考え方に取り入れようとするとどうも上手くいかない。薄っぺらい感じになってしまう。

 

やはりそれは「本に引っ張られてしまっているから」だと思うのです。言い方は悪いですが「本に洗脳されている」と言っても良いかもしれません。

それを避けるためにはちゃんと本との距離を保って、著者と対話するかのように読むことが大事だと思います。偉そうに言えば「わざわざ俺様が時間を取って話を聞いてあげようっていうんだ。ありがたく思え!」くらいの感覚で読む方が、意外と冷静に著者が言おうとしていることを把握できるように思います。

人間関係と同じでそういう距離感の保ち方というのは人によって全然違います。逆に言えば読書に「正しい読み方」なんて物は存在しません。人によって違って良い。この名越先生の本はそんな「人それぞれに合った自由で楽しい読書方法」を考えさせてくれるきっかけになるような本ではないかと思うのです。

 

文章もくだけた表現が多く、文字も大きく読みやすい!

読書に苦手意識がある人、もっと本を読む時の理解力を深めたいと思っている人にはぜひオススメしたい一冊です。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

イギリスのEU離脱問題で揉める原因をわかりやすく解説②

f:id:Kogarasumaru:20191103095626j:plain

前回に引き続きイギリスのEU離脱の解説。

今回は現在一番もめている「北アイルランド問題」についてお話します。これが分かってるとニュースで流れるイギリスのEU離脱問題の本質がぐっと分かりやすくなります!

 

 

[目次]

 

 

前回の投稿でイギリスのEU離脱問題を理解する上で重要な2つの知識をご紹介しました。

その2つとは

 

1) イギリスで一般的な宗教は(プロテスタント系の)イギリス国教会である

2) EU離脱問題とは「イギリス連合王国のEU離脱問題である」

 

です。

詳しくは前回の記事をご覧ください。

 

 

この2つの問題、「宗教」と「国家体制」を理解していると、イギリスのEU離脱問題がなぜこんなに揉めているのかが、ぐっと分かりやすくなります。

なぜかというと、この2つの問題が同時にぶつかりあっているのが、正に現時点の問題の根幹「北アイルランド問題」だからです。

 

北アイルランドってどこにあるの?

恐らく多くの日本人にとって北アイルランドというのは「名前は聞いたことあるけど、よく分からない国」だと思います。

ちょっと地図で見てみましょう。

f:id:Kogarasumaru:20191110134635j:plain

<a href="https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=hkUK4XZk&area=1">ちゅん</a>さんによる<a href="https://www.ac-illust.com/">イラストAC</a>からのイラスト

 

 

皆さんが思っている「イギリス」という国ですが、実はこの地図のように

 

イングランド

ウェールズ

スコットランド

アイルランド

 

という4つの国からなっています。正に「連合王国」なわけです。

そしてこの問題の北アイルランドというのは、他の国のように地続きではなくアイルランド島という大きな島にあります。その北側が「北アイルランド」、南側が「アイルランド共和国」に分かれています。で、その北側の「北アイルランド」だけが「イギリス連合王国」に所属しているという訳ですね。

そしてこの地図には載っていませんが、北アイルランドの南側に「アイルランド共和国」という国があります。ですが、これは別の国なのです。イギリス連合王国にも所属していません。

 

アイルランドの国境問題

と、ここまでアイルランドという国の地理的な構造を説明してきました。

・・・が、うーん。ややこしいですね(笑)。

日本で言えば、北海道の北半分は別の国で、南半分は日本、みたいな感じでしょうか。しかも、その間には物理的な国境(壁とかゲートとか)がないのです。ちょっと日本人には想像がつかない世界ですね。

ただ、それが当のアイルランドの人たちにはスッキリしているかというと、それがそうでもないのです。というか、スッキリしていないから揉めているのです。

 

そもそもなぜ「北アイルランド」と「アイルランド共和国」に分かれているかと言うと、宗教が違うからです。

同じキリスト教ではあるのですが、北アイルランドはプロテスタント、アイルランド共和国はカトリック。なぜ同じアイルランド島なのに南北で宗教が違うかというと、北側はイギリスと距離が近いので、イギリスのプロテスタントの影響を受けやすかったからです。

もっと、露骨に言えばイギリス人が侵入して来たもので、中世においてはイギリス人はアイルランドを植民地のように考えていました。ですから、イギリスとアイルランドの間では昔から摩擦が絶えなかったのです。

ちなみに、ウェールズやスコットランドとも一応別の国(自治領)になっているので、それぞれの間でも摩擦がない訳ではありません。ただ、他の国が長い間イギリスと一体化しているのに対し、アイルランドは比較的統一の歴史が浅いため顕著に揉めているという感じです。

 

ジャガイモ飢饉でアイルランド人はイギリスに見捨てられた

ちなみに、イギリスとアイルランドの対立のわかりやすい事例として、1845年に起こったアイルランドの「ジャガイモ飢饉」という出来事があります。

これは当時アイルランドで主食だったジャガイモが病気になってしまい凄まじい不作になったため、アイルランド全土が飢餓状態になりました。ところがそんな中でもイギリスに送るための小麦は生産されており、それをアイルランド人は食べることができなかったのです (イギリス人貴族が土地の所有者であり、アイルランド人は小作人として使用されていたから)。

ジャガイモ飢饉自体は自然災害でしたが、それに対してイギリスは全く何の手も打たなかったため被害が拡大。 このジャガイモ飢饉によりアイルランドでは100万人以上が生命を落としたと言われています。

日本で言えば、沖縄県と日本政府の摩擦に近いものがあるかもしれませんが、このジャガイモ飢饉の例からも分かるように、その感情的な対立は沖縄の比ではないと思います。 

イギリスから独立する時にアイルランドは分裂 

それ以外にもさまざまな事件や紛争が中世から頻繁に起こり続けていたのですが、第一次世界大戦が集結した後の1919年、ついにアイルランド独立戦争が勃発。アイルランドはイギリスから独立することになりました。

ただ、この時にプロテスタントの人たちが多く住む北側はイギリス連合王国に残ることを選択したため、プロテスタントの国「北アイルランド」とカトリックの国「アイルランド共和国」に分裂することになったのです。

 

当然「これでめでたしめでたし」とはなりません。

南北が分かれたことでお互いの対立がさらに揉めることになるのです。

北がプロテスタント、南がカトリックとは言いましたが、そんなに綺麗に分かれるわけではありません。家族の事情や仕事の都合などで、カトリックでありながら北に留まる人もいれば、プロテスタントでありながら南に移住せざるを得なかった人もいます。

多分30代以上の人なら少し記憶に残っていると思いますが、以前のイギリスではIRA (北アイルランド共和軍)という集団がしょっちゅうテロを起こし、1970年代以降、延べ数百人の犠牲者が出ています。負傷者に関して言えば1万人以上と言われています。

 

なぜ北アイルランド問題が沈静化したのか?

このように北アイルランド問題は第二次大戦後どころか1990年代は大きな社会問題となっていました。ところが、1990年代後半から沈静化を見せます。

なぜでしょうか?

実はそれがイギリスのEU加盟だったのです。

イギリス、そして南アイルランドがEUに加盟するまで、当然北アイルランドと南アイルランドの間には国境がありました。いわゆる「物理的な国境」です。

しかし、両国がEUに加盟したことでその物理的な国境がなくなり、ある意味なし崩し的に対立が消えて行ったのです。

ただ、 それはあくまで表面的な話でしかなく、北アイルランドと南アイルランドの対立がなくなった訳ではありません。北アイルランドの首都であるベルファストという都市では、カトリック系住民とプロテスタント系住民が暮らす地区を隔てる「ピース・ウォール (平和の壁)」という壁がそびえ立っています。

また、小学校や中学校などもカトリックとプロテスタントで完全に分断されており、それぞれの宗派の子供が交わることはありません。

 

日本にニュースが飛び込んでくるようなテロ事件や暴動事件は発生しないものの、いまだに北アイルランドと南アイルランドの対立は解消されていないのです。

ただ、EUに加盟していることによって一応国境がなくなっているため、首の皮一枚で大きな混乱は回避されているというのが実情なのです。

 

イギリス連合王国がEUから離脱したらどうなるか?

ここまでを理解すると、「なぜイギリスのEU離脱問題が揉めているのか?」がわかります。

イギリス連合王国がEUから離脱すると、当然その自治領である北アイルランドもEUから離脱することになります。しかし、北アイルランドと陸続きでつながっている南アイルランドことアイルランド共和国はEUに留まったままです。

EUの中では物理的な国境はありませんが、EUとそれ以外の国の間では当然国境があります。したがって、普通に考えればイギリス連合王国がEUから脱退すると、イギリス連合王国の一部である北アイルランドとEUに継続して所属する南アイルランドの間に国境が復活してしまうのです。

 

またEU加盟前の北アイルランドと南アイルランドの“物理的な国境による分裂”が再現される。そうすると、また以前のような血で血を洗う抗争が勃発するのではないか・・・。これがイギリスのEU離脱が揉めている問題の中核なのです。

 

日本ではこの「国境問題」「宗教問題」ということがほとんど報道されることがないため、単なる政治家同士の駆け引きやEUとの経済協定の問題で揉めているようにしか認識されていないと思います。

それではこの問題の本質はいつまでも理解できません。

日本人が不得意な領土問題と宗教問題。これらを理解することではじめて今イギリスで何が起こっているのかを理解することができるのです。

 

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

 

イギリスのEU離脱問題で揉める原因をわかりやすく解説①

f:id:Kogarasumaru:20191103095626j:plain


ご存知の通り揉めに揉めているイギリスのEU離脱問題。

日々ニュースを賑わせていますが、多分日本人の多くの人が

 

「国民投票で離脱するって決まったのに、何をそんなに揉めてるの?」

「何か揉めてるらしいけど、よく分からん。まぁ、いいや。関係ないし。」

 

と思っているのではないでしょうか?

確かにイギリスのEU離脱問題はいろいろな側面がある複雑な問題なので、一言で揉めている理由を説明するのは難しいです。でも、2つだけ。これが分かってるとなぜこんなに揉めているのか分かるポイントがあります。

そして、そのポイントこそが「日本人には理解できない」ポイントなのです。

そのポイントとはズバリ、宗教問題とイギリスの国名です。

 

宗教問題というと日本人のほとんどの人は普段「私は◯◯教だから」と自覚していないと思います。だから「宗教問題」って聞くだけで「うわ〜無理無理。恐そうだし、難しそうだから嫌だ」と拒絶反応を示すのではないでしょうか(笑)。

一方「イギリスの国名」と言っても「そんなもん、イギリスでしょw」としか思わない人がほとんどだと思います。でも、これがそんな簡単じゃないんですよ。

これらの側面が分かっていると、EU離脱がなぜ揉めているのかスッと分かるようになりますので、是非知っておいて貰えると良いんじゃないかと思います。

 

[目次]

 

キリスト教の内輪もめ

では、まずクイズから。

「イギリスで一般的な宗教と言えば何でしょうか?」

 

多分多くの人は「キリスト教」と答えると思います。

でも、それだと半分正解、半分不正解です。

答えは「イギリス国教会というプロテスタント」です。

学生の時に16世紀にルターの宗教改革というのがあって、カトリックとプロテスタントに分かれたという話を勉強しましたよね? あのプロテスタントです。

 

どっちもキリスト教じゃんww って思うかもしれませんが、これが結構な違いで別の宗教と言っても良いくらいなんです。

カトリックというのはローマ帝国以来、がっつり時代の権力とコンビを組んで来ました。そういうと「既得権益ゴリゴリの悪い集団」みたいに思えるかもしれませんが、教皇を頂点にちゃんと組織化されていて、地方都市や町や村の共同体を支える共同体を築いていたんですね。そして、そのような共同体や教会を通して神とつながっているというような考え方です。言うなれば共同体重視派です。

 

一方プロテスタントというのは、聖書主義、万人祭司主義と言ってカトリックのような組織ではなく、それぞれの個人が聖書を通して神と繋がっているんだという考え方。ですので、プロテスタントの方が一般的に個人主義を重視しがちになります。

プロテスタントにもたくさん宗派があるので一概には言えませんが、ざっくり言うとそんな感じです。従って、同じ神を信じていても世界観というか社会観が全然違うので、考え方も全く変わってくるわけです。

 

そして、イギリスはプロテスタント。その中でもイギリス国教会という独自の宗教になります。

 

イギリスの正式名称は「イギリス」ではない??

そしてイギリスの問題を理解する上でもう一つ必須の知識があります。それは「イギリスの正式名称って何?」ってことです。

おそらく多くの人が

「イギリスはイギリスでしょ?」

「イングランドだよね」

という答えが返ってくるかもしれませんが、実はこれも半分正解で半分不正解。

正確には「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」。日本語で言えば「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」です。

これはイギリス本国に加えウェールズ、スコットランド、そして北アイルランドを4つの国が合わさった"連邦”のことを指しています。

 

日本の場合は、北海道とか九州とか沖縄がそれぞれ別の国で「日本という国はそれらの連邦国家なんだ!」とかいう訳ではありませんので、ちょっとこのような話は「単なる名前だけの話でしょ? そんな細かいこと気にしなくても・・・」という感覚を持つ人も多いかと思います。ですが、これは当のイギリス連合王国の方々にはかなり重要な意味があります。

例えば私の経験で言えば、私がとあるブランドのFacebookの運営に関わっていた時ですが、このイギリスのEU離脱問題が勃発した頃、イギリスの代理店から「Facebookのアカウント名を“ブランド名 UK"から"ブランド名 GBI”に変更してくれ」という要請が入りました。

UKとはもちろん「United Kingdom」の略。そしてGBIとは「Great Britain and Northern Ireland」の略。わざわざ「北アイルランド」を国の略称に入れてくれというのです。

 

これがEU離脱問題の根幹に関わる部分で、今イギリスが脱退する、脱退しないで揉めているのは、この「北アイルランドをどうするのか?」という問題が強烈に関係してくるからなのです。

日本では「イギリス離脱問題」として報道されますが、実はこれが日本人にとってこの問題をわかりにくくしている原因の1つなんです。この離脱問題というのは「イギリス、ウェールズ、スコットランド、そして北アイルランドという4つの連合王国がEUから離脱しようとしている問題」だと理解していないと、何をイギリスが揉めているのかさっぱり分からないのです。

 

まとめ

さて、今回ご説明したイギリスを取り巻く2つの問題。

1) イギリスで一般的な宗教は(プロテスタント系の)イギリス国教会である

2) EU離脱問題とは「イギリス連合王国のEU離脱問題である」

この2つの問題、「宗教」と「国家体制」を理解していると、イギリスのEU離脱問題がなぜこんなに揉めているのかが、ぐっと分かりやすくなります。

 

次回はこの理解を基にして、さらに深く突っ込んだイギリスのEU離脱問題について見ていきましょう。

今回はここまで!

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」は本当に忘れない?

突然ですが私はオリエンタルラジオの中田敦彦が結構好きです。

中田敦彦こと“あっちゃん”は決してみんなに愛されるキャラではなく、どちらかというと「好きな人はメッチャ好きだけど、嫌いな人はメッチャ嫌い」という類の人だと思います。

私はどちらかというと前者ですね(笑)。

 

[目次]

 

中田敦彦が取り上げて15万部突破した本

さて、そんな中田敦彦さんですが最近はYoutuberとしての活動が際立っているようですが、その中に「エクストリーム現代史」というコーナーがあります。

 

歴史というと

= (イコール) 暗記モノ

= (イコール)つまらない

という位で拒否反応を示す人が多いと思います。

ですが、この中田敦彦さんのエクストリーム授業はかなり面白いです。

このコンテンツでは「何年に何が起こったか?」とか、「歴史的な正確な事実」とかはあまり重視されていません。

それよりも「その時に誰がなぜそんなことをしたのか?」というような、歴史的事実の背景にある“人間の生き様に焦点を当てた物語”を面白おかしく紹介する、まさに“エクストリーム”な歴史語りコンテンツなのです。

 

で、このコンテンツの元ネタというかベースになっているのが、今回ご紹介する本

 

山崎圭一著「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」です。

一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた

一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた

 

 

「一度読んだら絶対に忘れない」は嘘

まずはじめに書いておきたいのは、「一度読んだら絶対に忘れない」は嘘というか言い過ぎだということです(笑)。

いや、そういう人もいるんでしょうけど、多分そういう頭の良さを持っている人はこの本を読むまでもないはずですww これを読む人は(現役の学生を除けば)「社会人になって歴史の知識の重要性を感じているんだけど、なかなかガッツリ勉強し直そうとは思えないし・・・」っていう人ではないでしょうか。

そういう人にとっては、これだけの内容が詰まった本を「一回読んだら忘れない」というのは流石に無理があると思います。

 

ただ。

ですが。

しかしながら。

「一度読んだら、ニュースとかで関連する記事を見た時に“なんかあの本で読んだ気がするな”と思い出せる本」とは言えると思います。

 

なぜ“一度読んだら思い出せる”のか?

では、なぜ一度読んだら思い出せるのでしょうか?

その理由は大きく分けて2つあると思います。それは

 

1) 事実の背景に焦点を当てている

2) 視覚的な本の構成

 

ということです。

では、それぞれの内容をちょっと説明してみましょう。

 

1) 事実の背景に焦点を当てている

多分、歴史の勉強が苦手だったという人に共通するのは「年号を覚えるのが苦痛だった」という点だと思います。

「何と立派な平城京」とか「泣くようぐいす平安京」とか「いい国作ろう鎌倉幕府」とか・・・あ、全部日本史だww

まぁ、それはさておき、そんな風に年号を一所懸命覚えた記憶は皆さんあると思います。ただ、単純に記憶する作業というのはやっぱり苦痛ですよね。

ところがこの本では年号は一切出てきません。

それはやはり年号を覚えることよりも、ある出来事の背景にある物語に焦点が当てられているからだと思います。

 

受験勉強として考えればそれはマイナスかもしれませんが、社会人目線で考えると年号よりも背後にある物語に焦点を当てることで、その時代の時代的特質やその地域の人たちの特性、そしてそういう歴史的事実がどのように現代につながっているかがとても分かりやすくなっています。

そういう意味で「一度読んだら忘れないってことはないけど、ニュースで見聞きすると何かあの本で見た覚えがあるな・・・確か・・・」と現代と歴史がつながる感覚は味わえると思います。

 

2) 視覚的な本の構成 

この本のもう一つの特徴。

それは視覚的に分かりやすい本の構成です。

まずこの本の外観を見ると表紙のポップなイメージとは裏腹に、本の厚みはガッツリあります(笑)。こんなの一度で覚えられるのかよ・・・って思うこと間違いなし!ww

でも、ちょっと話がそれますが、私はこの本を読んで一回で中身を覚える必要はないと思います。繰り返し書いている通り、これを一回読んだからって全部覚えるなんて無理ですよ。賭けても良いです! (笑)

 

ただ、この本はヨーロッパ、中東、中国とかの地域ごとにそれぞれ「古代」「中世」近代」とか時代区分が分けてあるのですが、ページの端っこにインデックス(目次ですね)がついているんです。

だから、最初から全部読もうとするんじゃなくて、インデックスだけザッと見て「あ、何か今日はここ読んでみたいから、ここだけ読もう」ということができます。これ結構良いですよ。

普通の教科書のように最初に「目次」があるタイプだと、既にそこにズラーっと興味を削ぐような見出しが並んでいるじゃないですか。もうあれでギブアップ! っていう人もいると思うんです。でも、この本のようにインデックスタイプだと、空き時間にパラッとめくって「ここだけちょっと読んじゃおう」ってできるんですよね。

しかも、各章っていうか、各項目が大体2ページくらいで完結しているので、さらっと読めてしまいます。

「2ページでも多い!」っていう人は、特に重要なところは下線が引いてあったり、太字で書いてあったりするんで、それだけ読むだけでも歴史的出来事のポイントがサッとわかります。あと色使いもカラフルなので、そういう意味でも軽い気持ちで読めますね。

 

この本の使い方

という訳で、この本の読みやすさとわかりやすさをご紹介してきた訳ですが、最後に私なりのこの本の使い方を紹介したいと思います。

ここまで書いてきたように、この本は詳細な歴史的事実を正確に書いていく学問書ではありません。どちらかというと社会人が日々のニュースをより深く知るために「ざっくり世界史の流れを学びなおしたい」という時にオススメの本だと思います。

ですから、かなり端折っている部分があります。

また、歴史は人や立場によって捉え方が違うので、考え方によっては「ここの説明は一面的だなぁ」と思うところもあるでしょう。

 

ただ、歴史の学び直しをするという意味では、非常にベーシックな歴史物語の流れをとても分かりやすく解説してくれていますし、先程も書いたように自分が今知りたいところだけ読むのにも読みやすい構成になっています。

ですから、この本を一冊本棚に置いておいてニュースなどで「これって何だったっけな?」と思った時にササッと読み、外枠を把握する。そして、もっと知りたいと思ったら関連する本を読んでもっと知識を深めてみる。

そんな“困っときのお助け本”的な使い方をするのには、かなり良い本ではないかと思います。

 

  

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

政治家はSNS投稿してる暇があったら災害対策に全力を出せ

f:id:Kogarasumaru:20191022121120j:plain

 発生から1週間以上が経過しているにも関わらず被害がさらに拡大している台風19号。

私も2018年の西日本豪雨を実際に体験したので、この報道を聞く度に雨水が迫りくる恐怖を思い出して、とても他人事とは思えません。被害に遭われた方々や地域の早急な復興を心から祈っています。

 

ところで、今回の台風19号に関する報道についてはいろいろと考えさせられるところがあるのですが、一番気になるのは国やメディア、そしてネット上で次のような反応が広まっていることです。

それは

 

「自然災害はどうしようもない」

 

という“諦めの空気”です。

もちろん私も「人間の知恵と力で自然災害は完全に防げる!」とは思っていません。そういう意味では最終的には“どうしようもない”という感覚は私もあります。

とは言え、「どうしようもない」で諦めては、これからも台風や地震がある度に多数の犠牲者を出すことになってしまいます。この災害大国の日本で災害をゼロにすることはできませんが、被害を最小限に食い止める方法はあるはずです。

 

その方法とはなにか? と言えば、当然暴雨の際に水害を発生させないための堤防の強化や、台風などに建物や電柱などが倒れないようにするための地震対策などインフラ投資です。

 

確かに

 

「災害の恐れがある際に早めの避難をする」

「日頃から防災グッズを確保しておく」

 

など私達一人ひとりができることはあります。しかし、今回のようなレベルの災害では個人での対策には限界があります。国家ぐるみの対策を講じなければ焼け石に水なのです。

 

ところが実際にはどうでしょうか?

例えば、今回の台風に関連して河川管理や堤防設備などの治水事業費用の推移をざっくり見てみると

 

1989年: 1兆8千億円

1997年: 2兆2千億円 (←ここがピーク)

2009年: 1兆3千億円 (←リーマンショック)

2010年: 8千億円 (←民主党政権)

2018年: 7千700億円 (←安倍政権)

 

このようにピーク時から見て3分の1程度にまで削減されています。

堤防にしろ、ダムにしろ、人間が作ったものは必ず壊れるのですからメンテナンスが必要です。作ったから終わりというわけではありません。

数百億円程度の増減ならまだしも、3分の1にまで減らされるのは明らかに異常です。

そりゃ、堤防も決壊しますわ。想定外でも何でもありませんよ。

 

 

安倍首相は今回のような災害が起こる度に「復興に総力で取り組む」「政府一丸となって被災地への支援を行う」とか言っています。また、災害が起こるとすぐに現地に飛んで(もしくは閣僚の誰かを派遣して)、それをTwitterやFacebookに投稿。「災害に取り組んでいる感」のアピールをします。

それはそれで意味がないとは言いませんが、もっと大切なのは

 

災害を最小限に抑えるべく日頃から対策を行う。

そのためにしっかりと予算をつける。

 

ということではないでしょうか?

現地に行って被害者を元気づけることなら別にジャニーズとか、石原軍団がやれば良いだけです。そんなことは国会議員や閣僚がやるべきことではありません。

政権や国策に携わる人間ができることをしっかり行わなければ、何のために選挙をやっているのか意味不明。

政治家はFacebookで「復興頑張ってますアピール」をする暇があったら、政治家らしい仕事をしろ!!

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

ユニク◯の社長とかに「日本が滅びる」とか言われたくない

バブル崩壊以降日本の経済低迷が続いています。

聖域なき構造改革やらアベノミクスやら、いろんなスローガンの下に様々な改革が行われて来ましたが、日本の経済はさっぱり好転しません。

それどころか消費税まで10%に増税されて一般庶民の生活は苦しくなる一方です。

一体なぜなのでしょうか?

なぜ日本の経済は30年も落ち込んだままなのでしょうか?

 

実はこれはある意味すごく簡単な話なんです。

日本の経済が低迷し続けている理由、みなさんの生活が良くならない理由、それは

 

「日本のやり方は時代状況にマッチしていない。改革が必要だ」と思い込んでいるから

 

です。

 

そもそも日本経済が好転しない根本的な原因は「デフレから脱却できないから」です。この1点につきます。

日本人はこのデフレというものをあまりにも舐めすぎています。

デフレというのは単に物価が下がるだけではありません。それ以上のスピードで所得が下がる現象のことです。

所得が下がるから国民の消費が減る。消費が減るから企業も投資ができない。投資ができなければ生産性も伸びないので、所得も減る。所得が減れば消費も減る・・・以下無限ループです。

だから働いても給料が増えない。

給料が増えなければ税収も伸びないし、社会保障費も増えるので財政赤字も拡大する。

財政赤字が拡大するとそれを抑えようと財務省が必死になって、より税金が増える。税金が増えれば生活はより苦しくなって、消費がさらに減る。

 

ですから、このデフレから脱却しなければどんな改革をやった所で無駄ですし、下手をすれば改革しなくても良いところまで改革してしまって、事態が余計悪くなるということが起きるのです。

このような馬鹿なことを日本はバブル崩壊後ずっとやって来ました。もういい加減この愚かさに気付いても良さそうなものですが、その愚かさは未だに改善される様子がないようです。

 

 

例えば、ユニクロの社長である柳井氏のインタビューにはこんなことが書いてあります。 

 まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。それを2年間で実行するぐらいの荒療治をしないと。今の延長線上では、この国は滅びます。

もう馬鹿すぎて話にならない。

こんな馬◯が偉そうに日本経済を語るから世の中がおかしくなるのです。

未だに勘違いしている人があまりにも多く、そのことがデフレ脱却を難しくしているのですが、そもそも政府の支出というのは「民間へのお金の供給」です。

お金の循環の順番としては、まず政府がお金を発行して支出を行い、それが民間企業を経て家庭に流れていく訳です。ですから、まず政府がお金を発行して供給しないとそもそものスタートが切れないわけです。

それにも関わらず政府がお金を支出を半分にしたらどうなるでしょうか?

お金の供給源がギュッと絞られる訳ですから、一気に半分にはならないにしても企業や家庭に流れるお金が激減します。

 

公務員の数を減らせ! という話にしてもそうです。

公務員が半分に減らされたら彼らに払っていた給料の分の政府の支出が減ります。大量の失業者が出まうし、彼らが買ったり、利用したりしていたサービスに支払われていたお金が市場から消えます。

公務員の人が家や車を買ったりするのに借りていたローンも全部不良債権になり、銀行にも多大な影響が出るでしょう。

そもそも日本の公務員の数は世界で見てもかなり少ないのが現実です。

就業者数における公務員の割合は1割程度で、これは国際的に見ても非常に少ない割合。人口に対する比率でも先進国で最低レベルの少なさです。

 

このような現実を見ずに、自分たちの勝手な思い込み (=民間企業は頑張っているのに、公務員はのうのうと生きている)だけで、現実には何の意味もない改革を単なる憂さ晴らしと自己満足で行ってきた。それどころか、それによって自分たちの首を締め続けてきた、それが日本の経済停滞の根本的な原因なのです。

 

日本では柳井氏のような成功した経営者が語る国家運営論をありがたがる傾向があります。

また、日本人はどうも「ビジネスセンスがある人は国家運営についてもセンスがある」と思い込みがちですが、それは全然違います。むしろビジネスセンスは国家運営においては邪魔と言った方が良いかもしれません。

それはビジネスは利益を追求しなければならないが、国家は利益を追求してはならないからです。「追求するべき利益が違う」と言った方が良いかもしれませんが。

 

単なる一経営者にしか過ぎない人物・・・ましてや「デフレ」という異常事態に乗っかることで利益を出してきた会社の経営者が語る国家観をありがたがって紙面に掲載するメディアが「日本経済新聞」などという名前で活躍している限り、日本経済の見通しはまだまで暗いと肩が落ちる思いです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

日本はあと5年以内にノーベル賞を獲れなくなる

f:id:Kogarasumaru:20181210224403j:plain

 

ご存知の通り旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)が2019年ノーベル化学賞を受賞されました!

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO50800270Z01C19A0I00000


いやー、めでたいですね!めでたい!

リチウムイオンと言えば最早私たちの生活に欠かせないものですが、その開発に日本人化学者が関わっていたとは全く知りませんでしたww


昨年の本庶佑教授の受賞に続き2年連続ということで、立て続けに科学方面の分野で日本人が受賞。逆に何か感覚が麻痺して

 

「え?また獲ったの?」

「ノーベル賞って毎年日本にくれることになってるやつだよね」

 

とか"ノーベル賞バラまき"みたいなイメージすらあるかもしれません。
もちろん、そんなことはない訳です(笑)。
それどころか、これから先…5年先とか10年先というスパンで見ると、実は日本人はノーベル賞を受賞することができなくなるのではないかという可能性が非常に高くなっています。

 

日本の科学技術が急激に弱まっていると政府が公式に発表

去年の6月に政府が閣議決定した科学技術白書の内容は「日本の科学技術は力が急激に弱まった」という恐るべき内容でした。
それによると、日本の論文数は2004年の6万8000件をピークに2015年は6万4000件に減少。主要国で減少しているのは日本だけ。その一方で中国は約5倍に増えて24万7000件に、アメリカも23%増の27万2000件に増加しています。


そして日本で作られた論文が引用される数、つまり引用数は、2003-2005年の4601から2013-2015年は4242となり、順位も4位から9位に後退。一位は当然アメリカですが、なんと二位には中国がランクインしています。
つまり、日本よりも中国で作られた論文の方が引用する価値が高くなっているということであり、その分日本の研究の影響力が世界で低迷しているということです。

 

日本の科学技術予算は主要国最低レベル


それもそのはず、なんと科学技術関係予算の伸び率を見ると、2000年をベースにして考えると


日本は2018年度で1.1倍
米国は2017年度で1.8倍
韓国は2016年度で5.1倍
中国は2016年度で13.5倍


と伸びが顕著となっているのです。
日本が1.1倍にしか増えていないにも関わらず、韓国でさえ5.1倍、中国に至っては2016年でも13.5倍ですので、この差はもっと開いているでしょう。

 


これだけ諸外国と予算に開きがあれば、「日本の科学技術は力が急激に弱まった」のも当たり前です。そのような状況で日本人がこれだけノーベル賞を受賞できているのはいるのは奇跡!
…ではありません。単純にノーベル賞を受賞しているような重鎮の研究者たちが若い頃に研究に没頭できる環境があり、しっかり予算もつけられた上で必死に努力をされたからです。


以前の投稿にも書いたのですが、今の大学ではとにかく研究以外の雑務が多すぎて、研究に割く時間が取れないことが大きな問題になっています。

というのは、「国から配分される予算に競争原理が持ち込まれている」ことにより、その予算獲得のために、行政側にプレゼン資料を作らなければならないというような、無駄な実務仕事が増えているのです。
実際、大学等教員の職務活動のうち研究が占める割合は、2002年の46.5%から2013年には35.0%に減少。これも5年前の数値ですから、今はもっと下がっているでしょう。 

 

  
予算を増やさず、研究時間も減らしておきながら「成果を出せ」と言ってもそりゃ無茶でしょう。あと5年くらいはまだ何とか持ち堪えられるかもしれません。しかし本庶教授のような重鎮が引退した後には、もう日本は二度とノーベル賞が取れないような科学後進国に落ちぶれているでしょう。
当然そのような国では若い研究者も育ちませんし、科学の道を志ざす子供も出てこないでしょう。出てきたとしても「これからは研究しようと思ったら中国だね!日本語より中国語を勉強しよう!」と満面の笑みで未来を語るかもしれません。

 

未来のために必要なものは…

 

そのような未来を避けるためにはどうすれば良いか?

まずは予算。予算です。それも単発では駄目です。しっかりと長期的な研究計画を立てられる予算。そして研究をするための施設と、何より研究者を育てられるのに十分な予算をつけることです。今のように若手の研究者を短期雇用でしか雇えず、将来不安を抱えさせたまま日々の生活に四苦八苦させるような環境は間違っています。


そして、私達にできることは、そのような予算をつけるだけの十分な経済力がこの国にはあるのだということ再認識することです。もっと簡単に言えば「日本は財政破綻する!」などという根も葉もない嘘っぱちに騙されないことです。

国民の一人でも多くがそれを理解することが遠回りですが、確実に日本をまともな国に戻していく力になると私は思います。

財政破綻論の「嘘っぱちさ」については何度かこのブログでも取り上げていますので、ここでは割愛します。よろしければ下記の投稿もご参照ください。

 

今回も長文を最後までお読み頂き有難うございました😆

 

このサイトについて プライバシーポリシー
Copyright ©2020 Sekadoku (世界を救う読書管理人)