世界を救う読書

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よい人生を送るために必要なたった一つの”輪”。ロルフ・ドベリ著「Think Clearly」。

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「よい人生を送るにはどうすれば良いのか?」

「どうすればより幸せになれるのか?」

大昔からあらゆる人間が抱いてきたであろうこの疑問。

これに真っ向から、そしてわかりやすく答える世界的ベストセラーを今回はご紹介。

それがこのロルフ・ドベリ著「Think Clearly」だ。

ビジネス書のベストセラーというだけで”胡散臭さ”を感じる人もいるかもしれないが、この本は違う。

文章はシンプル、論旨は明確。非常に読みやすい。

だが、先を見通しづらい複雑なこの世界を生き抜くために重要な、そしてクリアーな方針を指し示してくれる書籍だ。

 

著者紹介

著者であるロルフ・ドベリは作家であり、実業家。1966年、スイス生まれ。

スイス航空の子会社数社でCEO、CFOを歴任。

科学、芸術、経済における指導的立場にある人々のためのコミュニティー「WORLD.MINDS (ワールド・マインズ)」を創設し、理事を務める。

35歳から執筆活動をはじめ、世界の多数の国での雑誌や新聞に寄稿。著書は40以上の言語に翻訳出版され、累計発行部数は300万部を超えるベストセラー作家。

著書に

「Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法」

「New Diet 情報があふれる世界でよりよく生きる方法」

などがある。

作家であり、実業家でもあるという風変わりな肩書を持つ著者だが、彼の著作の面白い点は人生という困難な道をよりよく生きるための処方箋を、とても簡潔な言葉でわかりやすく表現してくれるところだ。

しかも、そこには恩着せがましい押し付けや高圧的な態度は微塵もない。

微笑みながら対話してくれているかのような”優しさ”を感じる独特の文体が魅力だ。

※ロルフ・ドベリの「New Diet ー情報があふれる世界でよりよく生きる方法ー」については、別記事で取り上げました。これもかなり面白いのでよろしければ、こちらもどうぞ!

この本の最大のコンセプトとは

この本の目次を見てまず思うのは、その章立ての多さだ。なんと全部で52章にも及ぶ。

しかし、安心して欲しい。この数は内容の複雑さを示すものではない。

52章のそれぞれが人生をよりよくするための思考方法をひとつずつ紹介する形になっており、ひとつひとつの内容はとてもシンプル。一章あたり7〜8ページであり、寝る前にでもサラッと読めてしまうものだ。

とは言え、この52の方法をひとつずつ紹介していたら、軽く1万文字は超えてしまうだろう。

そこでここでは、この52の方法すべてに宿るひとつのコンセプトを紹介したい。

そのコンセプトとは

「よい人生を送るためには”判断の基準”を明確にせよ」

ということだ。

人が不安やストレスを感じる状況とは?

人が不安やストレスを感じるのは

「物事をどう判断したら良いか分からないとき」

あるいは

「自分以外の他者に判断が握られているとき」

だ。

逆に言えば、不安やストレスを感じない生き方をするためには

・物事を判断する時の基準を自分の中で明確にしておくこと

・判断の主導権を自分が握る環境を作ること

が大切になるということだ。

 

したがって、よりよい人生を送るためには自分の判断基準を明確にしておくことが重要となる (これには「私にはこれは判断できない。だから別の誰かに判断させる」という判断も含まれる)。

能力の輪を明確にする

では、そのような判断基準をどうすれば明確にできるのだろうか。

そのために重要なキーワードは「能力の輪」だ。

能力の輪とは「”この内側はできる。この外側はできない。”という自分の能力の限界ライン」のことだ。

 

これはウォーレン・バフェットという世界的に有名な投資家が使った言葉で、彼は人生のモットーとして

「自分の”能力の輪”を知り、その中にとどまること。輪の大きさはさほど大事じゃない。大事なのは、輪の境界がどこにあるかをしっかり見極めることだ。」

と述べている。

 

著者は次のように言う。

人間は、自分の「能力の輪」の内側にあるものはとてもよく理解できる。だが「輪の外側」にあるものは理解できない。あるいは理解できたとしてもほんの一部だ。

(中略)

「能力の輪」の境界がわかっていれば、仕事上で何かを承諾したり断ったりしなければならないときでも、そのつど判断しなくてもすむ。

(中略)

自分の「能力の輪」をけっして超えないようにすることが重要だと言える。

(本書P137)

「能力の輪」から出てはならない

これは今年の大河ドラマ”晴天をつけ”の主人公である渋沢栄一が言う「蟹穴主義」に通ずるものがある。

わたしたちがよく知る蟹は、海や川に穴を掘ってその中に棲みつくが、その穴は自分の甲羅の大きさと同じ大きさなのだそうだ。決してそれ以上の大きな穴は掘らない。

渋沢栄一は「論語と算盤」の中で、自分はこの蟹穴主義に基づいて生きてきたという。つまり、自分の能力の輪以上の大きさの物事には関わらないようにしてきたということだ。

 

人はついつい自分の「能力の輪」を超えた物事に関わりたくなるときがある。自分の能力の輪を広げたいという誘惑だ。

だが、この「能力の輪」をむやみに広げようとする誘惑が、のちに自分に大きな不安やストレスを引き起こす。どれほど人の能力が高かろうとも、それはあくまで特定の分野の話。

人間の能力は、ひとつの領域から次の領域へと「転用」がきくわけではない。このことを肝に命じておく必要がある。

 

ただ注意が必要なのは、若い時にはその領域を知ることは難しいということだ。

「これが自分の能力の輪だ」と思って行動しても、実際にはまったくうまくいかない時もあれば、逆に自分の予想をしないところで「能力の輪」を発見することもあるかもしれない。だからこそ若い時には、さまざまな分野の勉強をし、チャレンジをするべきだろう。

しかし、ある程度の年齢になれば自分の能力の輪を認識することができるようになる。「自分がやりたいこと」と「自分にできること」の違いが明確になる時期が訪れるはずである。

その時にようやく「能力の輪」をちゃんと守ることが肝要だということがわかるだろう。

まとめ

今回の投稿では、本書の中でも最重要と思われる「能力の輪」という点にしぼってレビューをお届けした。この「能力の輪」という概念を頭に入れて読み進めるだけでも、かなりわかりやすく読み解くことができるかと思う。

 

もちろん、本書ではこれ以外にも非常に面白く、かつ具体的な”よい人生を送るための秘訣”が数多く紹介されている。

たとえば

・分からないことは「分からない」と答えてよい。自分が考えるべきテーマを見定めよ。意見がないのは知能の低さの現れではなく、知性の現れである。

・信念をつらぬくこと。妥協できない自分の主義を選び出すことは重要だ。だが、それはときに他人を失望させたり、落胆させたりするかもしれない。その覚悟を持つべし。

・達成困難な目標を立てている人は人生に不満を感じるものだ。

・大事なのは、少しでも早くどこかにたどり着くことではない。自分がどこに向かっているかをきちんと把握しておくことだ。

などなど・・・。

シンプルながらも、非常に含蓄のある言葉が並んでいる。

 

私たちが生きる世界は不透明で、なおかつ不確実であり、まさに一寸先は闇である。

この複雑な世界を自分の直感だけに頼って生きることができる人はほとんどいない。しかし、たとえば本書のような先人の知恵を取り入れていくことで、私たちは時代の英知を自分の人生に取り入れながら生きることができる。

それは直感に任せた生き方よりも、はるかに”よりよい人生”を生きる可能性を高めることができるだろう。

 

 

というわけで今回ご紹介した本はこちら。

ロルフ・ドベリ著「Think Clearly」でした。

今回も長文を最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m 

 

※ロルフ・ドベリの最新作「New Diet ー情報があふれる世界でよりよく生きる方法ー」については、別記事で取り上げました。これもかなり面白いのでよろしければ、こちらもどうぞ!

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