世界を救う読書

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経団連の会長はDMMの社長にやって貰った方が良いんじゃないかと思う。

すでに世間でも騒がれていますが、経団連の中西会長が企業が今後「終身雇用」を続けていくのは難しいと述べて、雇用システムを変えていく必要性があるという方針を出したそうです。

 

記事によりますと

経団連・中西宏明会長「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです。どうやってそういう社会のシステムを作り変えていくか、そういうことだというふうに(大学側と)お互いに理解が進んでいるので」

経団連の中西会長はこのように述べ、「人生100年時代に、一生一つの会社で働き続けるという考えから企業も学生も変わってきている」との認識を示した。

 

まず、経団連というのは「経営者団体」でしかありません。「経済界は〜」などという日本の経済を背負っているかのような発言は止めて欲しい(残念ながらこの人達が中心に近いところにいることは認めますが)。

そして「どうやってそういう社会のシステムを作り変えていくか」などと妄言を述べていますが、

 

経営者ごときが偉そうに社会のシステムを作り変えるなどという言うな。

思い上がるのもいい加減にしろ。

 

会社というのはあくまで日本(やそれぞれの国)の社会を発展させていく中で生まれてきた共同体の一つのあり方です。つまり「社会があってこそ、会社が存在し得る」のです。その逆ではありません。

 

会社というのは、自らが属する社会から人を預かり、場所を預かり、慣習にのっとって活動をする中で利益を得ています。まず“社会ありき”であることを忘れてはいけません。

したがって、当然社会で育まれた人々を預かる上で、社会の慣習に即した雇用形態というのが必要とされるわけです。その慣習とは日本という国が長い年月の中で少しずつ蓄積してきた人間関係、文化、価値観に根ざしたものであって、そんなに簡単に変わるわけではありません。

それを「社会のシステムを変える」などと述べるのは、そもそもこの人が会社と社会の関係性のあり方を全く理解しておらず、自分たちの意思のままに社会のシステムを変えることができると思い上がっている証拠です。

まさに「近代合理主義」というイデオロギーに心の底から染まっているのです。

 

終身雇用というのはシステムとして確定している訳ではない

また、終身雇用を守れないという風に言っていますが、別に日本は「終身雇用」というシステムを明示的に採用している訳ではありません。

そもそも新入社員の3割は辞めると昔から言われています。

 

終身雇用という表現は、単に一度一つの職場に勤めたら、そう簡単には別の職場にそこで勤め上げる人が割合として多いということ、そして日本の企業は法律的に従業員を安易に解雇できないようになっているということです。

 

年功制にも良い点がある

また、終身雇用という言葉と同じく“悪い意味で日本的”と言われる「年功制」ですが、これも一概に悪いとは言えません。

そもそも日本では「年功序列制度」だと言われますが、これも実は正しくありません。

確かに年齢とともに賃金が上昇する傾向があるのは事実ですが、あくまでこれは平均値でしかありません。実際には同じ年齢で昇進したり、昇進できなかったりする人がいるように、年齢別の平均値を基準にして、その人の能力や実績によって賃金に差がつく仕組みになっています。

そういう意味では「年功序列制度」というのは正しくなくて、単に「年功制」と言った方が事実にふさわしいと言えます。

 

そして、これは日本独特だと思いますが、この年功制に対して日本では金銭的報酬以上に与えられる仕事の面白さや充実さによって、その人の能力に報いるというシステムになっています。

頑張れば頑張るほど徐々に受け持てる枠が広がっていくというのは、実は世界的に見て当たり前ではありません。

海外、特に欧米では基本的に会社と社員は「契約」に基づいて仕事をしますので、契約の幅を徐々に広げるという文化はありませんし、ましてや契約にないことを社員が勝手にやってはいけません。

 

より幅広い仕事をやりたいのであれば、年に一度の業務レビューの際に上司に自分の実績を報告し、自分の能力をプレゼンし、新たな契約を結び直さなければなりません。

しかし、人間の能力というのは必ずしもプレゼンできるような顕在的なものとは限らないのです。

確かに直接の利益は産まないかもしれない。

でも、人間関係を取り持つのが上手かったり、人の心情を読んでフォローするのが上手かったりして、その人がいることで会社の環境が良くなり仕事をやりやすくできるような人も多くいます。

 

人間の能力というのは、そのように多面的に評価しなければならないことが多いのです。そして、そのような多面的な評価を行うには、何年もの間その“人”を見続けなければ分からないものなのです。

そして長期的に安定して働けるからこそ、将来を見据えた長期的な視野を持つ人間を育てることができることも事実です。

そういう意味では、「終身雇用」という言葉に表れているような「長い年月を掛けて人を育て、人を評価していく」という方法は実は長期的には合理的な側面もあるのです。

 

それを単純に今の経営が厳しいからという理由で、“人を切りやすくする”というのは短期的には合理的でも、日本の将来を担う人間を育てていくという長期的なビジョンでは逆に自らの首を締めることになりかねないのです。

 

DMM社長の言葉が刺さった

そんな中DMM社長の下記のような言葉は貴重だと思います。

スタートアップ経営者なんかと話していると、「1つの会社に長くいるやつは羊だ、社畜だ!」とか、「サラリーマンをアップデートせよ!」とか、かなり強く言う人がいる。でも、長くいることだって能力じゃないかと。長くいてくれる社員のほうが、会社としてはその人に投資する気になれる。サービスの安定性とか継続性を保つうえでも、長くいる社員の役割は大きい。 

 

全くその通りだと思います。

短期的な人の育て方ではなく、長期的視野に立ってその人が本当に会社を支えてくれる人材に育つのか。それは「長期で安定して働ける」という環境があってこそ初めて、企業側も判断できるし、従業員も自らの能力を思う存分発揮できるのではないかと思うのです。

 

 

 今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆

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